ECサイトとリアル店舗をどのように連携させれば効果があるのか。2012年頃からO2Oやオムニチャネルというキーワードが注目され始め、その後オンラインもオフラインもどちらも展開する企業も多くなってきていると思います。
しかし、ECの売上が思うように伸びなかったり、せっかくそれぞれにメリットがあるのに最大限に活用できていなかったりと、今後の運営についてご検討されている方も多いのではないでしょうか。そんなこれからECとリアル店舗連携を検討されている方にも、今回解説するECとリアル店舗の連携事例はきっと役に立つはずです。」
なぜなら今回ご紹介する事例は、国内の各業界で最も有名な企業の事例だからです。さらに、今回は美容・生活雑貨・食品・家電・アパレルなど、業界の異なる企業を比較することでそれぞれ業界の特徴も読み取ることができました。
今回は、そんな業界も異なる大手5社のO2Oやオムニチャネル事例を徹底分析します。デジタル戦略を積極的に取り入れている大手企業ばかりなので、ECとリアル店舗の連携方法に必ず参考になるはずです。
目次
事例① 「資生堂」社員のオムニチャネル化によりフォロワー数6.5万人の社内インフルエンサーに
事例② 「無印良品」店頭レジで10人中3人が提示する会員アプリ『MUJI PASSPORT』
事例③ 「スターバックス」売上を毎年約8.5%伸ばし続けるためのデジタル戦略とは
事例④ 「ビックカメラ」基本ポイント還元率10%、他社との違いが顧客満足度を上げる
事例⑤ 「ユニクロ」2位との差は2倍以上!圧倒的に売上を伸ばすユニクロの戦略とは
事例① 「資生堂」社員のオムニチャネル化によりフォロワー数6.5万人の社内インフルエンサーに
資生堂ではオムニチャネル戦略の一環として、2022年よりデジタル人材の育成に注力しており、自社に所属する美容部員「パーソナルビューティーパートナー(PBP)」によるオンラインカウンセリングやライブコマース、Instagram、X、TikTok、YouTubeといった主要SNSによる情報発信などの取り組みを行っております。
PBPは、本来は店頭において顧客一人ひとりと対面でヒアリングを行いながら提案を行っていましたが、オンライン上にチャネルを展開することで、数百〜数千の視聴者に対して店頭レベルの接客が可能になりました。
PBPは各人に個性があり、得意分野やターゲットとする年齢層もあるためファンが付きやすく、特に人気のあるPBPでは、Instagramのフォロワー数も6.5万人にのぼり、影響力のあるインフルエンサーとして機能しています。
◆「PBP」CHIROさんのInstagramアカウント
資生堂のECサイト「ワタシプラス」で配信されているPBPによるライブコマースでは、配信中に寄せられるユーザーからのコメントにスタッフが答える形で、双方向のコミュニケーションにより販促効果を高めています。
◆PBPによるライブコマース
店舗スタッフのオムニチャネル化の最大のメリットは、オンライン上で店頭に近い接客サービスを提供することができる点です。対面での接客は、顧客のニーズに臨機応変に対応できるメリットがありますが、顧客にしてみれば「買わなければいけない」というプレッシャーを感じてしまうため、購入を迷っている段階では店舗に行きづらいといった一面もあります。
そのため、オンライン上でプロによる商品説明を受けることができれば、顧客にとっては安心してより気軽に商品を購入することができますし、スタッフを知ることで店舗にも行きやすくなります。
このように、自社の社員のオムニチャネル化により、ファンの育成やO2Oによる新規顧客の獲得が実現され、顧客満足度や顧客体験価値の向上にもつながっていきます。
事例②「無印良品」店頭レジで10人中3人が提示する会員アプリ『MUJI PASSPORT』
2013年5月に良品計画がリリースを開始した無印良品会員アプリ『MUJI PASSPORT(ムジ・パスポート)』。2023年8月時点で日本国内における年間アクティブユーザー数は1,369万にのぼります。アプリの展開は日本国内にとどまらず、中国や台湾、韓国など海外へも拡大しています。
このアプリを店頭レジで提示することで、「MUJIマイル(※1円につき1マイル)」がたまり、例えば「MUJIマイル」を2万ポイント貯めると「MUJIショッピングポイント」200ポイントに交換することができます。
「MUJIショッピングポイント」に交換すると1ポイント=1円で、店頭やネットストアでショッピングをする際に割引として使用することができます。
