「タグる」とは、InstagramやX(旧Twitter)などのSNSで、ハッシュタグを付けて「#●●」と情報検索する方法のことで、ハッシュタグの“タグ”から「タグる」と呼ばれるようになりました。生まれたときからインターネットが身近にある、Z世代を中心に利用されている情報収集方法です。
「ググる」と言われるGoogle検索と「タグる」の最大の違いは以下の点です。
◆「タグる」と「ググる」の違い
・「タグる」だと数秒前の最新の情報が入手可能
・「タグる」だと情報の拡散具合が把握できる
Google検索結果の満足度は米国を中心に下がってきており、その原因は世界中でSEO対策を行う企業や個人が増えて、いわゆる「生の情報」「本当の体験談」をGoogle検索では入手しづらくなったことにあります。
そのため若い世代を中心に、ジャンルによっては「ググる」から「タグる」へ情報検索の仕方が移行しているのです。
また、Instagramの「発見タブ」で情報を見つけることを「タブる」と言いますが、もはや何も入力しなくても欲しい情報が手に入れられる時代になりつつあります。
本日は、forUSERS株式会社でマーケティングを担当している筆者が、「ググる」「タグる」「タブる」について詳しく解説します。
「ググる」「タグる」「タブる」の違いを一覧で把握しよう
まず、①「ググる」②「タグる」③「タブる」の違いを解説します。
使い方 | 入力例 | 対象サービス | |
①ググる | Google検索の検索窓に検索したいキーワードを入れる | 「伊豆 観光」 | Google Yahoo! Bing |
②タグる | InstagramやX(旧Twitter)などにハッシュタグ(#)をつけてキーワードを検索する | 「#伊豆観光」 | Instagram X(旧Twitter) TikTok |
③タブる | Instagramにおいて発見タブを押す | 入力しない(Instagramが検索結果を自動生成) |
それでは、実際に①~③を実践した画面で紹介します。
①「ググる」(Googleの検索画面に「伊豆 観光」と入力)
Google検索、つまり「ググった」経験は誰もがあるのではないでしょうか。「ググる」とは、以下のように、検索エンジンの検索窓に目的のキーワードを入力することです。
◆「ググる」の例
出典(画像):Googleで「伊豆 観光」と検索した結果
検索結果上位では、いわゆる「口コミサイト」や「まとめサイト」が表示されています。似たようなコンテンツが多く、検索結果が面白くないと思ったことがある方もいるのではないでしょうか。
Googleが意図してこのような検索結果にしたわけではなく、さまざまな企業や個人がSEO対策をした結果、上位表示を狙った記事が多く存在しているのです。
ユーザーのためというより、Googleの上位表示のアルゴリズムのために書かれた記事が多く、ユーザーにとっては検索結果がつまらなくなったと言われてきており、「米国では料理レシピや口コミの検索においてはGoogleよりもReddit(レディット)が利用されている」と訴える記事もあります。
参考:Forbes JAPAN「米国ではグーグルはもう死んでいる? SEOは検索業界をどう『蝕む』か」(2022年6月17日掲載)
それでは、次に「タグる」について解説します。
②「タグる」(Instagramで「#伊豆観光」と入力)
InstagramやXのようなSNSで「タグる」ことで、情報発信者が明確になります。
特にフォロワーの多いインフルエンサーや、あるジャンルに特化して専門性を持って発信している方の投稿は、多くの人に信頼を与えるため、観光やグルメ、アパレル、コスメなどの検索で「タグる」が利用されます。
◆タグる
出典(画像):Instagramで「#伊豆観光」と検索した結果
また、Instagramの場合はGoogle検索結果とは異なり、写真や動画投稿がメインとなるため、情報収集の時間を直観的に短くすることができ、またその投稿が役に立ったと思えば「保存」することもできます。
では、次にInstagramで利用される「タブる」について解説します。
③「タブる」はInstagramの発見タブを押すだけでコンテンツが出てくる
①「ググる」と②「タグる」は検索するキーワードを入力するのに対して、「タブる」は、以下のように発見タブを押すだけで、Instagramが自分に興味がありそうなコンテンツを自動生成してくれるものです。
以下をご覧ください。
◆Instagramの虫眼鏡(赤枠)をタップした画面
出典(画像):Instagramの発見タブを開いた結果
上記は、筆者のInstagramアカウントですが、絶えず海や自然の投稿を発信しており、またフォローしているアカウントやフォロワーも海や自然が好きなアカウントとなっています。
そのため、Instagramの発見タブで「タブる」と、筆者が好む海や自然のコンテンツがレコメンド(おすすめ)として表示されるのです。
このように「タブる」では、ユーザー(アカウント)のデータから、ユーザーが見たい投稿を推測してレコメンド配信してくれることが特徴です。
しかし、「タブる」のデメリットは、データと関係のないコンテンツはレコメンドされない点です。この点は、後ほど解説します。
では、ここまで「ググる」「タグる」「タブる」についてそれぞれ解説しましたが、やはりその中でもググる人が減っているのか、データを基に解説します。
ググる(Google検索)時代は終わったわけではない!
