大半の人が「インターネット販売(EC)」と「通販」について、そもそも言葉の意味を知らずに漠然と使っていたり、それぞれ違う意味を指していると思っていたりと、そもそも通販のチャネルについて詳しく知らないという方も多いのではないでしょうか。
しかし、実際「EC」と「通販」は両者とも実店舗以外の販売方法のことを指しており、意味に違いはありません。なぜならECは、カタログやテレビなどと同様に通販チャネルの一つだからです。つまり、通販という大きな枠の中にECがあるということです。
では、各通販チャネルの中でどのチャネルを販売の軸に置くか?となった場合、何よりもECを選ぶべきです。なぜなら今や通販シェアの9割がインターネットを占めており、今後も成長著しい右肩上がりの市場だからです。
通信販売で売上を伸ばすには、時代にあったチャネルを積極的に取り入れていくことが大事なのです。
本記事では、通販の中でも主流な7つのチャネルのメリット・デメリットについてご紹介します。ECに限らず、様々なチャネルを把握することで、EC担当者や新人マーケターにとってより深く通販を理解することができると思います。ぜひ参考にしてみてください。
20年間で大きく変化した7つの通販チャネルの割合の推移(1995年 vs 2016年)
下記のグラフの通り、1995年と2016年の通販のチャネルを比較するとインターネット(EC)が大きく成長したことがわかります。
◆7つの通販チャネルの変化 ※複数回答可
データ引用:公益社団法人 日本通信販売協会(JADMA)「ジャドマ県民通販大調査」レポート第1弾、総務省郵政事業庁第1章「デジタルネットワーク社会の幕開け~変わりゆくライフスタイル~」
少し古いデータではありますが、95年からの20年で、ほとんどインターネット(EC)が通販シェアを占めることとなった変化に注目してください。
1995年の主な通販チャネルはカタログであり、インターネット(EC)の利用率は0.1%と、ほぼ利用されていないことがわかります。
次に2016年のデータを見てみると、ほとんどのユーザーが通販を利用する際にインターネット(EC)を選び買い物をしていることがわかります。
この理由としては、2000年になりパソコンが家庭や企業に普及したことと、2010年代に入り急速にスマートフォンが普及したことで、ユーザーにとってインターネットが生活に必要不可欠な存在となってきたことが原因といえるでしょう。
そして2023年現在、EC以外のチャネルは販売の仕方にほとんど変化がないことに対し、ECはネットオークション、フリマサイト、ライブコマース、オムニチャネル…など、どんどん販売方法が多様化し、進化し続けています。
続いて、上記の図でも触れた7つの通販チャネルについてさらに詳しくご紹介していきます。
通販の各チャネルのメリットとデメリット
東京商工リサーチの「ネット通販で成長する通信販売市場」を参照し、それぞれのチャネルを利用するメリットとデメリットを一緒にご紹介します。
◆通信販売の7つのチャネル
チャネル① インターネット(EC)
- 24時間365日運営ができる
- 新着情報やセール情報など、リアルタイムで情報発信ができる
- 短期間で広告効果を計ることができる
冒頭でもご紹介しましたが、現在、通販利用者の約9割以上がインターネット(EC)を利用しています。インターネット(EC)の一番のメリットは、24時間365日運営が可能なことです。営業時間に、間に合わない会社員やそもそも店舗数の少ないお店など、店舗へ足を運ぶことが困難な場合でもインターネットならいつでもどこでも買い物をすることが可能です。
またインターネット(EC)は情報発信の速さも特徴で、新着情報やセール情報などいち早く情報を発信することが可能です。例えば、シーズン毎に入れ替わりの著しいアパレルの商品の場合もインターネットならスピード感を落とさずに宣伝し、販売をすることが可能です。
さらにインターネットの場合は、ECサイトに訪れたユーザーの人数やアクセス数まで細かく数値分析でき、短期間で広告効果を計れることも他媒体と違うメリットです。顧客がどのような導線で商品を購入し、どの商品に人気があるのかなど、改善のための施策が打てることも特徴です。
- カード決済の場合手軽に決済ができるがゆえに、不正利用のリスクが高い
インターネット(EC)の決済方法でよく利用されるクレジットカード決済は、利便性が高いため利用者も多くいます。しかし、クレジットカード本体がなくても有効期限とカード番号さえわかれば買い物の決済ができるため、不正利用のリスクが高くなります。
また、カード情報以外にも、住所や電話番号などといった個人情報が他チャネルと比べて漏出しやすく、こういったセキュリティ面をどのように強化し対策をしていくのか検討が必要となるでしょう。
通販チャネル② カタログ
- ユーザーは目的以外の商品も目に入るため、客単価の向上につながる
カタログの場合、ユーザーは目的以外の商品や情報も入ってくるため、客単価の向上につながりやすくなります。例えば、目的が衣服であったとしても、同じカタログ内に日用品が掲載されているとついでに購入しようというパターンも考えられるでしょう。
