「かご落ち」は、ECサイト(オンラインショップ)において、ユーザーが商品をショッピングカートに入れたものの、購入を完了せずにサイトから離脱することを指します。この現象は、ユーザーが最終的な支払い手続きまで進まずに買い物をやめてしまうため、「カートに入れた商品が落ちる」という意味合いで「かご落ち」と呼ばれます。
かご落ちが発生する主な要因には、以下のようなものがあります。
・送料が発生することが分かったため
・他の商品やページを閲覧している間に忘れたため
・購入手続きが複雑だったため
・インターネット接続が不安定だったため
・購入したつもりができていなかったため
かご落ちは販売機会の損失につながるため、EC事業者にとっての課題です。これを防ぐためには、配送料の事前表示、決済フローの簡略化、購入意欲を高めるリマインダー(かご落ちメール)などの工夫が有効です。
この記事では、forUSRES株式会社でマーケティングを担当している筆者が、ECサイトの「かご落ち」対策について詳しく解説します。
「かご落ち」が発生する理由
かご落ちについて、株式会社ザオリクが2023年9月に調査を実施し、以下のようなアンケートデータをリリースしております。
◆かご落ちに至った理由は?
出典(画像):株式会社ザオリク「ECサイトのカゴ落ちに関する実態調査」(2023年11月24日発表)
この調査結果から、カートに商品を入れたものの最終的に購入しなかった主な理由について、いくつかの重要なインサイトがあります。
まず、「購入を見送ったため」(65.0%)が圧倒的に多いことから、ユーザーが購入を最後の段階で控える心理的な理由が強く影響していると考えられます。これには価格や商品の必要性についての再検討、もしくは衝動買いへの抵抗(我慢した方が良いという心理)が含まれる可能性があります。
次に「送料が発生することが分かったため」(43.3%)という結果も、ユーザーが送料を重視していることを示しています。送料の有無やその提示タイミングが大きく影響しているため、ECサイト運営者が送料の表示を分かりやすくしたり、一定額以上の購入で送料無料とするなどの施策が必要となります。
また、「他の商品やページを閲覧している間に忘れたため」(26.9%)と「購入手続きが複雑だったため」(20.0%)も高い割合を示しており、ユーザーが簡単に購入フローを進められないことが問題となっているようです。これらはUI/UXの改善によって解決できる可能性がありますので、カンタンに決済できる仕組みを用意して、ユーザーが購入を思いとどまらずに進められるように工夫することが重要です。
全体として、かご落ちを防ぐためには、ユーザーが購入を完了しやすいように、費用の透明性向上や簡便な購入プロセスの構築が重要であると言えます。
それでは次に、具体的にどのようにかご落ちを防ぐのか、その7つの対策を解説します。
7つの「かご落ち」対策
では、優先順位が高い順にかご落ち対策を解説します。
対策① かご落ちメールの送信
まず、かご落ち対策として最も有効な施策は、「かご落ちメール」を実施することです。かご落ちメールとは、かご落ちした人に対して、リマインドメールを送ることで、具体的には以下のとおりです。
◆かご落ちメールの仕組み
② ユーザーがメールに貼られているリンクをクリックする
③ カートインした状態でECサイトに戻る
④ 注文ボタンを押して、注文完了
先ほど紹介した「かご落ちした理由」の中には、以下のような理由が含まれます。
・インターネット接続が不安定だったため(19.3%)
また、調査にはありませんでしたが、買い物中に「電話がきた」「アプリの通知がきた」といった理由で買い物を中断することがあるのです。このようなユーザーにかご落ちメールを送ることで、買い物を思い出すキッカケを与えることができます。筆者の経験ですと、かご落ちユーザーのおよそ10%程度を拾うことができ、ECサイトの売上において大きな影響があります。
かご落ちメールの自動配信の設定は、かご落ちから3時間後、3日後、1週間後と3回送付してみましょう。また、あわせて「クーポン」や「送料無料」などを訴求することも忘れないようにしましょう。
対策② ECサイトでの「分割払い」を実施
ECサイトで1万円以上の高額商品を販売する場合は、分割払いをECサイトに導入することで、以下のようなユーザーに対してのかご落ちを防ぐことにつながります。
分割払いの導入はカンタンです。「ペイディ」のような後払い決済を導入すると、以下のように商品ページに分割払いのガジェットが表示されるようになります。
◆分割払いのガジェット
上記の例では、9,900円の商品が分割払いで月々3,300円で購入できることをユーザーに訴求できるのです。特に10~20代の若者がターゲットの場合は、クレジットカードの保有率も少ないことから、売上に貢献する施策ともなるでしょう。
対策③ ID決済導入で購入のステップを減らす
かご落ちの理由で4番目に多かったものとして、以下の理由がありました。
購入手続きをカンタンにすることは、ASP(アプリケーション・サービス・プロバイダー)が提供するECプラットフォームでは難しく感じるかもしれませんが、実は多くのASPで、以下のようなID決済を導入することで、購入手続きをシンプルにすることができます。
◆ID決済の例
・楽天ペイ
・PayPay
・メルペイ
・d払い
・auPAY
このようなID決済を導入することにより、ログインするだけでECサイトの決済までをカンタンにすることができ、ユーザーもID決済による支払いに慣れているため、ECサイトでの購入の難易度も下がります。