20代などを中心として、ググる人は減ったのでしょうか?
博報堂生活総合研究所が実施した研究では、20代のブラウザ検索は増えているという結果が得られました。
◆一人あたりブラウザ検索セッション数(月間平均、男女平均)
出典(画像):博報堂生活総合研究所「『検索離れ』は本当? データから浮かび上がる若者の意外な検索行動」(2021年10月6日掲載)
この研究によると、若者のブラウザ検索は2016年では月に30回ほどだったのが、2020年には月に40回ほどに増えています。ただし、この調査には続きがあり、約半数はブラウザ検索と同時にTwitterやInstagramも使っていることが分かっています。
◆「ブラウザ検索」と同時に主要アプリも使っている人の割合
出典(画像):博報堂生活総合研究所「『検索離れ』は本当? データから浮かび上がる若者の意外な検索行動」(2021年10月6日掲載)
つまり「若者はGoogle検索をしない」というのは間違いで、Google検索と一緒にInstagramやTwitterで「タグる」を実践しているのです。
このことから、タグることによってGoogle検索の弱点である以下の2点を補完しているのではないかと筆者は考えます。
◆Google検索が苦手なこと
・リアルタイム性
しかし、例えば「引っ越しの手続き」や「ECサイトの構築方法」「●●市 アルバイト」など、調べものや求人といった特定の検索ジャンルについてSNSで知るのは困難です。「タグる」に適した分野は以下のようなジャンルだと言えるでしょう。
◆タグるが得意なジャンル
・グルメ
・アパレル
・コスメ
・エンタメ
このように、「ググる」から「タグる」というように時代が変わっているのではなく、「タグる」が「ググる」を補完したり、あるいはそれぞれの得意なジャンルで使い分けているのだと推測されます。
それでは、「タブる」はどのような使い方をされているのか、次に解説します。
「タブる」は新しい情報・インフルエンサーを探すために使う
「タブる」にはキーワードの入力がないため、アカウントの以下の行動から、Instagramが発見タブにレコメンドとして出てくるコンテンツを選び出します。
◆タブるに影響するアカウントの行動
・フォロー&フォロワー
・過去の検索行動
つまり、Instagramはアカウントのデータから、発見タブに出すべきコンテンツを選び出しているのです。「タブる」は何もせずに興味がありそうなコンテンツが表示されるメリットがある反面、デメリットもあります。
◆タブるのデメリット
・Instagram以外で興味のあるコンテンツが表示されない
・Instagram上で無意識に本当に興味のあるコンテンツをクリックできない
まず筆者のInstagramの体験談ですが、Instagram上では、普段は海に関する投稿しかアップしたりフォローしたりしていません。そのため、他に興味のあるスニーカーの情報などは、発見タブに表示されることはありません。
それは、筆者がInstagram上でそのように行動していることで、データがInstagramに蓄積されないためです。
このことから、発見タブに表示されるコンテンツは、アカウントの持ち主の行動範囲内でしかレコメンドされないという大きな欠点があります。
しかし、データが蓄積される範囲内では、新しいコンテンツやアカウントと出会う可能性の場となります。
実は、「タブる」は今のところInstagram上の行為のことを表しますが、同じようにGoogleやYouTube、Xにもコンテンツがレコメンドされているのです。
それでは、それぞれのレコメンドされるコンテンツを紹介してまいります。
「検索」から「レコメンド」の時代に
すでにGoogleやYouTube、X、Tiktokなどプラットフォーマーはレコメンドに力を入れております。一つずつ解説します。
