LTV(ライフタイムバリュー)とは顧客生涯価値のことであり、端的に言えば、一人の新規ユーザーが、生涯において買い物する金額の総額のことです。ECサイトにおいては売上を安定させるためには、リピート購入を促すことが重要であり、それによりLTVを向上させることが求められます。
LTVの計算式はさまざまですが、この記事では下記の計算方法をもとに、LTVについて考えてまいります。
LTVを向上させる施策としては、CRM・WEB接客ツールを利用したものが多いのですが、それらのツールを導入していなくともできることはあります。
本日はforUSERS株式会社でマーケティングを担当している筆者が、ECサイトにおいて、LTV向上のための6つの施策を解説します。
LTV向上のための6つの具体的施策
それでは、ECサイトにおいてLTVを向上させるための6つの施策を解説します。
施策① 優良顧客に対して特別なオファーを提供する
施策② 送料無料を実施する
施策③ オマケや手書きのメッセージを商品に同梱する
施策④ リピーターにSNSをフォローしてもらい商品の魅力をアピール
施策⑤ 梱包のクオリティを高める
施策⑥ 顧客対応を強化する
施策① 優良顧客に対して特別なオファーを提供する
すでに、自社のECサイトで繰り返し買い物しているユーザーに対して、特別なおもてなしをしているでしょうか。筆者の経験ですが、あるスクールのマーケティングを担当していたころ、既存顧客にアンケートを実施した結果、以下のような声が非常に多かったことがあります。
あまりにも声が多かったため、優良顧客に対して特別なオファーをしたところ、そのような声がなくなり、ますます優良顧客のサービスの利用率が上がったという経験があります。
通常、ECサイト運営では、既存ユーザーにアンケートを取ることはないと思われるので、このような声に気が付かないかもしれません。何年も利用している優良顧客であっても、一つの不満をきっかけに他のECサイトを利用するようになる可能性もありますので、LTVの高い優良顧客には特別なオファーを検討してみましょう。
優良顧客をセグメントする際は、以下のようなセグメント抽出方法があります。
◆優良顧客のセグメント抽出方法
・累計購入金額が多い
・最終注文日が直近
顧客リストのセグメントを実施して、これらの優良顧客に対して、感謝の気持ちを示すことで、ロイヤリティが高くなり、ECサイトの利用率が高まり、LTVを向上させることができます。具体的にはセグメントを手作業で抽出し、メルマガやDMでオファーを送付してみましょう。
施策② 送料無料を実施する
下記のアメリカの調査結果によると、ECサイトを選ぶ基準として、配送スピードと送料無料に期待しているユーザーが多いことが分かります。
出典:Digital Commerce 360とBizrate Insightsが実施した「How has being an Amazon Prime member influenced your perception and expectations surrounding online order deliveries? Please select all that apply」の調査結果をもとに日本語表記の表を筆者が作成
送料無料は、EC事業者の負担が大きくなるため、カンタンな施策ではありませんが、Amazonプライムが普及し、大手を中心に送料無料を実施するECサイトが増えております。そして若いユーザーほど、どのECサイトが送料無料なのか比較検討する傾向が高いでしょう。
このような状況をLTV向上施策と捉えた場合、送料無料を実施することでリピート購入しやすい状況を整えます。
送料無料を実施することで、以下のKPIを高めることができるはずです。
平均継続期間(年)
しかし、単に送料無料を実施しても効果は上がりません。ECサイトでしっかり送料無料を告知する必要があります。
◆送料無料を告知する場所
カテゴリページ
商品ページ
繰り返し送料無料をアピールして、このECサイトでの買い物がお得であるという印象をユーザーに持ってもらいましょう。
施策③ オマケや手書きのメッセージを商品に同梱する
ECサイトで購入した商品が自宅に届いたときに、予想もしない「オマケ」や「手書きのメッセージ」があれば、心が温まるものです。
筆者も以前、ECサイトで「エアジョーダン」を繰り返し購入した際、「以前、買ったエアジョーダン4はいかがでしたでしょうか?」というようなカンタンなメッセージが同梱されており、そのECサイトへの親しみを覚えました。
ECサイトの規模が小さいうちは、注文数が少ないので手書きのメッセージを入れる対応は可能なはずです。また、ステッカーなどのオマケをいれることで、ユーザーのロイヤリティを向上させることはできるはずです。このようなサプライズの演出を真剣に考えることで、LTVを向上させることができます。
