同梱物とは、ECなどの通信販売において、配達される商品に同封されている印刷物や品物のことです。請求書や納品書などの帳票類をはじめ、挨拶状、チラシ・パンフレット、あるいはサンプルなどの販促物までさまざまな同梱物があります。
D2Cにおいて主に取り入れられているマーケティング施策で、開封率の低いDMやメルマガなどと違って、開封時に必ずユーザーの目に留まるため、オフラインでの効果的な施策の一つです。
同梱物にはそれぞれ役割がありますが、これらを同梱することの本来の目的は、ECサイトのファン(=リピーター)を育成し、LTVを向上させることにあります。
対面での接客ができないECにおいて、ユーザーとの貴重なコミュニケーションツールになるため、購入された商品ごとに適切な訴求を行い、リピートにつなげることが重要になってきます。
本日は、forUSERS株式会社でマーケティングを担当する筆者が、EC運営における同梱物について詳しく解説します。
同梱施策のメリット
まずはじめに、同梱施策には以下のようなメリットがあります。
・ポジティブ感情で受け入れてもらいやすい
・顧客満足度の向上につながる
・低コストで無駄が少ない
最大のメリットは、ほぼ100%開封時にユーザーの目に触れることです。メルマガやDMなどの他施策と比べると圧倒的に開封率が高いため、商品に関連する内容や、ニーズに合った同梱物であれば、非常に高い販促効果が期待できます。
また、商品購入時には、期待やうれしさでポジティブな感情になっているため、販促物も受け入れられやすいのです。
したがって、新規購入者には挨拶状、定期購入者には割引クーポンといったように、同梱物の内容をユーザーのニーズにマッチさせていくことで、顧客満足度の向上につながりやすく、リピート率を伸ばすことになります。
同梱物の種類
では、同梱物にはどのような種類があるのか、下の表をご覧ください。
◆代表的な同梱物の一覧
代表的なものだけでもこれだけの種類があります。それぞれの役割がありますが、新規顧客に送る場合と、既存顧客や定期購入者に送る場合では、以下のように目的が変わってきます。
2回目〜定期の同梱物の目的 ==> LTVの最大化、ファンの醸成
状況に応じて、それぞれの目的に合った同梱物を活用する必要があります。それでは、同梱物の種類を解説します。
ガイド類
- 使い方マニュアル
サプリメントや化粧品などは、1回に服用・使用する分量やタイミングの目安があるので、新規購入の方には使用方法をまとめた説明書を同梱します。
正しく効果を実感してもらうために、写真なども交えながらユーザーの立場に立って詳細に記載する必要があります。使用上の注意も目立つように記載しましょう。
- ブランドブック
ブランドのコンセプトや理念を言語化したパンフレットなどで、企業やその商品のブランディングとして使用するものです。
ブランドブックは、特に初めてその企業の商品を購入したユーザーが企業やブランドへの理解を深め、共感を得るために、非常に重要なツールです。
また、商品の開発秘話などの内容を載せることで、その商品にしかない価値を訴求することができます。
- 商品チラシ、パンフレット
購入後のユーザーには必要ないと考えてしまいがちですが、ECサイトから注文したユーザーは、時間がたてばたつほどサイトの内容を忘れてしまいます。
注文時に感じた魅力や期待感を再び思い出してもらうためにも、商品チラシやパンフレットは必ず同梱すべきです。
- VOCの紹介
VOC(Voice of Customer)は、いわゆる「お客様の声」「体験談」などのレビューコンテンツです。これらをまとめたものを、商品チラシに記載しても良いのですが、あえて単体のものを用意したほうが効果は高いでしょう。
実際の利用者の声は訴求力も高く、積極的に活用するべきですが、大事なのは、ポジティブな意見だけではなく、ネガティブな意見も掲載することです。
ただし、「効果が出なかった」などのネガティブな意見には、その理由や回避するためのコメントを必ず併記するようにしましょう。ネガティブな意見も掲載することで、ユーザーからの信頼を得ることができます。
