Webサイトから問い合わせがあり、営業が商談に行っても、ターゲットユーザーではなかったり、小口の顧客であったりと、なかなか受注率(成約率)が上がらなくて苦戦しているのではないでしょうか?
実は、Webマーケティングに力を入れて問い合わせ数を増やそうとすると受注率が下がってきますので、逆の言い方をすれば、Webマーケティングを工夫することで受注率を高めることもカンタンにできます。
例えば、一例として高価格サービスの価格表記をホームページからなくすと、問い合わせは増えますが、受注率は減るケースがあります。逆に高価格サービスの価格を表記すれば、問い合わせが高価格のため、減りますが、問い合わせたユーザーは価格を承知の上で申し込むので受注率は高くなります。
このようにサイトの文言ひとつで受注率をある程度コントロールすることができるのです。
本日は、forUSERS株式会社で、Webマーケティングを担当している筆者が、受注率をサイト改善の力で高める5つの方法を解説します。
受注率が下がる根本的な理由は、マーケティング、営業の目標設定の違いにある
まず、受注率が下がってしまう根本的な問題はどこにあるのでしょうか?その多くのケースは、マーケティング部門と営業部門の目標設定が異なる点にあると筆者は考えます。
例えば、マーケティング部門の目標が「CVを月に100件獲得」というのであれば、マーケティング部門は積極的に広告を行い、また、CVを増やすためのサイトの訴求を行うでしょう。しかし、このやり方では「受注率の低いユーザー」からもCVを獲得してしまうことに繋がります。
そして、一方で営業部門では「受注率」が目標設定である場合、マーケティング部門が「CVを月に100件獲得」という目的で集客した「受注率の低いユーザー」に対応する必要があり、それらに営業人員を割くことで、見込み客へのアプローチも弱くなってしまいます。
つまり、営業部門とマーケティング部門の目標が違うことで、受注率が下がってしまうのです。そのためマーケティング部門、営業部門だけでなく、全社としてユーザーに接する部門の目標を統一する必要があるのです。
では、その前提でマーケティング部門が受注率を高めるためにどのようなことができるのでしょうか?ここから具体的な手法をWebの観点で5つ紹介します。
受注率を改善する5つのWebマーケティング施策
それでは受注率を改善するための5つの施策を解説します。
①メールマガジンのセグメントを絞る
まず、受注率を改善するためには、自社のターゲット層にメール配信をする必要があります。通常、メルマガのリストというのは、下記の経緯で収集されているはずです。
◆よくある企業のメルマガのリスト
・過去に商談があった企業
・過去に問い合わせがあった企業
・過去に資料請求があった企業
・過去にセミナーに参加した企業
・過去に名刺交換をした企業担当者
しかし、このリストの多くは「自社のターゲット層」ではない可能性があります。もし、商品やサービスが多数用意されている企業であれば、特に問題ありませんが、例えば売り込むサービスが大規模向けの基幹システムであれば、中小企業には導入が困難な商材ですし、またシステムをグループ会社で共有しているケースなどは営業する余地がほとんどありません。
このようなリストに、メルマガを実施しても、ターゲット層以外にはあまり刺さりませんし、仮にターゲット層以外から商談を実施できても、受注率を下げている要因にもなります。
メルマガ施策を実施する場合は、例えば以下のようなセグメント抽出を実施しましょう。
◆メルマガのリスト抽出例
・年商10億円以上
・社員300人以上
・関東
・BtoB事業者のみ
セグメントを絞ることで、ターゲット層以外への無駄なアプローチを避けて、ターゲット層に絞ったプロモーションや訴求を行うことができるからです。
ただし、不要なリストは捨てるのではなく、蓄積はしておき他社とのセミナー協業であったり、新サービス開発時には、今とは違ったターゲット層へのアプローチが必要となる場合もあるので、保管しておくべきです。
②広告を厳選する
例えば、企業が以下のような広告やWeb施策を行っていたと仮定します。
・リスティング広告
・ディスプレイ広告
・リマーケティング広告
・Facebook広告
・アフィリエイト広告
筆者の経験ですと広告媒体によって、商談率の違いは如実に出てきます。定性的なデータがあるわけではなく、決して一概には言えませんが、リスティング広告やリマーケティング広告は比較的、商談率は高い傾向にありますが、その他の広告は商談率は高くはありません。
