ECサイトにおける返品率は明確なデータがありませんが、筆者の経験だと4~10%程度であると考えます。またRecustomer株式会社が2023年に実施した調査によると、ECサイト全体における返品率の平均は6.61%とされており、このようなデータはEC担当者にとっては基準とすべきデータと言えるでしょう。
返品率を下げるためには、以下のような施策が有効であると筆者は考えます。
◆返品率を下げるための7つの施策
② サイズについてのアドバイスを充実させる
③ バーチャル試着やAR技術の導入
④ 商品レビュー欄を設置する
⑤ 発送前の品質チェックを徹底する
⑥ サンプル商品の提供
⑦ カスタマーサポートに力を入れる
この記事では、forUSRES株式会社でマーケティングを担当している筆者が、ECサイトの返品率について解説します。
ECサイトにおける返品率の計算方法
返品率の計算式は以下のとおりです。
◆返品率の計算式
以下に例をあげます。
返品率の計算の具体例
◆とあるECサイトの返品数と総購入数の例
・総購入数が「500個」
手順に従って計算してみましょう。
20 ÷ 500 = 0.04 になります。
手順② この結果に100をかけます。
0.04 × 100 = 4% です。
このようにして、返品率は「4%」と計算できます。あなたのECサイトで返品率を求める場合はこの式に「総購入数」と「返品数」を入れることで、ECサイトの返品率を求めることができます。
2023年の国内の返品率の平均は「6.61%」という調査結果
Recustomer株式会社が、2023年に実施した以下の調査によると、ECサイト全体での返品率は6.61%という結果が出ております。以下はとても良いレポートなので、ぜひダウンロードしてみましょう。(ダウンロードには個人情報入力が必要です)
参考資料:Recustomer株式会社「2023年度ECサイトの返品・交換調査レポート」
日本の全てのECサイトや、楽天市場、AmazonなどのECモールのデータではないため、全てのECサイトの平均とは明確に言い切れませんが、自社のECサイトの返品率と比べるデータとしては参考になる数字だと思います。日本国内の返品率は高くはありません。
では、返品が多い商品ジャンルはどのようなジャンルがあるのでしょうか?
返品が多いのはアパレル商品
返品率に関しては、明確なデータがありません。その中で、返品率が高いジャンルはどのようなものなのでしょうか。国内ではなくアメリカのデータとなりますが、WORLDMETRICS.ORG REPORT 2024に、以下のような返品率のデータがありました。
◆アメリカのECサイトで返品率の高い商品
ジャンル | 返品率 |
---|---|
アパレル | 30% |
美容・パーソナルケア用品 | 20% |
おもちゃ | 15~25% |
アウトドア用品 | 15~20% |
スーツケースや旅行用品 | 15% |
園芸用品 | 10% |
出典(データ):Ecommerce Return Statistics: Insights into Return Rates and Consumer Behavior
まず「アパレル商品」は、サイズ感や自分に合わないという理由だけでなく、購入の敷居を下げるために積極的に「返品無料」を打ち出しているアパレル事業者が多く、返品率が一番高くなっております。
また「美容品」に関しても「●か月以内なら返品可能」というキャンペーンを実施していることが多く、肌やユーザーの嗜好と合わない場合の返品が多くなります。
「アウトドア用品」も比較的高い返品率を示しており、商品を実際に使ってみて期待に合わない場合などに返品されることが多いと考えられます。おもちゃは子どもが興味を示さなければ、返品されやすい商品と言えるでしょう。スーツケースや園芸品などは、届いてみると期待するだけの大きさがなかったり、鉢の大きさが合わないなどが考えられます。
このように、ECサイトでジャンルごとに返品率が異なるのは、商品の特性だけでなく、事業者が行う「返品無料」や「●か月以内の返品可能」といった制度やキャンペーンも影響していると考えられます。
それでは、返品率を下げるためにどのような施策が考えられるでしょうか。次に解説します。
返品率を下げるための7つの施策
返品率を下げることは、ECサイトにおけるコスト削減やユーザー満足度の向上につながります。それでは、返品率を下げるための効果的な7つの施策を紹介します。
