「パズドラで有名なガンホーは、調子いいのかな?」
「ガンホーで働きたい!」
という方は、ガンホー・オンライン・エンターテイメント(以下、ガンホー)の業績や、どんな会社なのかが気になると思います。ガンホーは、現在はスマホゲームだけでなく、Nintendo SwitchやPlayStation4向けのソフトもヒットさせており、海外・国内を問わず、あらゆるプラットフォームでのゲーム開発を行っております。
なぜなら、パズドラのリリースは莫大な売上をあげましたが、パズドラ以降の経営を安定させるためには、パズドラだけに依存しない収益源が必要だからです。
本日はインターファクトリーで、シニアアドバイザーを担当している筆者がガンホーについて、転職を検討している方向けに詳しく解説いたします。
ガンホーは2013年にパズドラで急成長!ガンホーの売上高推移(2009~2022年)
それでは、ガンホーの売上高と営業利益の推移を見てみましょう。このグラフは、ガンホーの決算資料をもとに独自に作ったグラフです。
◆ガンホーの売上高・営業利益推移(連結業績)
ガンホーは、パズドラのヒットにより「スマホゲーム会社」というイメージを持たれている方がいるかもしれませんが、元々はPCのオンラインゲーム「ラグナロクオンライン」を運営している会社で、当時は会社の売上のほとんどが、このラグナロクオンラインが生み出しておりました。
しかし、上記のガンホーの売上高推移を見ると、2013年の売上高の伸びが突出しているのが、わかります。これは「パズル&ドラゴン」(以下パズドラ)が爆発的ヒットをしたためです。
どれほど、パズドラが売れたかと言うと、下記の図によると2013年度の全世界売上ランキングで1位になったほどです。(以下、ガンホーの決算資料より)
会社の業績をV字回復させたミクシィ社のモンストのメガヒットと同様に、ゲーム業界では、メガヒット作が出れば、このように会社の売上規模が一気に変わってしまうことがありますが、ライバルのGREEや、DeNAと異なるのは、あくまでゲーム会社であり、メディア事業などの他の事業に進出しておりません。
パズドラは「同じ色を3つ揃えて消す」というシンプルなゲームで現在は、パズドラの成功をもとに「既存事業の最大化(パズドラ)」と「新規ゲームタイトルの開発」の2つに戦略の軸を置いております。
では、各事業について、決算資料に基づいて解説いたします。
戦略① 既存事業の最大化(パズドラの最大化!)
ガンホーの基軸の戦略は「既存のパズドラ」を最大化することです。それではパズドラの直近のユーザー数は、どの程度なのでしょうか?
2022年6月時点のパズドラのMAU(月間アクティブユーザー数)
メガヒットしたパズドラも、すでに10周年に突入しており、2022年の12月時点ではピークの2014年の半分以下のMAUになっております。
◆「パズドラ」日本MAU・課金率推移
テレビCMの出稿を増やしていますが、MAUの減少の歯止めがかかっておりません。ただ、実数字はわかりませんが、それでもパズドラユーザーはかなりのユーザーがおり、グラフを見ても分かる通り、イベントなどの後に大幅に盛り返すことが繰り返されていますので、今後もこのユーザー数をどのように維持・拡大していくかが、ガンホーの大きな課題になります。
アニメやおもちゃなどにクロスメディア展開
パズドラはスマホゲームだけに留まらず、大きな展開を見せております。まず、2013年には「パズドラZ」として、家庭用ゲーム機の3DSで発売され、国内累計出荷本数が150万本を超える大ヒットとなりました。
続編の3DSソフトのパズドラクロスは、前作のようにヒットはしなかったものの、アニメやおもちゃなどの下記のクロスメディア展開が行われました。
◆パズドラIPを使ったクロスメディア戦略
・アニメ
・漫画
・おもちゃ
クロスメディア展開が行われ、4歳~12歳のキッズ層へのパズドラブランドを浸透させております。
e-Sports認定をとった!パズドラ!
