D2Cを成功させるために予算をかけてマーケティングを実施しても、期待した効果が出ないという事業者も多いのではないでしょうか?
その大きな理由は、D2Cは商品さえあればカンタンにECサイトを構築できて事業をスタートさせることはできますが、D2Cの集客や売上をあげるためのマーケティングは非常に困難だからです。
この記事では、D2C事業を始めたばかりの方や、これから始める方のためのD2Cマーケティングの5つのステップを解説します。
この5つのステップは、forUSERSでマーケティングを担当している筆者が実際にD2Cを成功に導くための手法として使っているものですので、ぜひ最後までご覧ください。
D2Cでのマーケティングが困難な理由は、あらゆるジャンルでレッドオーシャンが進んでいるため!
冒頭で解説したとおり、商品があればD2Cを始めるのはカンタンです。月々数千円から導入できるECプラットフォームを契約して、商品登録とある程度のデザインをECサイトに施すだけで開設することができるので、その気になれば3日間程度でも開業可能です。
しかし、D2CのECプラットフォームを開設しても、ブランド力がなければ誰もECサイトに訪れないため、Webマーケティングによって以下のような集客施策を実施する必要があります。
◆D2Cでよく実施されるWebマーケティング手法
・Facebook広告
・アフィリエイト広告
・インフルエンサーによるPR
しかし、どの手法を使ってもなかなか上手くはいきません。なぜなら、予算を使う施策は競合他社や大手も必ず実施しており、広告市場はレッドオーシャンと化しています。そのためCPA(CV1件あたりの広告単価)が数万円以上となることが多く、広告費用が高いためなかなか採算が合いません。
例えば、筆者は2012年ごろ英会話スクール業界でGoogle広告を実施していましたが、当時はCPAが8,000円程度でした。しかし、現在はCPAが3万円近くなっており、過去10年でCPAが2.6倍に高騰しました。
これは筆者のいた業界だけではなく、あらゆる業界で起きていることなのです。以下の記事でも広告費の高騰について書かれております。
参考:MarkeZine「6割超が広告費の高騰を課題視/1年前よりも施策のROIを厳しく問われるように【HubSpot調査】」(2023年5月25日)
そのため、広告に依存したマーケティングはCPAが高く、ROI(投資対効果)を得ることが難しくなかなか上手くいかないのです。
では、どのようにマーケティングを実施すれば良いのでしょうか。次にD2Cマーケティングを成功させるための5つのステップを解説します。
D2Cマーケティングを成功させるための5つのステップ
D2Cマーケティングを成功させるためには以下5つのステップに沿って施策を行います。
ステップ① ポジショニングマップを作成して、自社商品の競合優位性を確認する
ステップ② メッセージ(キャッチコピー)を統一する
ステップ③ 安心感や信頼感のあるECサイト作り
ステップ④ 商品と相性の良いインフルエンサーやメディアに広告費を使い、露出を一気に高める
ステップ⑤ 広告予算を増やす
それでは各ステップを一つずつ解説します。
ステップ① ポジショニングマップを作成して、自社商品の競合優位性を確認する
まずは、自社商品の競合優位性を確認すべきでしょう。そこで最も役に立つのがポジショニングマップです。以下はWORKMAN Plusのポジショニングマップです。
◆ポジショニングマップの例
引用(画像):ダイヤモンド・チェーンストアオンライン「あのユニクロも苦しんだのに! ワークマンに“ブームの反動減が来ない”明確な理由」(2019年12月24日)
このポジショニングマップにより、アウトドア分野においては「高機能」「低価格」というジャンルにおいて、競合がいないことが分かります。そこで、WORKMANでは、高機能でありながら低価格の商品を作り、そこにマーケティング資本を提供することで、ヒット商品を作ることができたのです。
まずは、自社のD2C領域においてもポジショニングマップを作成して、そこに自社と競合をマッピングしてみてください。その結果、もし自社に競合優位性がなければ、マーケティングが成功しづらいということになります。その結果、商品企画からやり直してみるべきです。