引用:無印良品公式HP
結果、少し前の記事ですが、下記の記事によると店頭レジでは10人中3人がアプリの提示をするほど利用率が拡大し、また会員の客単価は非会員の1.6倍という結果が出ています。
さらに言うと、このアプリの特徴はポイント利用のためだけを目的に開発されたものではなく、『MUJI PASSPORT』へのチェックイン(※1日50回まで)で「MUJIマイル」が貯まり、良品計画が運営するオンラインコミュニティ『IDEA PARK』では「良いね」や「コメント投稿」によっても「MUJIマイル」を付与されるなど、様々なシーンで貯まるように設計されているのです。
このように、アプリの利用頻度によってマイルが付与される仕組みは、ユーザーにとっても使えば使うほどお得で、企業にとっても顧客の動線を可視化することができるため、両者にメリットのある機能でありオムニチャネル戦略の良い例といえるでしょう。
事例③「スターバックス」売上を毎年約8.5%伸ばし続けたデジタル戦略とは
スターバックス公式HP(会社案内)から引用すると、「一杯のコーヒーを通じて目の前にいるお客様と誠実に向き合い、言葉と心を交わしてきました。(中略)お客様一人ひとりの暮らしに溶け込んだ、心あたたまるひとときをお届けすると共に、コミュニティ(地域社会)へポジティブな影響を与え、人間らしさを大切にしながら更なる挑戦を続けてまいります。」
こういった理念のもと、テレビCMや広告チラシにほとんど費用をかけないという話は有名な話で聞いたことがある方も多いと思います。
しかし、参考記事:「スターバックスコーヒージャパンの売上高と店舗数」(※現在はページ削除)によると、広告を打たないにも関わらず2001年からその後12年間スターバックスは年間平均8.5%も売上を伸ばしたそうです。
ではなぜ、売上を伸ばし続けることができたのでしょうか。その理由はアプリやスマホ決済の導入など率先して行い、時代に合わせたデジタル戦略を取り入れてきたからです。
例えば、1日に2回利用する人にとってお得なワンモアコーヒーは、1杯目のコーヒーをWEB登録済みのクレジットカードで支払うことで、2杯目のおかわりが130円で飲むことができ、アプリでクレジットカードを連携していれば、さらにポイント還元率も上がる仕組みを取り入れています。
また、スターバックス公式HPによると
“お客様一人ひとりの暮らしに溶け込んだ、心あたたまるひとときをお届けすると共に、コミュニティ(地域社会)へポジティブな影響を与え、人間らしさを大切にしながら更なる挑戦を続けてまいります。”
https://www.starbucks.co.jp/company/
というメッセージにもあるように、スターバックスのデジタル戦略を調べてみた結果、店頭での体験をよりよくするためのデジタル戦略が多いと感じました。既存顧客の満足度を上げるために、毎日来てくれる方にポイント付与を可能にしたり、並ぶ時間を短縮するためにスマホ決済を導入したりすることでリピーターが増え、結果的にお客様が増えるという考え方です。
さらに下記の記事によると、アプリによる事前注文の導入により店舗での待ち時間なく商品を受け取れるようになりました。
また、2019年上半期には「LINE」と連携し、モバイル決済を導入。今や、連絡手段の一つとして切っても切れない存在である「LINE」との連携により、さらに今後スターバックスのデジタル化が促進されそうです。
事例④「ビックカメラ」基本ポイント還元率10%、他社との違いが顧客満足度を上げる
家電量販店の場合、商品単価が比較的高いからこそ、ポイントの付与について関心の高い顧客も多いです。数多くの家電量販店がありますが、実際のところ商品の値段はそれほど大きく変わらないため、企業側はポイント獲得率の高さやアプリの使いやすさなど他社との違いを明確にすることが重要となります。
ビックカメラは、家電量販店業界売上高ランキングで2位の実績ですが、今回は競合で業界1位のヤマダ電機と比較しながら解説していきます。
まず一つ目の比較は、ポイントの有効期限についてです。ヤマダ電機は獲得したポイントが最終購入日から1年間の有効期限ですが、ビックカメラの場合は最終利用日から2年間の有効期限となり、また貯まっているポイントも含めて2年延長されるので、定期的にビックカメラを利用しない人にとってもメリットです。
