「DeNAってゲーム事業以外はどんなことやっているのかな?」
「企業としてのDeNAにはどんな強みがあるのだろうか?」
ゲーム会社や、プロ野球球団の運営で有名なDeNAの創業は1999年で、インターネット業界の中では古く、創業者の南場智子氏がオークションサイトの設立した会社が由来です。DeNAの2023年3月期決算資料によると売上高は1,349億円(スポーツ事業含む)で、現時点での事業は、下記の3つが現在の主要事業となります。
② ライブストリーミング事業
③ スポーツ事業(球団運営等)
この中でも、売上の50%近くはゲーム事業に依存しており、事業の多角化を目指すことで、ゲーム事業以外も、ゲーム事業と同程度以上の収益を確保することが、DeNAの中・長期的な目標になっております。
本日はインターファクトリーで、シニアアドバイザーを担当する筆者が、これからDeNAに就職してみたい方のために、決算資料からDeNA社を分析してみたので、この記事を読めば、競合他社と比較しながらDeNAの強みや弱みが理解できるでしょう。
DeNAの事業別売上推移(2018~2022年)
では、まずDeNAの売上推移をご覧ください。下記のグラフは筆者が過去から現在のDeNA社の決算説明資料から独自に集計して作成したものです。
DeNA社はガラケー時代に「モバゲータウン」というソーシャルネットワーキングサービスを展開し、そのサービス上で、日記やメッセージでユーザー同士が会話できたり、ゲームが出来たりと10代を中心に大人気のサービスでした。
しかし、2012年頃からスマートフォンが誕生し、世の中がガラケーからスマホに変わっていく中、ガラケー時代のモバゲーの人気を、そのままスマホのモバゲーに引き継ぐことができず、売上を落としているのです。
後ほど解説しますがゲーム事業でヒット作を出すことができず、ゲーム市場の売上高が会社全体の売上のほとんどを構成しているため、DeNAは、横浜ベイスターズを買収しスポーツ事業を始めたり、新規事業を起こすなど事業の多角化を進めているのです。
そんな現状の中、DeNAの現状を解説いたします。
2012年以降のゲーム事業の不振
ゲーム事業の大きなポイントは、まずはヒット作を出すことです。2009年にDeNAは「怪盗ロワイヤル」をリリースし、月商30億円規模の大ヒット作となりました。
参考記事(2010年)『怪盗ロワイヤル』で好調のDeNA 営業利益約240億円を予測(NEWSポストセブン)
怪盗ロワイヤルは、ゲーム開発経験のない人材ばかりの少人数のチームで開発されたゲームですが、ゲーム開発経験がないぶん、斬新なアイデアがヒットを生み出したことにつながりました。しかし、それ以降、DeNAからは、それに並ぶヒット作は出ておらず、苦戦が続いております。
また、DeNAはかつてMobage(モバゲー)というブラウザーでのゲーム市場を席巻しておりましたが、世の中がガラケーからスマートフォンに移行したため、Mobageの会員も減少し、それに伴いDeNAの売上も下がっていきました。
「マリオ」や「どうぶつの森」など任天堂IPを利用したゲームの展開
2015年3月にDeNAは任天堂は、業務・資本提携の発表を行いました。DeNAがもつモバイル市場でのゲームノウハウと、任天堂のIP(intellectual property:知的財産)を使ったゲーム開発を行う提携を行いました。
その結果、「スーパーマリオラン」や「ファイアーエムブレム ヒーローズ」、「どうぶつの森ポケットキャンプ」などがリリースされ、DeNAのゲーム事業の売上の下げ止まりに貢献しており、中でもスーパーマリオランは累計ダウンロード数が4億を突破(2020年)しております。
一見好調そうに見えますが、任天堂の目指すスマホゲーム売上の1,000億円と比べると、ギャップは大きく、任天堂はその後、DeNAの競合であるサイバーエージェントのグループ会社のCyGames(サイゲームズ)とも提携を行いました。海外でのゲーム市場に定評があるCyGamesとの提携には、世界市場で任天堂のキャラクターをうまく利用する意図があります。これはDeNAにとっては、あまり面白くない提携でしょう。
DeNAとしては、任天堂のIPを使えば、世界的大ヒットのゲームを開発できる可能性が高く、早くヒット作品を生むことです。ヒット作を生み出すことが、任天堂との関係も強くすることができるからです。そしてオリジナルのゲームにおいてもヒットを出すことが求められています。