また、インターネット(EC)の拡大によりカタログは縮小傾向にありますが、長年通販業界を支えてきたカタログのブランド力は大きく、まだまだ千趣会やニッセンなどカタログのニーズがあると考えられます。
さらに、カタログを見てからECサイトで注文し購入するユーザーも多いため、ECサイトと並行して運営することで相乗効果も狙えるでしょう。
- 制作費や印刷費などコストが大きい
- 商品情報がユーザーに届くまでに時間がかかる
カタログは、制作費や印刷費などかなりコストがかかります。もともとカタログを取り入れていた企業ならまだしも、初めてカタログを導入する企業の場合は予算の見直しの必要もあるでしょう。
また、費用以外にもカタログを制作するためには企画、制作、入稿、印刷などフローが多いため、その分の制作時間も増え、担当者の負担も大きくなります。さらに、企画からユーザーの手元に届くまで時間がかかるため、ユーザーに届く情報もトレンド性の低いものになってしまいます。
通販チャネル③ テレビ
- 圧倒的な視聴者数で影響力が強い
- 企業のブランディング力が高まる
テレビは、マスメディアの中でも大きな影響力があるため有力なチャネルです。例えば地方限定の番組では地域に特化した情報を流すことができたり、放送の時間帯によってはターゲットユーザーを、ある程度セグメントして宣伝をすることも可能です。
また一度に大規模な人数にアプローチができるため拡散力が大きく、継続的な宣伝を行えば企業のブランディングにも効果的です。例えばテレビCMの場合、一日に何度も同じCMを流すことで何度もユーザーにアプローチをすることができ、結果、企業のブランディングにもつながります。
- 番組制作費や物流拠点の整備など多額のコストが必要
- 若年層に広がる「テレビ離れ」
テレビの一番のデメリットはコストが大きいことです。影響力が極めて強いメディアだからこそ、高い広告効果を見込めますが、公共性の強いメディアということもあり、広告審査もあり、広告費は数百万円~数千万円という単位になり、大企業でなければ出稿するのは容易ではありません。
また若年層に広がる「テレビ離れ」は否めません。例えば、テレビの代わりに、動画や音楽をYouTubeで楽しむという若者も増えてきています。YouTubeは動画共有サイトとして、世界最大のユーザー数を誇っており拡散力もあります。
アニメやドラマ、映画なども、NetflixやAmazon Prime Video、Disney+やHuluといった動画配信サービスの台頭によりネット配信が主流になってきており、今後さらにテレビの視聴者数にも影響してくるのではないかと予測できます。
通販チャネル④ ダイレクトメール
- 特定のユーザーにターゲットを絞り、商品を訴求することができる
ダイレクトメールのメリットは、セグメントをかけたユーザーに商品の訴求ができることです。通販のほとんどのチャネルが、ユーザーへのアプローチが自主的にできないのに対して、ダイレクトメールは直接見込み顧客に対して資料やチラシを送付することが可能です。
また、長期的にユーザーに商品を訴求することも可能で、例えば小学校入学時にダイレクトメールを送った場合、中学、高校と入学シーズンの度に特定のユーザーに向けてタイミングをみて宣伝ができることもメリットです。
- 開封されなければ、ユーザーが見ることすらない
- 時間と労力がかなりかかる
ダイレクトメールは特定のユーザーに向けて情報を発信することがメリットでもありますが、ユーザーが見ていなければ意味がありません。封筒に入れて送る場合はデザインによっても開封率に影響するため、企業側はまず開封してもらえるような工夫が必要です。
ちなみに、ダイレクトメールを送る場合は個人情報が必要となるため、最近では特に個人が承諾していない場合はダイレクトメールを送ってはいけないなど、昔よりも規則が厳しくなっているので注意が必要です。
また、コストの負担もかなり大きいことがデメリットです。資料の折り込みや発送準備などダイレクトメールを送るためには時間と労力がかなりかかります。それを踏まえた上で企業側はダイレクトメールが必要かを検討する必要があります。
通販チャネル⑤ 新聞広告
- 新聞の信頼度の高さから、購読者の信頼を得やすい
- 購読者に合わせたアプローチができる
新聞広告は、インターネットやテレビに比べても信頼度の高いチャネルであるため、購読者からの信頼を得やすいことがメリットです。そもそも新聞自体が信頼性の高い媒体だからこそ、その編集能力を活かした記事体広告はユーザーにとっても納得感を得ることができます。
さらに、新聞購読者は40代~60代が多く、この購買層をターゲットとする商品を宣伝する場合は高い広告効果が見込めるでしょう。また運用側は、インターネットに比べると新聞は昔から馴染みのある媒体なので、企業にとっても運用しやすいのがメリットです。
- 情報発信の即時性が低い
- 広告効果がわかりにくい(効果検証がしにくい)
「紙媒体」から「電子媒体」へと移り変わる理由の一つとして、新聞は情報発信の即時性が低いことが一番の理由と言えるでしょう。Webメディアのように原稿を作成してからすぐに公開をすることができないので情報発信をするまでも時間がかかってしまいます。