二つ目の比較対象は、貯めたポイントの利用方法についてです。ヤマダ電機の場合、ヤマダ電機のオンラインショップや実店舗、またはヤマダ電機が運営しているショップのみが共有ポイントとして利用できます。ただし、ポイント利用分にはポイントが付かないので、特価品などのもともとポイントがつかない商品の購入で利用するのが良いようです。
参考記事:ヤマダ電機のヤマダポイントをお得に使う方法を調査!ヤマダポイントはそのまま店頭で使うと、損するポイント制度です。
対して、ビックカメラは同じビックグループであるコジマやソフマップでもポイント交換レートの変動なしでポイントを利用することが可能です。なお、逆にコジマやソフマップのポイントもビックカメラ全店で利用可能となっております。
さらにいうと、ビックカメラでは「ビックカメラSuicaカード」の利用で、現金払い時の10%還元よりお得な11%還元となり、現金のみ10%のポイント還元となるヤマダ電機と比べても大きな違いとなるでしょう。またSuicaとしても利用できるため、JR東日本をよく利用する人とっても、かなりメリットとなるでしょう。
こういったユーザー側のメリットが、明確で操作が単純であるほどポイント機能の利用率が上がると考えられます。また、ビックカメラの場合は利用者の多いSuicaと組み合わせたカードにしたことで、ポイントの利用率やビックカメラへの送客率も上げたのです。
事例⑤「ユニクロ」2位との差は2倍以上!圧倒的に売上を伸ばすユニクロの戦略とは
日本ネット経済新聞の記事を引用すると、ファッションECの売上ランキング1位はユニクロでした。ここ数年はユニクロがダントツの1位をキープしており、今後も余程のことがない限りは1位の座を独占し続けるでしょう。それほどに2位との差は圧倒的です。
順位 | 会社名 | 2022年度売上高(百万円) |
1 | ユニクロ | 133,800 |
2 | アダストリア | 62,600 |
3 | QVCジャパン | 53,100 |
4 | ベイクルーズ | 50,000 |
5 | ジュピターショップチャンネル | 46,600 |
参考記事:【「ファッションEC売上高ランキングTOP131」発表】コロナ後伸び悩む企業も ネットとリアル一体の強化策が鍵(日本ネット経済新聞)
ECサイトと実店舗のどちらも売上を伸ばす理由とはなぜか、ユニクロのオムニチャネル戦略を徹底分析します。
そもそもECサイトと実店舗、両方の売上が良い理由は業界トップクラスのユニクロだから、という理由は当然あると思います。しかし、今回様々なECサイトを比較してみた結果、確実にユニクロと他社との違いを感じた部分があります。
それは、サービスの使いやすさです。最も初歩的で当たり前なことかもしれませんが、他社のアプリと比較してもあきらかに動作が速く、機能も単純、さらにアプリの初回起動時にはわかりやすい操作手順付き、サービスの使いやすさはユーザーの利用頻度に大きく影響します。
例えば、ECから店舗への送客率を上げるために、アプリの会員証をお会計時にレジで提示すると次回店舗の買い物で使えるクーポンがもらえ、購入履歴が残ります。
この機能の特徴はユーザーにとってはアプリの提示で実店舗で使えるクーポンがもらえ、企業にとってもアプリの利用率や実店舗の売上向上にもつながります。また購入履歴をユーザー自身で確認ができるため、また同じものを購入したい場合、一から商品を探す必要がなくスムーズにショッピングが可能となります。
逆に、店頭からオンラインストアへ送客する場合は、店頭商品のバーコードをスキャンするだけで、オンラインストアや各店舗の在庫状況や商品のレビューのチェックが可能になります。また、気になる商品はアプリ内でお気に入りに登録しておけば、その日に店舗で購入に至らなかった場合でも後々プッシュ通知でお知らせができ、購買促進をはかることも可能です。
またオンラインの購入時には、通常なら4,990円未満の買い物の場合、送料がかかってしまいますが「ユニクロ店舗受取り」だと送料無料となるため、例えば店舗は家に近いのにオンラインにしか在庫がないという状況の場合ユーザーにとってメリットとなるサービスです。
これはもちろん店舗側にとってもメリットがあり、受け取り目的で来店したユーザーの「ついで買い」が期待でき、購入機会を増やすことができます。
このようにユニクロのオムニチャネル戦略は、かなり細かくユーザーが利用するシチュエーションが考えられており、常にECと実店舗をユーザーが行ったり来たりするような仕組みでアプリを開発されています。
ECとリアル店舗を結びつけるための3つの施策!