- チェックカレンダー
サプリメントなどの健康食品は、継続して摂る必要があるものが多いので、飲み忘れ防止やモチベーション維持のために、毎日のチェックシートを同梱します。
商品によって、体重や血圧などのチェック項目を設けるなど、モチベーションを保つための工夫も必要ですが、達成感を得ることで継続購入につながやすくなります。
単体の印刷物ではなく、商品パッケージの裏にカレンダーを印刷すれば、コストを抑えることも可能です。
販促用印刷物
- 挨拶状・サンクスレター
挨拶状は、同梱物の一番上に入れて、最初に目に入るようにしましょう。記載内容に細かいルールはありませんが、感謝の気持ちと、ぜひ商品を使ってほしいという気持ちが伝わる内容がベストです。
冒頭にも述べましたが、同梱物はユーザーとの貴重なコミュニケーションツールなので、特に挨拶状は真心を込めて作成することが大事です。
明朝体やゴシック体よりも、手書き風フォント、あるいは手書きのメッセージをスキャンするなどして温かみのある装丁にすることで、より親しみを感じてもらえるでしょう。
- 取扱商品カタログ
自社で取り扱っている商品を一覧で確認できるカタログやパンフレットを同梱して、クロスセルを狙います。
複数ジャンルの商品を扱っている場合は、購入された商品のジャンルか、関連するジャンルのカタログを同梱するようにします。
- おすすめ商品チラシ
上記のカタログとは別に、おすすめの商品のチラシやパンフレットを同梱する方法です。
例えば購入商品が化粧品の場合、夏であれば「日焼け止め」、また購入商品がダイエットサプリの場合は「美容ドリンク」など、季節やタイミング、あるいはユーザーの潜在ニーズに合わせてチラシの内容を変えることで、クロスセルの可能性が高くなります。
- キャンペーン情報
メリットに述べた通り、開封時のユーザーはポジティブな感情になっており、企業側の提案もある程度受け入れやすい心理になっております。
このタイミングで、キャンペーン情報を案内することで、お得感を感じやすく、クロスセルやリピートにつながる可能性が高くなります。
ユーザーに対して「購入したらさらにうれしいことがあった」と思ってもらうことが大事です。
- SNS誘導のQRコード
Instagram、Twitter、Facebookなど、多くの人が利用しているSNSを運用しているのであれば、購入をきっかけにフォローしてもらいましょう。
ブランドブックなどにQRコードを記載しても良いですが、予算があれば、別途専用のチラシを用意し、フォローするメリットなどを訴求する方が、より効果的です。
SNSはユーザーとの関係性を構築し、ファンを作る上で非常に有効なツールとなりますので、積極的に活用しフォローを促していくべきです。
特典
- ノベルティ
ファッション関連の商品によく利用される同梱物で、非売品のブランドステッカーやポストカードなど、いわゆる「オマケ」として付いてくるものです。
ブランディングが目的なので、直接的な売上にはつながりませんが、特別感や限定感があることで顧客ロイヤリティが高まり、ファン醸成のマーケティングとしても有効なツールです。
ただし、ノベルティの配布においては「景品表示法」が適用されることが一般的ですので注意が必要です。商品の金額に対してノベルティの最高額が決まっていたりと、細かい規制がありますので事前に確認しておきましょう。
詳細については以下の消費者庁のホームページや、ノベルティ制作を請け負う会社のホームページに記載があることが多いので、ご確認ください。
- 試供品
試供品は同梱物の中でも最も重要なツールの一つです。企業の新商品や購入商品の関連商品をアピールするチャンスです。
効果的なのは、購入商品と併用して使用できるものを試供品として提供することです。例えば、購入商品が化粧水であれば乳液を、亜鉛のサプリであれば吸収を助けるビタミン系サプリを試供品にすることで、より顧客満足度は高まり、クロスセルも期待できます。
- 割引クーポン
クーポン施策は、限定感やお得感を与え、消費者にも非常に好まれる施策ですが、一時的に売り上げが落ちるため、企業にとってはノーリスクではありません。