現在のスマホアプリのランキング上位は、海外の会社が多くを占めており、パズドラやモンストなどの「ガチャ」には日本人ユーザーが飽きてきている兆候かもしれません。ですからDeNAは、従来のヒット作に左右されずに、新しいゲームを開発する必要があると筆者は考えます。
DeNAのライブストリーミング事業
もともとはDeNAの事業だったライブ配信サービス「SHOWROOM」を筆頭に、「17LIVE(イチナナ)」や「ふわっち」といったライブ配信アプリが台頭し、各社競合アプリがひしめいている中で、DeNAのライブストリーミング事業は、同社運営の「Pococha(ポコチャ)」を中心に好調に推移しています。
Pocochaは、YouTubeのライブ配信のような専用機材や動画編集を必要とせず、スマホ1台でライブ配信が可能で、また他の配信アプリとの大きな違いは、ライバー(配信者)への報酬が、リスナーからの投げ銭やアイテムプレゼントによるものではなく、いいね数や配信時間に応じて支払われる仕組みとなっている点です。
これがライブ配信の経験があまりないライバーでも稼ぎやすく、積極的に配信したくなる仕組みとなっており、専用2017年1月のサービス開始以来ダウンロード数を伸ばし続け、2023年3月末には国内486万ダウンロードを達成しております。
◆国内のPocochaの業績
同事業の成長ペースが加速しており、コロナ禍で苦戦を強いられ、大きく業績を落としたスポーツ事業を超えて、DeNAのゲーム事業に次ぐ大きな柱となり、これまで同社の新規事業枠だったPocochaは、現在の注力投資対象となっています。
スポーツ事業(球団運営)
DeNAの事業の中での第三の柱は、スポーツ事業、つまり横浜DeNAベイスターズに関する事業です。下記をご覧ください。
◆TBS時代 VS DeNA時代の「利益」と「ホーム観客動員数」
TBSからDeNAに球団経営が移って以降、右肩上がりで観客動員数が伸び、2011年の110万人から2017年には197万人にまで増えております。その要因の一つに、横浜ベイスターズ球場は別の会社が運営しておりました。
そのため球団と球場と一体となった経営ができず、横浜スタジアムの入場料収入や周辺地域の飲食収入が入りませんでした。しかし、2015年の10月に横浜スタジアムを約100億円かけてDeNAが保有することになり、これにより一体となった経営が可能になりました。※下記記事を参考にしたので、あわせてご覧ください。
横浜DeNAベイスターズの買収は、その事業で売上を出すことが目的ではなく、DeNA本体の広告のための目的があります。球団運営は、運営費の割にはテレビや新聞に毎日取り上げられるため、広告費用対効果が極めて高いのです。
またDeNAのメイン事業がゲーム事業ということもあり、プロ野球を楽しむ層とスマホゲームを楽しむ層の親和性が高く、大きなシナジー効果を産み、DeNA経営陣の優れた買収戦略であったと言えます。
こうした中で、予想もしない自体が起きたのが2020年でした。
新型コロナウイルスの感染拡大によりスポーツ業界全体が大打撃を受け、DeNAのスポーツ事業も2020年の売上収益は前年比の42.4%減、同事業のセグメント損失は15億円の赤字となりました。
しかし、そこからの巻き返しもあり、2022年3月期は、前期比19億円の増収、10億円の損益改善、そして2022年3月25日のシーズン開幕試合には、横浜スタジアム史上最多の32,436人の観客を動員しました。いまだコロナ禍の影響を引きずってはいるものの、今後の回復が大きく期待されます。
◆2022年までの観客動員数推移
DeNAの企業分析のまとめ
本日はDeNAが公開している決算資料をもとに、企業分析をしてみました。その結果、
(1)2023年現在の売上はゲーム事業が全体売上の半分を占めるが他事業も伸長
(2)ライブストリーミング事業がゲーム事業に次ぐ事業の柱として期待
(3)スポーツ事業も業績回復傾向、今後のさらなる伸長の鍵に
というポイントに終始すると考えます。そのため、これからDeNA社に就職や転職を考えている方には、最高に面白い環境であるといえます。なぜならゲーム事業という巨大な収益を生む事業がありながら、企業としてのリスクを抑えたまま、新規事業にチャレンジできるからです。
また、筆者は複数回、DeNA社で打ち合わせを行ったことがありますが、若い人が多く、実力があれば年齢に関係なく、昇進できる風土であると感じました。オフィスも渋谷のヒカリエにあり、誰もが羨む、とても良い仕事環境です。
転職や就職を考えているなら、DeNAはおススメの企業です。