海外では、e-Sports(イースポーツ)はメジャー競技で、リアルのスポーツ同様に人気があり、プロともなると多額の賞金を稼いでいますが、日本人のe-Sports進出は遅れていました。
国内の3団体が一つになり、2018年に日本eスポーツ連合が設立されました。これによりプロライセンスが発行され、高額賞金の大会を開催できるようになりました。その中で、e-Sportsとして認定されたゲームが8本あり、その中にパズドラも認定されました。
◆e-Sportsとして認定されたタイトル(2018年の設立時)
② CALL DUTY WWⅡ
③ ストリートファイターⅡ
④ 鉄拳
⑤ パズドラ
⑥ ぷよぷよ
⑦ モンスターストライク
⑧ レインボーシックスシージ
これにより、ガンホーはパズドラのe-Sportsの大会のレベルを3つに分けて全国で開催し、パズドラのユーザーを盛り上げるとともに、さらなるパズドラIPの利用の最大化を狙っているのです。
ただ、「ストリートファイター2」のような世界中でプレイされているゲームとは違い、パズドラは世界中でプレイされているゲームとは言い難く、その点は下記の記事で疑問を投げかけておりました。大変興味深い記事なので併せてご覧ください。
戦略② 新規タイトルの開発
位置ゲーを販売!妖怪ウォッチ
2018年6月、株式会社レベルファイブと共同で、スマートフォンの新規タイトル「妖怪ウォッチワールド」をリリースしました。サービス開始3日目で50万ダウンロードを記録し、2018年9月時点で200万ダウンロードを超えました。
妖怪ウォッチで、位置ゲーというと「ポケモンGO」を連想してしまいますが、大きな違いは実際に移動しなくても、遊べる点で、一時社会問題となった「歩きスマホ」に考慮した形をとりました。
2014年に妖怪ウォッチブームが到来し、2015年にはアメリカ進出も果たしましたが、そこからグッズの供給不足による転売問題、ゲームの発売延期、そして「ポケモンGO」や「ドラクエウォーク」といったビッグタイトルの台頭といった不運が重なり、徐々に人気を落としていくことになりました。
そうした中で、妖怪ウォッチワールドは2022年12月をもってサービスの終了が決定され、惜しくもメガヒットまでは辿り着くことができず、終焉を迎えることとなりました。
海外向けのコンソール用のタイトルの開発
ガンホーは海外向けにも積極的にゲーム開発を行っております。2016年12月に北米、欧州向けに配信したPlayStation4ソフトウェア「LET IT DIE」は全世界で400万本を超えるヒットとなりました。
また、2020年6月には、海外向けにNintendo Switchソフトウェア「Ninjala」をリリースし、現在では世界累計1,000万ダウンロードを超える大ヒットタイトルとなりました。
参考:Nintendo Switch™向け対戦ニンジャガムアクションゲーム『ニンジャラ』が世界累計1000万ダウンロードを突破(ガンホー・オンライン・エンターテイメント株式会社 プレスリリース)
このようにガンホーは、スマホゲームだけではなく、コンソール(ゲーム機)用ソフトも開発しており、パズドラだけに依存せず、複数のラインナップを開発しております。
ガンホーはマルチプラットフォーム戦略とグローバル展開
大手ゲーム会社の特徴のひとつにヒット作に経営が依存してしまうことが挙げられます。そのためGREEやDeNA,ミクシィは、収益をゲームだけに依存せずに、メディア事業や、ゲーム以外のアプリ開発事業などで、事業の多角化を目指しておりますが、ガンホーは少し違います。
ガンホーは、あくまでゲーム会社という軸をずらさず、ゲーム事業の中での多角的展開を見せています。スマホゲームだけに頼らず、Nintendo SwitchやPlayStation4向けのソフトも開発し、海外向けのゲームをリリースし、100万ダウンロード以上のメガヒット作品を作るなど、マルチプラットフォーム戦略とグローバル展開を行うことで、経営の安定・拡大を目指しているのです。