施策① 商品ページのクオリティを高める
消費者が商品の特徴やサイズを誤解しないように、商品説明では多くの情報の記載が必要となります。EC事業者の中には、メーカーから商品を卸して販売する会社も多いのですが、そのような会社の場合は、メーカーから提供されている商品説明データを貼り付けているだけの会社も多くいます。
例えば、ワイヤレスイヤホンを販売する場合においても、実際に使ってみるとスペック表にはない情報があることが分かります。
筆者の体験談ですが、あるワイヤレスイヤホンを購入した後、スマートフォンとの接続に時間を要することが分かったことがありました。もし、事前にこの情報を知っていておそらく購入はしていましたが、事前に知ることができなかったので不満が残ってしまいました。
しかし、事前に知ることができれば「確かに遅いが、承知の上で購入したから仕方ない」という気持ちになり、商品や販売サイトにそれほど不満を持つことはなかったでしょう。このようなデメリットとなる記載であっても、適切に情報掲載することで、返品率を減らすことにつながりますし、またECサイト全体でこのような使用感まで記載されていると、サイト全体の信頼も高まります。
また、商品の使用シーンや実際の質感が分かるような高解像度の画像を複数提供することも、購入前の理解を深め、返品を防ぎます。特に、アパレルや家具など、見た目が購入決定に大きく関わる商品の場合には効果的です。
ECプラットフォームごとに商品ページに掲載できる写真数に違いがありますが、できれば1商品に10枚近い写真を掲載することで、例えば「こういう素材が使われているのか!」とユーザーも納得した上で商品を購入できるので、返品率にも大きな影響が出てくるはずです。
このように、商品ページのクオリティを高めることで、返品率を改善することは可能なのです。
施策② サイズについてのアドバイスを充実させる
アパレル商品の返品理由として最も多いのが「サイズ違い」です。そのため、サイズガイドを提供するだけでなく、実際に着用したユーザーのレビューやフィット感の詳細なアドバイスを掲載することが有効です。
これは、担当者が実際に商品を使ってみて、その感想をユーザー目線で書くことがベストです。例えば、サイズに関しても「170センチ55キロのスタッフが着用してみましたが、Mサイズでもジャストフィットでした」という具体的なEC担当者の体験談があるだけでも、同じような体系の人が見たときにサイズの誤解は解けるのではないでしょうか。
特に、モデルの身長や体重を明記し、着用サイズを示すことで消費者の参考になり、実際の商品と着用イメージの乖離が小さくなり、返品率の低減につながるはずです。
施策③ バーチャル試着やAR技術の導入
技術が進化する中で、バーチャル試着やAR(拡張現実)技術を活用して、ユーザーが購入前に商品を視覚的に体験できる仕組みを提供することが効果的です。株式会社インターファクトリーのECプラットフォーム「ebisumaret」のパートナー会社「メイキップ」でも、以下のようなバーチャル試着サービス「unisize」を提供しております。
◆unisize(ユニサイズ)
unisizeは、最短1分の「カンタンな操作」で欲しい洋服や雑貨の最適サイズを推奨するサイズレコメンドエンジンです。不安で購入できない、届いたアイテムのサイズが合わなかったなどの課題を解消し、購入率・返品率改善に導きます。
このようなバーチャル試着サービスは、アパレルEC各社で導入が進んでおり、返品率を下げるだけでなく、サイトを利用するユーザー満足度も向上させる施策と言えます。
施策④ 商品レビュー欄を設置する
購入者のレビューやFAQのコンテンツを充実させることで、他の消費者の経験に基づいた情報を提供し、購入者の不安を解消します。特に、他のユーザーのフィードバックによって、商品の特徴や使用感を具体的にイメージすることができ、返品のリスクが減少します。
もちろんレビューには「悪い口コミ」も書かれてしまいますが、実は、このような悪い口コミもCVR改善につながることがあるのです。筆者はECサイトの利用者に対して、ユーザー行動調査を実施したことがあるのですが、ユーザーの中にはあえて、「良い口コミ」を無視して、「悪い口コミ」だけを探すユーザーが一定数います。
それらのユーザーは「最悪のリスク」を探し出して、そのリスクが許容できるものなのかを判断するために悪い口コミを探しているのです。そして悪い口コミを見つけたら、「この程度なら問題ない」と購入に至ります。逆に良い口コミだけでは購入をリスクを図ることができないため購入をためらう場合もあったのです。