①アプリで簡単ポイント管理
ECサイトと店舗を連携させるためには、まずはポイント管理をアプリで連携させることが重要でしょう。
例えば、店舗で「ポイントカードをお作りしますか」と言われると名前やメールアドレス、住所を書き込むのは面倒くさいと思い、それだけでユーザーが離れてしまう場合もあります。
しかし、「アプリインストールで今日からポイントが付けられます」と言われたら、インストールするだけなら、とユーザーがインストールしてくれる可能性が高まります。
またアプリの導入で、関心度の高いユーザーに向けてプッシュ通知ができたり、商品の紹介やキャンペーン情報の通知を可能にしたりと、一人当たりの単価を上げることにもつながります。
②O2OでECとリアル店舗を連携
下記の記事よりO2O とは 、
ネット上(オンライン)から、ネット外の実地(オフライン)での行動へと促す施策のことや、オンラインでの情報接触行動をもってオフラインでの購買行動に影響を与えるような施策のことを指します。
例えば、大手コンビニエンスストアのTwitter公式アカウントでは、フォローまたはツイートをリツイートすると「割引クーポン」がもらえるというキャンペーンを実施し、そのクーポンをリアル店舗で利用し来店率を上げることにつながります。
このようにリアル店舗の売上を上げるためには、ネット上のユーザー行動は切っても切り離せない存在です。なぜなら、近年はネット社会だからこそ、ユーザーに情報が届くのはリアル店舗から直接届くものではなく、確実にネットからの情報の方が量が多くスピードも速いからです。
③システム連携で顧客行動の可視化
ユーザーにせっかくアプリを利用してもらうなら、ポイント利用のためだけが目的ではもったいないです。なぜなら、もしシステム連携をしていればユーザーに会員登録を促すことにより、お得な情報をプッシュ通知したり割引クーポンを配布したり、企業側は顧客情報をもとに顧客分析をすることができる、というメリットがあります。
例えば、アプリ内でメディアを運営し、商品ページや特集ページなどを掲載した場合、ユーザーがどのようなメディアに興味があり、どのような顧客動線があるのかを分析することに役立ちます。
これを実現するために必要なのが、ECプラットフォームなのです。ECプラットフォームの大きなメリットは、拡張性にあり機能をセルフカスタマイズしたり、機能やデザインをオーダーカスタマイズできたりとビジネスに合わせたカスタマイズを実現できます。
O2O・オムニチャネルを取り入れるならクラウド型EC!
O2Oやオムニチャネルを実現させるには、システム投資が必要になります。なぜなら上記3つの施策を実現するためには、会員情報の連携や、ポイントシステム、アプリ等、様々なデータ連携やシステム連携が必要となりECとリアル店舗のデータを一元化しなくてはならないからです。
自社ECでO2Oやオムニチャネルを導入する場合に選ぶべきECシステムはクラウド型ECが最も費用対効果が高いといえます。
なぜなら、パッケージECでもオムニチャネルの実現は可能ですが、3年~5年でシステムが陳腐化してしまうため、オムニチャネルのシステム投資を回収する前に、次のECシステムのリニューアルをするためのコストが発生してしまいます。
しかし、クラウドECの場合日々システムが更新されるのでECシステムのリニューアルが不要です。そのため施策の実施や事業の状況に合わせて継続的にカスタマイズが可能な拡張性の高いクラウドECプラットフォームが最適です。
弊社株式会社インターファクトリーが提供するクラウド型ECプラットフォーム「ebisumart」はO2Oやオムニチャネルには欠かせない機能や多くの外部連携の実績があります。
また、今回は大手5社のオムニチャネルについてご紹介しましたが、さらに詳しく知りたい方はこちらの資料『オムニチャネルの導入方法と構築費用』をダウンロードください。
「ebisumart」お問合せ:https://www.ebisumart.com/input_ebisumart.html