特に、Amazon Payと楽天ペイは利用者が多いため、自社ECサイトのターゲット層にあわせて導入することで、多くの利用者が購入をスムーズにすることができるでしょう。
対策④ 商品ページのレビューを増やす
多くの人が「Amazon」で買い物をしたり、「じゃらん」でホテルを予約したり、「ホットペッパービューティー」で美容室を予約するのは、単に大手で便利なサービスだからという理由だけではなく、多くの口コミが掲載されていることも利用の大きなポイントになっています。
なぜなら、ユーザーは事業者の宣伝には飽きており、信用していないユーザーもいます。そこで「実際は、この商品はどうなのか?」といった口コミを自社サイトで増やすことができれば、「この商品で間違いない!」と確信を抱くユーザーが増えて、以下のようなユーザーに対策することができます。
口コミを増やす際は、「悪い口コミは嫌だ!」という方もいるかもしれませんが、実は「悪い口コミ」も注文率を高めるのに役立ちます。なぜなら、ユーザーの中にはあえて悪い口コミを探して「この程度のリスクなら許容できる」と思い購入に踏み切る人もいるからです。また、悪い口コミは、「このECサイトは悪い口コミも載せていて誠実だから信用できそう」という効果もあるのです。
ECサイトのレビューを増やす施策には以下のようなものがあります。
◆レビューを増やす施策
・商品に口コミを依頼するQRコードを同梱する
・レビューが書かれたら、すぐに返信する
このような施策を徹底すれば、必ずレビューは増えます。ただし、ユーザーのレビューを何らかの形で依頼する際は、必ず「PR」であることや以下のような文言をつけることを忘れないようにしましょう。
◆レビューを依頼する際にコメント欄の上部に設置する文言
このレビューは、弊社がお客様にレビュー依頼を実施したものが含まれております。
もし、レビュー依頼をしたにも関わらず、何もコメント欄に掲載しないと、景品表示法に違反する可能性があるので、商品ページのコメント欄を開放する時は、特に気を付けてください。
対策⑤ 商品についてのオリジナル写真や情報を増やす
もし、ECサイト事業者がメーカーではなく、商品を仕入れているとしたらライバル店も複数いますし、何よりAmazonや楽天市場もライバルとなります。ユーザーの多くは「慣れたECサイト」で買い物しますが、以下の結果のように「購入するかどうかを迷っている」というユーザーもいます。
そのようなユーザーは、商品の機能や材質などを徹底的にリサーチしており、自分が購入を決めるに足る情報を得られるまでリサーチを続けます。そんな中、あなたのECサイトにメーカーや卸から提供された商品写真や情報だけではなく、独自の情報があるとしたら、ユーザーはあなたのサイトに強く興味を持つはずです。
つまり、商品についての独自の情報をECサイトに載せることで、ユーザーを引きつけることができるのです。多くのECサイトの商品情報は、メーカーから提供されている最低限の情報しか掲載されていないので、全ての商品でこの施策を実施することで、サイトのファンを作ることにもつながります。
この施策を実施するという場合は、まずはECサイトのスタッフが商品を利用してみて、そのレビューを情報として提供したり、実際に使っている様子の写真を掲載したりしてみましょう。労力はかかりますが、誰でも実施することができます。
対策⑥ クーポン訴求でお得感を訴求する
以下の理由で「かご落ち」したユーザーに対して、クーポン訴求して、購入を再検討してもらいます。
以下は、「ZOZOTOWN」のスマホサイトですが、サイトに訪れた新規ユーザーに対して2,000円OFFのクーポン券を発行しております。
◆ZOZOTOWNのクーポン
バナーを出すタイミングは、以下のようなページで繰り返し出すことで、ユーザーにクーポンがあることを念頭に置いてもらいましょう。
◆クーポンを出すタイミング
・カテゴリページ
・商品ページ
・注文ページ
特定のページだけでは、ユーザーがクーポンに気が付かなかったり、クーポンがあることを忘れてしまうので、ユーザーの閲覧が多い主要なページで繰り返し訴求することで、かご落ちを減らすことにつながるのです。
対策⑦ 送料無料をアピールする
かご落ちの大きな原因の一つが「送料」です。かご落ちの理由としても43.3%と大きな比重を占めているので、対策が必要です。
購入手続きを進めていく中で送料が発生すると分かると、ユーザーが購入を諦めるケースも多く見られます。これを防ぐために、「〇〇円以上で送料無料」といったメッセージを目立たせ、ユーザーにあらかじめ送料無料の条件を提示しておくことが効果的となります。
「かご落ち」対策はできることからやろう
かご落ち対策は、かご落ちメールを導入するのが最も手っ取り早い方法ですが、費用も発生します。本日紹介したかご落ち対策の中には、ECプラットフォームの機能で対応できるものもあるので、実践してみましょう。
また、かご落ち対策を伴走型のコンサルで実施したいなら、株式会社インターファクトリーのEC支援サービス「ebisu growth」をご活用ください。経験豊富なコンサルタントが、効果的な「かご落ち」対策の実践をサポートします。
ebisu growthでは、以下のような強力サポートを提供しています。
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