また新聞広告のデメリットは、広告効果がわかりにくいことです。実際に新聞広告で商品が購入されたとしても、新聞から流入したユーザーなのか判断することが難しいというケースも少なくありません。新聞広告限定の割引クーポンを出すなど、新聞広告からの流入とわかる施策を取ることが重要です。また広告を出す前と出した後で広告以上のリターンがあったかどうかの効果測定をすることが重要となります。
通販チャネル⑥ 雑誌広告
- もともと商品に興味のあるユーザーに商品を訴求できる
- 写真やイラストを入れることができ、商品のイメージがしやすい
雑誌広告はあくまでも雑誌を購入した人をターゲット対象とするため、雑誌を購入した時点で、ある程度ユーザーをセグメントできるため、狙った購買層に宣伝することができます。 また、紙媒体でも新聞と違う点は、写真やイラストなどを使った表現で読者に商品をアピールできることです。写真やイラストを入れたり、または文章だけで宣伝したり、商品によっても宣伝の方法を変えられるのもメリットです。
- 制作費や印刷費などコストも時間もかかる
- デジタルは直しがきくが、修正がききにくい
紙媒体の大きなデメリットは、多額のコストがかかることです。インターネットに比べ制作費や印刷費、また人件費コストの問題は避けられません。企業で初めて雑誌広告を打ち出す場合は予算の見直しも必要となるでしょう。
また、紙媒体は一度発行すると簡単に修正をすることができない難点もあります。それに比べて、Webメディアは、修正が必要なときにその都度更新日を書き換え何度も書き直すことが可能です。しかし、紙媒体はすぐに書き換えることができないからこそ、信頼ができるというメリットにもつながります。
通販チャネル⑦ ラジオ広告
- 地域に特化した情報を発信できる
今時ラジオは聴かないと思う方もいるかと思いますが、実は地域や生活に密着した媒体と言われ、特に地方では高い広告効果を持っています。なぜなら、地方では移動に車を利用する人が多く運転中にラジオを聴く人が多くいるからです。
また、時間帯によってはターゲットを絞れるため狙ったユーザーに広告が出せます。例えば、朝は通勤をする会社員向けに、昼は家事をしながら聴く主婦向けに、夜中は、深夜に運転をするトラック運転手向けに、このようにターゲットを絞って宣伝することが可能となります。
- 時間帯が限られていたり、聞き流しをされてしまうことも多い
テレビと同様にラジオはマスメディアの一つであるため、幅広いユーザーにアプローチできることはメリットでもありますが、逆にターゲティングが難しいという問題があります。
またラジオの場合は「運転をしながら」「家事をしながら」など、「ながら」聴きをするユーザーも多く、聞き流されてしまうことも多々あります。企業側は、どのように流されずに聞いてもらえるかも鍵となるでしょう。
インターネット(EC)は通販の中でも最も影響力が強い!
上記では通販の7つのチャネルについてご紹介してきましたが、通販で売上を伸ばしたいと考えているならインターネット(EC)を選ぶべきです。
なぜなら、下記グラフからもわかるようにEC市場は右肩上がりの業界だからです。 これほどインターネットが世の中に普及しているにも関わらず、EC市場規模はたった9.13%程度しかないため、まだまだ伸びしろがあり、ECはこれからの業界であることがわかります。
また、冒頭でもご紹介しましたが、ユーザーが通販で最も利用するチャネルはインターネット(EC)です。ユーザーの利便性を追及すると、実際に手に取って商品をみることができるリアル店舗と、いつでもどこでも買い物ができるECとの連携は必須といえるでしょう。
出典:経済産業省「令和4年度 電子商取引に関する市場調査 報告書」
参照:【2023年版】EC化率をプロが徹底解説|BtoCからBtoB、CtoCまで(ebisumartMEDIA)
さらにECとリアル店舗の連携について詳しく知りたい方は、
▼こちらの記事をご覧ください。
まとめ
今回は「EC」と「通販」の違いについて説明してきましたが、結果どちらも実店舗以外の販売方法を指しており、両者ともに意味に大きな違いはありません。なぜならECは、カタログやテレビなどと同様にあくまでも通販チャネルの一つであるからです。
また、今回は通販チャネルについてより詳しく知るために、主に利用されている7つの通販チャネルのメリット・デメリットについてまとめてみました。その結果、「EC」と「通販」の関係性も踏まえ、通販の歴史や最近の通販の動向について理解を深めることができました。 ぜひ、通販事業を今後始めようと考えている企業様は、インターネット(EC)を選ぶべきです。
なぜなら業界的にも大きく成長しており、ユーザーに最も利用されているのはインターネット(EC)だからです。通販事業を始めるなら、時代に合わせたチャネルを取り入れていくことが売上を伸ばすポイントと言えるでしょう。
「ebisumart」お問合せ:https://www.ebisumart.com/input_ebisumart.html