競合がいない市場(もしくは競合が少ない市場)を見つけることができれば、ユーザーから見ても訴求が分かりやすくなるのです。
もし、これがレッドオーシャンな市場であれば、ユーザーから見た場合「A社とB社、あるいはC社の違いは何だろう?」と決め手になりませんが、唯一のポジションを見つけることができれば、メッセージがユーザーに響きやすくなるのです。
ステップ② メッセージ(キャッチコピー)を統一する
良いポジショニングを見つけることができても、ホームページや広告媒体、SNSでバラバラなメッセージを発信していては広告効率は悪くなりますし、ユーザーのサービス認知にも影響が出てきます。
◆統一されていないメッセージ(キャッチコピー)の例
Web広告バナー「コレステロール改善」
SNS「そろそろコレステロール対策」
このように、意味は似たようなものでもメッセージが異なると、ユーザーから見ると「違う商品ではないか?」と思わせる原因になります。もちろんABテストでキャッチコピーをテストするというのも良いのですが、これからD2Cを広めるフェーズであれば、メッセージを統一しなくてはなりません。
限られた予算でブランド認知を高めるためには、バナーをクリックして離脱したユーザーも、後で思い出してホームページを検索したときにメッセージが異なると「あれ?この前見た広告とは違うサービスだな」と思ってしまい、離脱する原因を生んでしまうからです。
そのためD2Cを開始したのなら、まずはメッセージ(キャッチコピー)を統一することを考えてみましょう。
ステップ③ 安心感や信頼感のあるECサイト作り
広告予算を使って、やっと公式ホームページやLP(ランディングページ)に訪問したユーザーが、サイトを見た時に安心感や信頼感が持てないデザインだったらどう思うでしょうか。どんなにサービスが良くても、「このサイトでクレジットカード番号を入力するのは抵抗がある」と思うユーザーもいるはずです。
そのため、広告に露出するLPはもちろん、公式ホームページのデザインはデザイナーを入れて、安心できるデザインを作るべきです。
LPは10万円から作ってくれる安価な業者もありますが、最低でも30万円の予算は確保して、デザインを発注するべきです。例えば、以下のようなLP一覧(紹介サイト)に掲載されるようなクオリティであるべきでしょう。
◆LPの一覧
LPの知見がないという方は、このLP一覧から自社の業界やイメージに合うLPを選んでみてください。
ステップ④ 商品と相性の良いインフルエンサーやメディアに広告費を使い、露出を一気に高める
自社商品と相性の良いインフルエンサーを見つけます。インフルエンサーはフォロワーが数十万人以上いる影響力の強い人に限るべきです。インフルエンサーといっても、さまざまなSNSで活躍している方がいます。
◆インフルエンサーのSNSプラットフォーム
② Instagram
③ TikTok
特にYouTubeは、全世代に大きな影響力がありますし、動画ということもあり商品の良さを最大限に引き出しやすいメリットがあります。
Instagramは、アパレルなどビジュアルが重要な商材と非常に相性が良いSNSです。Instagramの投稿では、その場で購入されたり認知を深めてもらうことも大切ですが、ユーザーに投稿を「保存」してもらえるようなものを意識しましょう。
保存を押す人が多くなれば、Instagram上のアルゴリズムで優遇され露出が増える事もありますが、ユーザーに保存されるということは後で購入につながる可能性が出てくるからです。
TikTokはZ世代から絶大な支持を受けているSNSです。10~20代向けがターゲットなら欠かせないSNSと言えるでしょう。
インフルエンサーを探すときは、キャスティング会社を利用するのも良いのですが、気になるインフルエンサーにDMを送って、直接交渉してみるべきです。
ただ、いくらフォロワー数が多いインフルエンサーでも、インフルエンサーにはそれぞれ得意とするジャンルがありますし、自社の商品のイメージに合わないインフルエンサーを起用した場合、逆効果になってしまう恐れもあります。