しかし、それ以上に得られる効果も大きいので、リスクを踏まえた上で積極的に行うべきです。例えば「次回から使えるクーポン」や「期限付きクーポン」にすることで、リスクを減らしつつリピート購入を促すことができます。
「お誕生日クーポン」なども好感を持たれやすく、継続購入につながりやすいため、おすすめのクーポン施策です。
- 特典シール
定期購入商品によく見られる施策で、商品に同梱されているシールを集めると特典がもらえるというものです。
特典は、割引や景品のプレゼントであったりとさまざまですが、集めた枚数ごとに段階的に特典をグレードアップすることで、継続購入につながりやすくなります。
シールの代わりに、パッケージに印刷されたマークを切り取るなどの方式にすることで、コストを抑えることも可能です。
ただし、このツールについてもノベルティ同様に景品表示法の確認が必要な場合があるので、事前にチェックしておくことが必要です。
帳票類
- 請求書/領収書/納品書
これらは事務書類のため、マーケティングには関係しない同梱物になりますが、例えば納品書には、明細に加えて購入のお礼のメッセージなどを添えることでも、顧客に与える印象が変わってきます。
その他
- アンケート
実際に商品を使った感想や評価を知るために非常に重要なツールです。はがきタイプのアンケートが一般的です。
直接の売上や満足度の向上にはつながりませんが、今後の商品開発や企業の成長のためには、消費者からの意見は欠かせません。
また、得られたアンケートの内容はVOCのコンテンツに活用することも可能です。
- 定期申込書
単品購入のユーザーに対しては定期購入への誘導が重要ですので、定期コースへの申込書は忘れてはいけません。
定期引き上げの訴求で大事なのは、「毎回買うよりも定期の方がお得」ということを分かりやすく伝えることです。定期特典としては以下が一般的です。
・2回目以降も○%OFF
・定期購入でポイントが貯まる
・送料無料
- 返品・交換依頼書
ファッション関連のECなどの通販においては、試着ができないため、サービスの一環として返品・交換を受け付けているケースがあります。
その場合は、返品・交換依頼書を同梱します。依頼書の必要項目に記入し、商品と一緒に送り返してもらう方式が一般的です。
◆記入項目の例
② 購入商品と交換希望商品
③ 交換希望で在庫がない場合の対応(返送/返金)
④ 返金先口座情報
また、使用済みの商品や購入後時間がたった商品などを、むやみに返品・交換されることを防ぐためにも、返品規約を必ず記載しておくことが重要です。
実際の同梱物の例
それではここで、実際に筆者がECで購入した商品に入っていた同梱物を、一部ですが紹介します。
挨拶状・サンクスレター
下記は、Amazonでメガネ用のノーズパッドを購入した際に同梱されていた、販売元の「VITORIA ONLINE」のお礼状(サンクスレター)です。
商品自体は数百円の商品でしたが、気持ちのこもった丁寧なお礼の言葉や商品への想いが、担当者の方の名前入りで綴られております。また、公式LINEアカウントの登録へ誘導するQRコードも記載されています。
◆サンクスレター
試供品・定期誘導
下記は、筆者の妻が購入した、化粧品大手コーセーのブランド「コスメデコルテ」の商品の同梱物です。製品のサンプル(試供品)や、定期誘導のチラシが入っています。
写真は同梱物の一部ですが、化粧品は同梱物が充実している傾向があり、こちらの商品も購入した商品に対して同梱物が非常に多く入っている印象でした。
また、同梱物であってもメインの商品と見紛うばかりの凝ったデザインも特徴のひとつです。
◆製品サンプル・定期誘導フライヤー
ノベルティ
下記は、アパレルブランド「Good On」「OSAROOM」の商品に同梱されたノベルティです。ステッカーやキーホルダーなどは鞄やスマートフォンなどに付けることができるので、それだけで販促効果もありますし、ブランディングにもつながります。
◆ノベルティのキーホルダー・ステッカー