このように、ユーザーレビューが集まればユーザーの使用感を把握できるため、返品率を下げるのに一定の効果があるのは間違いありません。しかし、ユーザーレビューを集めるのはカンタンではないため、商品を購入したユーザーに対して、一定の期間でステップメールを仕掛けるなどの工夫が必要となります。
施策⑤ 発送前の品質チェックを徹底する
当たり前のことですが、商品が破損していたり、不具合があると返品率が高まります。
そのため、発送前に厳密な品質チェックを行い、欠陥品や不具合が発生しない体制を作ることが重要です。これにより、商品の到着後にユーザーが不満を持つ可能性を大幅に減らすことができます。
1日に100件も注文のあるEC事業者では全ての商品をチェックするのは難しいことかもしれませんが、売上の少ない小規模事業者であれば、発送前に商品をチェックする余裕があるはずです。例えば、衣服であればボタンの縫い付けや生地の縫製などに気を配り、発送前のチェックを徹底してみてください。
そうすることで、良い口コミも増え、ECサイトを成長させることにつながるからです。
施策⑥ 商品サンプルの提供
特に美容商品や化粧品のような、個々の肌質・体質や好みによって効果が異なる商品においては、実際に使用してみないとその商品の真価が分かりにくい場合があるため、購入前のサンプル提供は、ユーザーに安心感を与えると同時に、返品率を減らすのに大きく貢献します。
資生堂では、手数料330円(税込)でスキンケア商品のサンプルを試すことができるサービスを期間限定で実施しており、積極的にユーザーへサンプル商品を提供しております。
◆資生堂の商品サンプル提供サービス
出典(画像):スキンケアサンプルお試しサービス│資生堂オンラインストア
ユーザーがオンラインで新しいスキンケア商品を購入しようとする場合、成分や効果を詳しく確認していても、実際に自分の肌に合うかどうかは使ってみないと分かりません。サンプルがあれば、その不安を解消し、購入へのハードルを下げることにもつながります。
ただし、サンプル商品を提供することで、サンプルのみを目的にするユーザーが集まってしまう可能性もあります。このため、サンプルの提供には一定の条件を設けることが必要となります。例えば、サンプル提供を限定された期間に設定したり、購入金額に応じてサンプルを提供するなど、サンプルの利用が本来の購買意欲を高める施策として機能するように管理することが必要です。
施策⑦ カスタマーサポートに力を入れる
ユーザーが購入前に疑問や不安を持った場合、リアルタイムでのチャットサポートや電話サポートを提供することで、購入前にユーザーの質問に答え、購入後の満足度を高めることができます。
専門のカスタマーサポートの構築が無理な場合でも、LINEで質問を受け付けるということもできます。筆者の知り合いのEC事業者は、一人でEC運営をしているのですが、LINEでユーザーからの質問を受け付けることで、ユーザーとの距離が縮まり、新規購入を増やすだけでなくリピーター育成にも役立っているのです。
全てのEC事業者が、専門のカスタマーサポートを持つのは難しいのですが、チャットやメールを利用することで、返品率を下げることに寄与するはずです。
まとめ
返品率を下げることもECサイト運営では大切ですが、同時に購入の妨げとならないように、返品率を下げつつ、購入の敷居も下げるような工夫が最も良い施策と言えます。以下のような施策であれば、どんなEC事業者もすぐにできるのではないでしょうか。
◆返品率を下げ、購入のハードルも下げる施策
✓レビュー欄の設置
✓カスタマーサポートに力を入れる
そしてもし、ECサイトの売上が思うにように増えないのなら、コンサルティングを検討してみてはいかがでしょうか。株式会社インターファクトリーのEC支援サービス「ebisu growth」では、経験豊富なコンサルタントが貴社のECマーケティング成功のサポートを行っています。
具体的には、以下のような強力なコンサルティングサービスを提供しています。
◆EC支援サービス「ebisu growth」の提供サービス
✓戦略立案
✓ECサイト構築
✓集客
✓CRM
✓アクセス解析・運用改善提案
✓運用代行・制作代行
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