そのため、フォロワー数だけで判断はせず、投稿内容とエンゲージメント(フォロワーの反応)をしっかり確認し、「この人がこの商品を紹介して違和感はないか?」といったところまで検討することが重要です。
インフルエンサーに案件を依頼する場合、影響力が大きいインフルエンサーであれば、1案件数十万円から数百万円かかりますが、一気に認知の獲得を狙っていきましょう。
また、インフルエンサーではありませんが、近い媒体としてPIVOT、R25という有力YouTubeメディアがあります。そこに出稿する方法もありますが、有名メディアだけあって出稿(出演)費用は安くはありません。
ステップ⑤ 広告予算を増やす
インフルエンサーをキッカケに、プロモーションが成功したタイミングで広告予算を増やしてみましょう。もし、ターゲットに対してインフルエンサーマーケティングがそれなりの成果が出ているなら、CPAを下げることにつながるはずです。
最初から広告予算を高くするよりも、プロモーションの起点(ここではインフルエンサーマーケティング)を作って、その段階から広告予算を増やすことを考えてみましょう。
もし、インフルエンサーマーケティングが成功していないのなら、もう一度インフルエンサーマーケティングを企画し直してみてください。
D2Cの成功事例を徹底的に分析する
D2Cを開始するのはカンタンですが、D2Cの集客を成功させるのはカンタンではありません。まず、事業を開始する前にD2Cの成功事例を徹底的に分析してみるべきです。そのためにD2Cの事例を集めましょう。事例は一つだけでなく、10~30社の分析をしてみるべきです。
その中で自社に生かせそうなマーケティング手法や考え方は積極的に取り入れてみてください。D2C企業や事例の探し方はGoogle検索を使いますが、普通に検索すると、ありきたりの事例や昔から知られている事例ばかりでてくるので、以下のように「Googleニュース検索」で「D2C」と検索すると、最近ニュースになった事例を集めることができます。
◆「D2C」のGoogleニュース検索結果
また、Googleアラートというツールを使って「D2C事例」と登録することで、世の中でニュースになったばかりの事例がメールで通知される便利なサービスもありますので、Googleのサービスをうまく使って、事例を集めてみてください。
自社の事業に生かせる事例が見つかったら、そのD2C企業の「ホームページ」や「SNS」、「広告」を徹底的に分析しましょう。
業者やコンサルに依存するだけではD2Cの成功は難しい
優秀な業者やコンサルは数多くいますが、全てを丸投げしたり依存する体制では、D2Cを成功させることはできません。もちろん業者やコンサルの独自のノウハウや知見、ネットワークなどは魅力的ですが、依頼する側の熱意がないと業者やコンサルもパフォーマンスを発揮できません。
筆者は、2013年にD2Cで大失敗をしたことがあります。その時は予算のある会社に所属していたため、コンサルに数千万円を投資したのですが、筆者をはじめとするメンバーがD2C事業自体に後ろ向きであったため、誰も積極的ではなく、結果としてD2C事業は大失敗してしまいました。
D2Cで必要なのは「熱意」です。そして熱意があれば、業者やコンサルも積極的にサポートしてくれる可能性が高まり、D2C事業の成功につながるはずです。
優秀な業者やコンサルのノウハウは積極的に取り入れるべきですが、依存するのではなく彼らを引っ張る存在になるべきです。
もし、D2C成功のためのコンサルタントをお探しであれば、株式会社インターファクトリーが提供する、EC支援サービス「ebisu growth」まで、お気軽にお問い合わせください。
ebisu growthでは、豊富なコンサルタントが貴社のD2C事業の継続的な成長を支援しますので、ぜひご検討ください。
まとめ:D2Cは商品が全て
本日は、D2Cのマーケティングの5つのステップについて解説しました。
しかし、商品やサービスが突出して良いものであればマーケティングは必要なく、SNS時代には勝手に広まるという状況を作ることができるでしょう。
つまり、良い商品をつくることができればマーケティングは必要ありません。だからこそ、D2Cの成功の秘訣は商品開発にあるのです。
もし、この記事が優れた商品を作るキッカケとなれば幸いです。