EDIとはElectronic Data Interchange(電子データ交換)の略のことであり、取引先同士が同じデータ規格でシステム間をつなぎ、ビジネス文書(伝票、注文書、請求書、出荷通知書)を電子的に交換するシステムのことです。
特に卸売業者やメーカーでは、取引先企業との間で多くの受発注処理が発生します。従来は紙や電話・FAXなどで受発注処理を行っていましたが、EDIを導入することで、ビジネス文書のやり取りを素早く大量に行うことが可能になり、業務を効率化することができます。
しかし、EDIは多くのレガシー手順と呼ばれる古い規格を利用していたり、2024年1月に廃止される固定回線を利用しているため、インターネット網を利用した新しい規格の利用が推奨されております。
本日は、forUSERS株式会社でマーケティングを担当している筆者が、EDIについて詳しく解説します。
EDIとは企業間での受発注の仕組みを自動化したシステム
それでは、具体的にEDIの仕組みを解説します。下図をご覧ください。
◆電話やFAXによる受発注処理
出典(画像):筆者作成
卸売業者やメーカーから商品を仕入れる場合、頻繁に受発注処理が行われますが、人手を介すために、大量の受発注処理を行う場合はヒューマンエラーが発生しやすくなってしまいます。また、人手であるため営業時間中しか受発注処理を行うことができません。
もう20年以上前の筆者の話になりますが、ある会社で書類作成のアルバイトをしていたことがあります。当時、書類のやりとりはFAXが中心でした。ある時、社員が別の取引先にFAXしなければならない請求書を誤送信してしまった際に、同一商品でも取引先ごとに単価が異なる商品の請求書だったため、誤送信された取引先を怒らせてしまい、大問題になったことがありました。
まさに筆者が体験した例のように、書類も取引先によって詳細が異なり、手作業で処理することになるとミスが発生しやすくなるのです。
◆EDIによる受発注処理
出典(画像):筆者作成
しかし、取引先同士に同じ規格のEDIが導入されていれば、受発注処理を自動で行うことができます。また、EDIが自社の基幹システムと連携していれば、業務効率が極めて高くなるのです。
EDIを知るにはEDIの歴史を知る
EDIが生まれたのは1970年代です。下表をご覧ください。
◆EDIの歴史
出典(表):筆者作成
当初は、EOSから生まれたEDIですが、処理できる情報量も増え、小売業の多くで利用されるようになりました。しかし、その多くが古いEDIの規格であるためインターネット回線を前提に構築されておらず、画像のやり取りができないなど、情報量に制限があります。
それでは次にEDIの規格について詳しく解説します。
EDIの規格について
EDIの歴史でも解説しましたが、EDIには以下のような規格が存在します。
・流通BMS
レガシー手順とは、EDIが生まれた1970年代に策定された古い規格であり、固定回線網(ISDN)の少ない情報量のやりとりしかできない時代の規格でした。そのため、写真を添付するなどインターネット時代に対応していないというデメリットがあります。また、固定回線網の設置には、専用の通信機器やソフトウェアが必要になり、導入にコストがかかります。
そして、レガシー手順のEDIを維持するための端末は、すでに生産を終えている機器が多く、設備を維持するコストが高くなっているのです。
それに対して、流通BMSはインターネット時代に生まれた規格であり、インターネットのIP網で利用できることが前提となっております。
しかし、新しい規格の流通BMSにもデメリットがあります。それは導入コストが高いため、中小や零細企業の導入の敷居が高いという問題です。そのため中小・小規模企業では「Web-EDI」が普及しております。
Web-EDIは規格に準拠はしておらず、決まった企業間取引に使われるインターネットを利用したEDIです。インターネットが利用できるPCとブラウザがあれば専門機器が不要で、コストを抑えて導入できるメリットがあります。
EDIの課題
EDIの大きな課題を順に解説します。
課題① 2024年問題(固定回線のサービス終了)
多くの企業が導入しているレガシー手順のEOS、EDIは2024年でシステムが利用できなくなります。その理由は、NTTが提供している固定回線のデジタルサービスが2024年1月に終了するためです。そのため2024年1月までに、EDIを以下のどちらかのインターネット網に対応した規格(あるいはサービス)に乗り換える必要があります。
・Web-EDI