下記は、大手スポーツブランド「NIKE」の商品に同梱されている返品・交換依頼書です。筆者も、他社の返品・交換依頼書をいくつか見ましたが、NIKEの依頼書が最もわかりやすいフォーマットだと感じました。裏面は同内容が英語表記で記載されています。
◆返品・交換依頼書
同梱施策における5つの注意点
ここまで解説した通り、同梱物にはそれぞれ役割があり、多くのメリットをもたらしますが、無計画に取り入れては、効果が得られないばかりか、ユーザーに悪感情を抱かれてしまう可能性もあります。
ここでは、効果を最大化するための5つの注意点を解説します。
注意点① 同梱物を入れすぎない
同梱物の開封率はほぼ100%であるため、あれもこれもと同梱物を入れてしまいがちですが、過剰に入れすぎると、見てもらえない可能性が高くなってしまいます。
最悪の場合、ユーザーに広告色の強いECサイトだという印象を持たれてしまうこともありますので、必要最低限かつユーザーのためになるものだけを厳選して入れるべきです。
注意点② 購入者のニーズを考慮する
前にも述べた通り、初回購入とリピート購入では、ユーザーの心理やニーズが異なるため、状況に応じた同梱物を選択する必要があります。
また、冬に夏の商品を訴求したり、ダイエット商品の購入者にグルメキャンペーンを案内するなども、ニーズに合わずに逆効果となってしまうでしょう。
商品開封時のポジティブな心理状態だからこそ、効果を最大化するために、一人一人のユーザーに合った同梱物を入れることが大事です。
注意点③ コストマネジメント
印刷物やノベルティには制作コストがかかりますし、また、ユーザーの状況に応じた同梱施策を行うことで顧客満足度は高まりますが、作業工数が増え複雑化しやすいため、人的コストも増加します。
従って、作業工程の効率化や、大量発注で単価を抑えるなどのコスト意識を持つことが大切です。
不特定多数へのポスティングや郵送料などがかかるチラシ単体の運用に比べれば、同梱施策は圧倒的に低コストではありますが、制作コストが同梱物によって得られる利益を上回ってしまわないよう、計画的な運用が重要になってきます。
注意点④ 分かりやすい内容を心がける
何度も述べてきた通り、同梱物の開封率は100%に近いのですが、内容をじっくり確認するとは言い切れません。
ましてユーザーは複数の同梱物を一度に手にするため、一目見ただけでそれぞれの内容がある程度分かるように、アイキャッチとなるコピーやビジュアルは特に注意して制作する必要があります。
また、複数の同梱物を重ねる場合は、挨拶状を一番上に、帳票類は一番下にするなど、順番にも配慮することが大事です。
注意点⑤ モールに出店している場合は規約に注意する
大手のECモールでは、同梱物に関しての規約が定められていることもあるので、注意が必要です。
具体的には、モールからの離脱を防ぐために、外部サイトへ誘導するURLの記載を禁止することなどがあります。ECモールに出店している場合は、事前に禁止事項を確認しておくようにしましょう。
少し前の事例ですが、以前は楽天でも同梱物への自社ECのURL記載は禁止だったのですが、現在では規制が緩和されております。詳しくは以下の記事をご覧ください。
検証と改善を怠らないことが大事
同梱物はあくまでマーケティング施策の一つであり、それ自体が直接売上をもたらすものではないため、利益を削って行っている施策とも言えます。
だた同梱物を提供して終わりではなく、常に費用対効果の検証と改善を行い、効果の出ない同梱物は内容を見直すなど、無駄のないようにしましょう。
LTV向上のために同梱物は重要
これまで解説してきた通り、同梱物にはさまざまな種類があり、それぞれの役割があります。
そしてそれぞれが、顧客満足度の向上、ファンの育成、リピート購入やクロスセルの促進など、多くのメリットをもたらし、最終的なLTV(顧客生涯価値)の向上につながっていきます。
そのため、今後物販業界全体でECの利用が高まると予想される中で、同梱施策も、より重要なマーケティング施策となってくるでしょう。
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