「LINEに入社したい!」
「LINEに興味あるけど、SNS以外には何をやっている会社なのだろうか?」
LINEはSNSとして、日本で最も普及しているアプリの一つですが、転職・就職先の企業としては、どんな企業なのでしょうか?LINEは上場しており、決算資料が公開されているので、それを分析してみると、LINE社は現在6つの事業を運営していることががわかります。
①広告
②コミュニケーション・コンテンツ
③フィンテック
④AI
⑤コマース
⑥LINEモバイル
本日はインターファクトリーで、シニアアドバイザーを担当している筆者が、これからLINE社に転職・就職を考えている方向けに、LINE社の6つの事業を詳しく解説いたします。
LINE社の売上推移(2013年~2017年)
まずは、LINE社の過去5年間の売上推移を見てみましょう。下記のグラフは、LINE社の決算資料を参考に独自に作ったグラフです。
データ引用先:IR資料 LINE
2017年度の売上は1,617億円となり、売上はかなり堅調に伸ばしております。
LINE社を大きくわけると下記の6つの事業となります。ちなみにLINE社では「コア事業」と「戦略事業」の二つに分類しており、コア事業で収益の柱を築きつつ、次の新しい収益の柱を産む新規事業を「戦略事業」と呼んでいます。
①広告(コア事業)
②コミュニケーション・コンテンツ(コア事業)
③フィンテック(戦略事業)
④AI(戦略事業)
⑤コマース(戦略事業)
⑥LINEモバイル(戦略事業)
下記は事業別の年間売上収益のグラフです。緑色(濃い緑)の部分の比率が特に高まっているのがわかります。これはコア事業の「①広告」の事業が急激に成長しているのです。
つまりLINE社を急激に成長させている大きな要因は広告事業なのです。広告事業は2014年度と2017年度を比較すると、おおよそ3.2倍にも成長していることがわかります。
そして濃い青も伸びているのが分かります。これは「フィンテック」事業の中でも「LINE Pay」が売上に寄与しているのです。
それでは各事業について詳しく解説いたします。
①広告(コア事業)
LINEの広告は大きく分けると2つあります。
(1)ディスプレイ広告
LINEの広告サービスと言えば、企業アカウントのLINE@などを想像するでしょうが、「LINE Ads Platform」と呼ばれる広告プラットフォームを使って、ディスプレイ広告が出稿できるサービスです。端的に言えばLINEのアプリの中の「LINE NEWS」のと「Time Line」に配信されます。下記の赤い四角の部分が、広告配信です。
◆「LINE NEWS」に広告が配信
◆Time Lineに広告を配信
これだけ見ると「普通の広告だな~」と思われるかもしれませんが、5千万人近くのMAU(1月あたりのアクティブユーザー)のLINEとなると、リーチできる人数が、他の広告とは比較になりません。しかも、LINEのディスプレイ広告は、下記の図をご覧になればわかるとおり、TwitterやFacebookの広告では、リーチできないユーザーにリーチできるメリットがあるのです。
◆SNSの日本国内ユーザー数比較
画像引用先:ZDnet Japan
また、ただ単にNEWSやTime Lineに配信するのではなく、ユーザーの属性(性別、年齢、地域)を見て、一人一人に合う広告を配信するのです。例えば、10代の方に不動産広告を出してもほとんど意味がありませんから、セグメント(属性)に分けて、広告効果の最大化できる仕組みです(このような仕組みはLINE以外の広告プラットフォームで一般的です)。
さらにLINE NEWS以外にも、提携しているニュースサイトに広告が配信されます。広告の値段は一カ月あたり100万円~となっており、次に紹介するアカウント広告よりは、安い値段で始めることができます。LINE Ads Platformはブランディングのための広告より、サービスや商品を売るための広告に向いています。
2016年度以降にLINE社の売上が、大きく伸びているのは、この広告のサービスの影響のためです。
(2)アカウント広告
アカウント広告は、いわゆる「LINE@」のことです。皆さんも企業スタンプが欲しいために、企業アカウントを「友だち」に追加したことはあると思います。
◆企業アカウント(下記はLINE社の公式アカウント)
友だち追加してくれたユーザーに対して一斉配信を行う機能で、クーポン券を贈ったり、商品の宣伝をしたりと、大きな影響力がある広告です。そのため相場も月間800万円以上もかかるため、広告費がある大手企業しか、配信することができませんでした。
LINEユーザーは、10代~20代の若いユーザーが多そうに感じるかもしれませんが、実は40代の利用者も多く、幅広いユーザーに使われており、広告、とくに会社を認知してもらうためのブランディングに効果的な役割を果たします。ユニクロや、資生堂、ケンタッキーといったナショナルクライアントも継続してLINEのアカウント広告を使いつづけているのは、マス広告(テレビや新聞)に近い影響力がある証拠です。
②コミュニケーション・コンテンツ(コア事業)
この事業で扱っているサービスは、
・LINEスタンプ、着せ替え
・ゲーム、漫画、占い、ミュージック
などであり、エンドユーザーから課金するビジネスモデルをとっています。Google PlayやApp storeの仕組みを使って、料金を徴収するモデルですので、アプリで課金している他の会社と、大きな差はありませんが、やはりLINEのブランド名は強く、LINE漫画は1900万ダウンロードを超えています。
また、LINEアプリは、関連サービスを紹介するメニューがあるため、5,000万DAUのLINEをキッカケに、これらのサービスをダウンロードするユーザーも多く、同じようなビジネスモデルの競合他社よりも、ずいぶん有利にサービスを広げることができるのです。
◆LINEの関連メニューの画面
③フィンテック(戦略事業)