大手小売業であれば、すでに多くの会社が流通BMSに準拠したEDIに対応しております。しかし導入費用がかかるため、中小企業や小規模企業は導入費用の安いWeb-EDIを導入する企業が多い傾向にあります。
課題② 規格が統一されていない
以下は、流通BMS協議会(流通システム標準普及推進協議会) のパンフレットからの引用です。
EDIのようなインフラは標準化するものであって、差別化や競争優位性を競うものではありません。流通業界の多くの企業が標準EDIを採用することによって取引コストを下げるとともにスムーズな情報連携を実現し、生活者に対して付加価値の高いサービスを提供する「全体最適」の関係を築くことができます。
引用:流通BMS協議会「受発注の標準EDI 流通BMS®」(2018年2月版)
つまり、EDIの規格とは競合優位性を競うものではなく、業界全体が同じ規格を利用することで、一つの規格に対応するだけで全ての取引先とデータをやり取りできるようにするものなのです。しかし、以下のようにさまざまな規格があるため、業界全体で考えると非効率的です。
◆規格
・JCM手順
・Web-EDI
2024年1月以降は、レガシー手順がなくなるため、流通BMSかWeb-EDIの2択となりますが、業界の標準規格である流通BMS導入には費用がかかるため、Web-EDIを利用する企業も少なくありません。
課題③ Web-EDI導入の場合も取引先が多いと効率が悪くなる
Web-EDIはインターネット環境のPCがあれば手軽に導入できるというメリットがありますが、Web-EDIから必要なデータをダウンロードして、基幹システムにデータ入力する際は手作業が発生します。1~3社程度であれば30分ほどで終わるような作業ですが、取引先ごとにWeb-EDIが増えると、各Web-EDIの使い方も異なります。
そして、取引先や取引量が増えるとヒューマンエラーが発生しやすくなります。EDIは受発注にかかわる処理のため、受発注ミスをすると取引先を巻き込んで大きな迷惑をかけることになり、Web-EDIで多くの取引先を持つ場合は業務効率が悪くなります。
そのため、Web-EDIを使う場合は、特定の取引先で、かつ取引量が少ない場合は、コストがかからず有効な手法なのですが、Web-EDIを使う取引先が増える場合は、RPAを使って業務を自動化するなど、受発注処理のミスを防ぐようにしなくてはなりません。
今後のEDIは「流通BMS」か「Web-EDI」の2択
EDIについては、大手企業が取引先である場合は、「流通BMS」が基本となります。流通BMSは11,700社※が集まり、策定された規格であるため国内のあらゆる業界の受発注システムの標準規格となります。
※参考:流通BMS協議会(流通システム標準普及推進協議会)「受発注の標準EDI 流通BMS®」(2018年2月版)
もし、取引先においてWeb-EDIの利用を求められる場合は、なるべくWeb-EDIで利用するデータ項目を流通BMSの規格内にしておくべきです。そうすることで、流通BMSを運用の一部として、Web-EDIを利用することができるからです。そのためWeb-EDI独自のデータ項目などを作らないようにすべきでしょう。
EDIにはマーケティング機能はない
EDIは受発注システムであるため、ECサイトのようなマーケティング機能はありません。例えば、BtoB向けのECサイトによる受発注システムであれば、取引先管理画面に新製品やキャンペーンを画面で告知したり、あるいはポップアップ画面を用意して独自の宣伝をすることもできます。
またECサイトにおいては、数多くのツールベンダーがいるため、売上分析ツールや、ECサイトとメルマガを連動した施策などをすることができます。
さらにBtoB向けのECサイトであれば、見積機能や受発注に関するビジネス文書も自動で生成することができます。
経済産業省が発表したレポートによると、日本企業の多くは、未だに古いEDIなどのレガシーシステムを抱えており、 DX(デジタル・トランスフォーメーション)の推進にあたっての大きな課題となっているとされております。
そして、この課題の解決には、レガシーシステムを刷新しSaaSやクラウドシステムを積極的に利用することでDXに対応し、将来の成長と競争力強化を実現することが必要であるとも述べられております。
参考:経済産業省「DXレポート ~ITシステム『2025年の崖』克服とDXの本格的な展開~」
株式会社インターファクトリーが提供するebisumartは、SaaSのECサイト構築システムであり、BtoB向けのECサイトを展開するための機能や拡張性があり、さまざまな業種での利用が可能な構築システムです。
SaaSのECサイト構築システム:ebisumart(エビスマート)