リスティング広告は、最も商談率の高い自然検索に次ぐ商談率の高さがあり、リマーケティング広告も、サイトを複数回訪問している方への広告なので、必然的に商談率が高くなります。
しかし、それ以外の広告ですと、バナーに反応しただけであったり、アフィリエイターが違った意図で会社の宣伝をしていたりと、商談率が高まりにくいのです。特に高額商品ほど、この傾向は強くなります。
このため、商談率を高める手法として広告を商談率が高いものに厳選します。問い合わせの数は減りますが、商談率を高めるのは、限られた営業人員をフル活用する方法となり、間接的に受注率を高めることにも繋がります。
③CVボタンの種類を減らす
BtoBのWebマーケティング手法の一つに、CV(コンバージョン)ボタンを増やすというテクニックがあります。例えば、本来「問い合わせ」ボタンだけで、事足りるのですが、ボタンをサイトに複数用意します。
・問い合わせボタン
・資料請求ボタン
・見積依頼ボタン
この施策を行うと、CVを増やすことができます。なぜならユーザーがサイトに一日100~1,000人以上も訪れる企業サイトだと、ユーザーによって気持ちが異なるものです。
「問い合わせしようかな。。」
「資料がとりあえず欲しい。。」
「いくらくらいするサービスだろうか?」
このように多くのユーザーの気持ちを拾うために間口(CVボタン)を広げるのが、CVボタンを複数用意する施策なのです。この施策は、問い合わせを増やすという目的には向いているのですが、いろいろなユーザーからのCVポイントが増えるため商談率が低くなります。
そのため「本当に切迫度が高いユーザーのみから相談を受けたい」場合は、いったん問い合わせボタンだけにすると、CV数は減りますが、受注率を高めることに繋がります。問い合わせ数が減れば、営業人員を集中して、見込み客に集中させることにつながるからです。
④サイトの文言をより具体的に記述する
公式Webサイトの文言をより具体的に記述するという方法があります。企業のサイトでは、マーケティング担当者間によくあるのですが
「この機能の記述は具体的にサイトに書いてはいけない!商談中に言うから!」
「費用はサイトに書かない!高いことが分かると、問い合わせしないから!」
ということがあります。具体的に書ける文言を抽象的に書く企業側の理由は「問い合わせ」させるためです。なぜならAという機能があった場合、そのA機能はB機能を兼ねているのか?いないのか?ということをはっきりさせない方が、ユーザーからの問い合わせが来る可能性が高まる場合があるからです。
しかし、商談の際にA機能がB機能を兼ねないことであったり、費用が高すぎる場合などは、検討されないので、お互い時間が無駄になってしまいます。そのため商談率を高めることを意識する場合は、サイトの文言を具体的に記述した方が良いのです。なぜなら、ユーザーはサイトの内容を見た上で問い合わせる方が多くなり、見込み客からの問い合わせが多くなります。
また、サイトの記述を具体的にすることは、SEOにも良いことです。サイトにマニュアルのような機能を持たせることで、さまざまなキーワードでサイトに流入するユーザーが増えるようになるので、アクセス数が増えます。
⑤受注率を増やすためのWebツールを導入する
受注率を増やすためのWebツールには、営業支援ツールがあります。Pardot(パードット)あるいはHubSpot(ハブスポット)など導入に数百万円かかるツールもあります。こういったツールはMAツールと呼ばれ、詳しくは下記の記事をご覧ください。
それらのツールの特徴は、問い合わせ先のリファラーが分かることです。つまり、問い合わせがあったユーザーが、どの広告に接触して、何回サイトに訪問して、どのような経緯でサイトに訪れたかがスコアリングされるのです。そのため見込み度が分かるので、営業が事前に広告や回遊ページを見ることで受注率を高めることができます。
これらのツールのデメリットは、なかなか営業がそのようなツールを使うスキームになっていなかったり、営業がツールのログインを面倒に感じるケースもあります。そのような場合、受注率を高めるために、マーケティング担当が営業にツールを使うように指導する必要があります。
まとめ
受注率を高めるWebマーケティング手法を解説しましたが、そのためには、広告から問い合わせを経て、その後の受注率までを追えるシステムがないと、精緻に効果測定をするのは難しいでしょう。
ですから、受注率を意識する場合は、まずは広告から受注率までを追えるシステム構築が必要です。
まずは、社内の顧客管理システムを把握し、そのシステムと広告、問い合わせデータベースをどのようにつなげるかを考えることから始めてみましょう。