LINEのフィンテックとは、LINE Payのことです。LINE PayはTVコマーシャルでも流れておりましたが、友だち同士で、お金の送金をスマホでできるのがポイントで、例えば飲み会の割り勘などは、細かいお金がない人がいたり、お金を持ち合わせてない人がいたり、幹事が大変ですが、LINE Payであれば、スマホで割り勘がスムーズにできる仕組みなのです。
しかし、LINE社の狙いは、個人間での普及ではありません。それよりもむしろ、社会インフラの一つとして、LINE Payが使われることです。具体的には公共料金の支払いや、現在のSuicaのように(それ以上に)コンビニでLINE Payを使って支払われるようになることです。
◆台湾で導入されたLINE pay
LINEは、決済方式として、中国で主流となっているQRコードにより決済方式を採用しており、この決済方式の最大のメリットは、受け入れる事業者が用意する端末は、スマホだけで良いので、負担が少ないことです。中国でも爆発的に使われる要因となったのはこの理由も大きいのです。
2018年3Qの最新の決算資料をみると、LINE Pay導入事業者は92万を超えており、2018年内に100万箇所以上に導入される見込ですが、筆者はLINE Payが、日本で普及するには、まずは利用ユーザーが増えないことには、普及しないと考えております。
なぜなら、日本には、すでにクレジットカードを使うスマホ決済や、コンビニ後払いなどの多くの決済サービスがあり、サービスが整ってなかった中国のようにカンタンに普及するのは考えにくいからです。
そのためLINE社もキャンペーンを行い、友だちに10円を送金すれば、商品をプレゼントするなど、利用者促進行いユーザーを獲得に本腰を入れています。
このフィンテック事業こそ、LINEが最も力を入れている事業なのです。
④AI(戦略事業)
LINEのAI事業とはスマートスピーカーの「LINE Clova」のことです。この市場はGoogleとAmazonが先行しており、Clovaは苦戦していると思います(このジャンルは数字が公表されておらず、筆者の推測になります)。
筆者はGoogleHomeを2つ所有しておりますが、購入の決め手となったのが、連携しているアプリです。筆者はGoogle musicやGoogleカレンダーなどを、スマホやPCで日常的に使っており、それらのアプリと連携するのは非常に助かっております。
このようにClovaの普及は、家電やアプリどうやって連携先を増やしていくかが、課題となります。例えば筆者は、ソニーのブルートゥースのイヤホンを買ったのですが、Clovaと連携することができるようでしたので、「Clovaも買ってみようかな?」と少し気になったこともあり、このように家電製品との連携の強化が普及に影響していくでしょう。
⑤コマース(戦略事業)
LINEでは下記の3つのカテゴリーでEコマース事業を行っています。
・LINEショッピング(ポイントサービスで自社ECサイトを支援)
・LINEデリマ(テイクアウトサービス)
・LINE FRIENDS(LINEのキャラクター販売)
どのコマースの売上も伸びておりますが、その中でも「LINEショッピング」は、面白いサービスです。LINE自身がコマースを行うわけではなく、ECサイトを持つ会社の商品をLINE上(LINEショッピング)で宣伝し、LINEショッピングで欲しい商品をクリックすると、企業のECサイトに遷移します。
購入することで、ユーザーはLINEポイントを得られ、そのポイントは、LINE Payと交換することができるので、現金を得るに等しいことになります。
このサービスについては、下記記事に詳しく解説されているので、是非一読してください。非常に良い記事です。
⑥LINEモバイル(戦略事業)
この事業は、LINEの子会社である「LINEモバイル」の展開するMVNO事業、いわゆる、3大キャリアから回線を借りてサービスを提供する格安SIMの事業のことを指します。
2018年1月にLINEモバイルはソフトバンクと戦略的提携を結びました。これにより、ソフトバンクのLINEモバイルへの出資比率は51%となりました。
ソフトバンクの思惑としては、MVNO市場をLINEモバイルと手を組んで、制する目論見と、LINEモバイル側には、自社で全てを行うよりも、3大キャリアの一つのソフトバンクと手を組んだ方が、より早くビジネスを大きくできると考えたからだと筆者は考えます。
LINE本体にとってみれば、LINEモバイルの出資比率をソフトバンクに譲ってでも、携帯電話事業において、成長することが、LINEの本業にメリットが大きいと考えたのではないでしょうか?
ただ、筆者には、LINEモバイル事業が、どのようにLINE本体や周辺事業にどのようにシナジーを産むのかがわかりません。というのも、すでにユーザーが利用するスマートフォンのアプリには、キャリアに関係せず、LINEアプリが圧倒的シェアを獲得しており、MVNO事業で売上を伸ばすこと以外にどのようなメリットをLINE本体に及ぼすのかが、よくわかりません。
ですから、今後のLINEモバイルのサービスやLINEの他の事業とのシナジーに注目しております。
これからLINEを目指す方に
インターネット事業を目指す方でしたら、LINE社は非常に良い選択だと思います。なぜならメイン事業である「広告」や「コミュニケーション・コンテンツ」で、大きな利益を生みつつ、新規事業への挑戦をしているため、もしLINEに入社することができたら、新規事業でキャリアを積むことができる可能性が高いからです。
また、新規事業にしても、LINE社はメイン事業で、相当な収益をあげているため、予算がかなり大きい額で使えるため、若い人材でも大きな仕事ができるからです。また中途入社を考えているベテランの方も、LINE社はあらゆる業界に事業を展開しているため、開発系やマーケティング、経営企画などいろんなスキルの人材を求めているはずです。
ただ、LINEで働きたいという人は当然多いため、入社への難易度は低くはないでしょう。筆者の友人も昔LINEにチャレンジして、内定をもらいましたが、面接では論理的思考を求める質問が多かったと言っておりましたので、キャリアはもちろんのこと、しっかり対策しないとカンタンには内定はもらえないでしょう。