① Googleディスカバー
PCやスマホのGoogleアプリをクリックすると、検索窓の下に記事がレコメンドで表示されます。これがGoogleディスカバーという機能です。
Google検索やYouTube検索のデータから、興味のありそうなコンテンツを表示させるアルゴリズムになっております。ここに表示されるための詳細なアルゴリズムは公開されておりませんが、Googleからは「信頼性の高いメディア」が優先的に表示されるようになっているとの声明が過去にありました。
筆者が所有するブログ記事もGoogleディスカバーに表示されたことがありますが、大きなアクセス数が発生した経験があります。今後は、企業の集客方法として、Googleディスカバーに掲載されやすいような記事を書くテクニックが出てくるかもしれません。
② YouTubeのホーム画面
YouTubeのホーム画面で表示される動画には、チャンネル登録していないアカウントも多数表示されます。逆にチャンネル登録していても、最近見ていないものであれば全く表示されません。
つまり、Instagramの発見タブと同じように、興味関心がある画面が表示されているのです。
多くの人がYouTubeを見ていると思いますが、すでに「タブる」と同様のレコメンド配信を受けているのです。
③ X(旧Twitter)
X(旧Twitter)の場合は、タブで「おすすめ」と「フォロー中」を使い分けることができますが、デフォルトは「おすすめ」となっており、ここにはXの過去のユーザー行動に基づいて、おすすめの投稿が出てくるようになっています。
筆者の所感ですが、Xの場合は、GoogleディスカバーやYouTubeほどアカウントの持ち主の好きなコンテンツに特化しているわけではない印象があります。
④ TikTok
レコメンドにおいては、TikTokのショート動画がブームの火付け役ではないでしょうか?
つまり、ユーザーは検索しなくてもスクロール(上下に動かす)するだけで、次のコンテンツを見ることができるため、特にテーマを考えなくても面白いコンテンツを見ることができ、またTikTokも機械学習を繰り返し、ユーザー好みの動画をどんどん提供します。
TikTokの流行を受けて、InstagramやYouTubeにもショート動画機能が実装されました。また、TikTokでもハッシュタグ検索や通常の検索が可能です。
このように、「タブる」と言えばInstagramですが、同じレコメンド配信は、Instagramに限らず多くのプラットフォームにおいてすでに実装されているのです。
「ググる」「タグる」「タブる」の全てが並行して使われている!今後はプラットフォーマーはユーザーの余暇時間の奪い合いでレコメンドを強化
「ググる」「タグる」「タブる」の全てが、ユーザーの目的や意図に応じて使い分けられて(あるいは同時に使われて)おります。
しかし、プラットフォーマー同士では多くのユーザーの余暇時間の奪い合いが始まっております。Tiktokで流行ったショート動画は、InstagramやYouTubeにも機能が実装されており、さらにYouTubeのスマートフォン用画面では、ショート動画の表示スペースが非常に大きくなりました。
特に入力を必要としない「レコメンド」においては、データ量や使用時間がカギとなりますので、スマートフォンの利用時間の奪い合いを制するために、それぞれの企業は頻繁にホーム画面の変更や機能変更を行っているのです。
最後に筆者の個人的意見ですが、あまりにレコメンドに慣れ過ぎてしまうと、アウトプットする習慣が弱くなってしまいます。時にはスマートフォンを離れて、家族や友人、あるいは会社の仲間と意見交換する習慣もなくさないようにしたいものですね。
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