施策④ リピーターにSNSをフォローしてもらい商品の魅力をアピール
CRMに力を入れて、ユーザー一人ひとりに異なる接客を試みても、スマートフォンが普及した昨今では、あまりメルマガは見られることはありません。筆者も以前購入したショップやサービスからメルマガが大量に届きますが、ほとんど開封しておりません。
そのため、リピート購入を促すのはメルマガより、SNSの方が向いていると筆者は考えます。まず、新規や既存ユーザーに対して、商品を発送した際に、SNSアカウントのQRコードを同梱して、自社のInstagramやFacebookなどのアカウントをフォローしてもらう施策を実施しましょう。
そして、SNSのフォロワーを増やしつつ、SNSで商品の魅力的な写真や機能をアピールすることで、既存顧客がリピート購入をする可能性が出てきます。ただし、SNSはユーザーとの交流の場ですから、あまり宣伝色が強いアカウントはフォローを外されてしまいますので、ユーザーの視点で、役に立つ投稿を心掛けましょう。
SNS施策を積極的に行うこともリピート購入を促し、LTVの向上につながるのです。
施策⑤ 梱包のクオリティを高める
ECサイトをただの注文の仕組みと考えるか、あるいはユーザーに素晴らしい購入体験をしてもらうためのツールと考えるかで、LTVに大きな違いが生まれるはずです。
その点、Apple製品の梱包は非常に丁寧で、またとてもきれいな梱包であるため、箱を捨てるのをためらうほどです。
このような施策は、小規模EC事業者でも限定的にまねできるはずです。以下のECのミカタの記事では梱包のコツがまとめられているので、参考にしてみてください。
梱包に注力しても、すぐにユーザーから好意的な反応が返ってくるかは分かりません。しかし、他のECサイトで買い物をして梱包を比較した際に、「そういえば、以前買ったECサイトの梱包はきれいだったな」と思い出して、自社のECサイトに戻ってきてくれることもあるかもしれません。
このようにユーザーの購入体験を演出するという視点を持つことが、LTVの向上にもつながるのです。
施策⑥ 顧客対応を強化する
ECサイトでは、基本的にユーザーとの接点が少ないため、顧客対応が非常に重要になります。
初めて利用するECサイトでは、ユーザーは少なからず不安を抱えながら買い物をします。そこで、商品を購入しても手元に届くまで何の連絡もなかったり、問い合わせに対する返答にも時間がかかったりすると、ユーザーの不安はますます大きくなり、不安が不審に変わってしまうでしょう。
逆に、購入後もユーザーに対して密に連絡をしたり、問い合わせに対しても迅速・丁寧に解決まで導くことができれば、
「このサイトは安心して買い物ができる」
「スタッフの対応の感じが良いので、また何かあれば問い合わせたい」
「他の知らない店で買うならこの店の方が安心だ」
このようなポジティブな印象をユーザーは持ち、リピート購入の可能性が大きくなります。
特に、クレームを受けた際の対応は非常に重要です。ここでいう重要性は、企業の信用を損なう可能性があるというのもありますが、クレームは対応の仕方によって顧客満足度を上げ、再購入につなげるチャンスであるという点です。
クレーム処理と再購入率の相関関係を定義した「グッドマンの法則」という考え方があります。
◆グッドマンの法則
第一法則 | 不満を持った顧客のうち、苦情を申し立て、その解決に満足した顧客の当該商品サービスの再入決定率は、不満を持ちながら苦情を申し立てない顧客のそれに比べて高い |
第二法則 | 苦情処理(対応)に不満を抱いた顧客の非好意的な口コミは、満足した顧客の好意的な口コミに比較して、二倍も強く影響を与える |
第三法則 | 企業の行う消費者教育によって、その企業に対する消費者の信頼度が高まり好意的な口コミの波及効果が期待されるばかりか、商品購入意図が高まり、かつ市場拡大に貢献する |
第一法則では、クレーム対応に満足したユーザーの再購入率は、不満を持ってもアクションを起こさなかったユーザーより高いとされています。また、第三法則でも、ユーザーに対して適切な情報を提供することで、ユーザーの信頼度は高まり、ポジティブな口コミ効果が期待できるとされています。
苦情であっても顧客との貴重な接点です。クレーム対応は「ユーザーとの良好な関係を築くチャンス」と考え真摯に対応することで、長期的な利益につながっていきます。
まとめ
本日紹介した方法は、特別なCRMツールを導入していなくてもできるLTV向上施策です。LTVの向上とは、すなわち顧客満足度を高める施策につながります。規模が小さいECサイトの運用では、メッセージを送るなどのマーケティングが実施できるので、試せるものから実施してみてください。
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