LTVを向上させてECサイトの売上を上げる7つの施策

LTV(ライフタイムバリュー:顧客生涯価値)とは顧客生涯価値のことであり、端的に言えば、一人の新規ユーザーが、生涯において買い物する金額の総額のことです。ECサイトにおいては売上を安定させるためには、リピート購入を促すことが重要であり、それによりLTVを向上させることが求められます。

LTVの計算式はさまざまですが、この記事では下記の計算方法をもとに、LTVについて考えてまいります。

LTV = 平均購入単価 × 粗利率 × 平均購入頻度(回/年)× 平均継続期間(年)

引用:LTVとは?重要視される理由と計算方法を解説(NECソリューションイノベータ)

LTVを向上させる施策としては、CRM・WEB接客ツールを利用したものが多いのですが、それらのツールを導入していなくともできることはあります。

本日はforUSERS株式会社でマーケティングを担当している筆者が、ECサイトにおいて、LTV向上のための7つの施策を解説します。

なぜLTVが重要なのか?

ECサイトの成長を考える上で、LTVは欠かせない指標です。新規顧客の獲得は短期的な売上を生みますが、長期的な安定をもたらすのは既存顧客との関係維持です。つまり「一度の購入」ではなく「継続的な購入」を促す仕組みを整えることが、事業の成長に直結します。

◆LTVが重要とされる理由

・広告費や集客コストとのバランスを測る指標になる
・リピート戦略が利益率を改善する
・ビジネスの安定化につながる
・事業価値や企業価値にも直結する

LTVは単に数字を追うための指標ではありません。広告費とのバランスを測り、利益率を改善し、安定した収益基盤を築くための重要な評価基準です。そのため、長く愛されるECサイトを目指す上で、LTVの向上は避けて通れないテーマといえます。

次項からは、LTVを向上させるための具体的な施策について紹介してまいります。

LTV向上のための7つの具体的施策

それでは、ECサイトにおいてLTVを向上させるための7つの施策を解説します。

施策① 優良顧客に対して特別なオファーを提供する
施策② 送料無料を実施する
施策③ オマケや手書きのメッセージを商品に同梱する
施策④ リピーターにSNSをフォローしてもらい商品の魅力をアピール
施策⑤ 梱包のクオリティを高める
施策⑥ 顧客対応を強化する
施策⑦ 定期購入(サブスクリプション)を導入する

施策① 優良顧客に対して特別なオファーを提供する

すでに、自社のECサイトで繰り返し買い物しているユーザーに対して、特別なおもてなしをしているでしょうか。筆者の経験ですが、あるスクールのマーケティングを担当していたころ、既存顧客にアンケートを実施した結果、以下のような声が非常に多かったことがあります。

「何年も通っているのに、価格やサービスが新規顧客と変わらない」

あまりにも声が多かったため、優良顧客に対して特別なオファーをしたところ、そのような声がなくなり、ますます優良顧客のサービスの利用率が上がったという経験があります。

通常、ECサイト運営では、既存ユーザーにアンケートを取ることはないと思われるので、このような声に気が付かないかもしれません。何年も利用している優良顧客であっても、一つの不満をきっかけに他のECサイトを利用するようになる可能性もありますので、LTVの高い優良顧客には特別なオファーを検討してみましょう。

優良顧客をセグメントする際は、以下のようなセグメント抽出方法があります。

◆優良顧客のセグメント抽出方法

・累計購入回数が多い
・累計購入金額が多い
・最終注文日が直近

顧客リストのセグメントを実施して、これらの優良顧客に対して、感謝の気持ちを示すことで、ロイヤリティが高くなり、ECサイトの利用率が高まり、LTVを向上させることができます。具体的にはセグメントを手作業で抽出し、メルマガやDMでオファーを送付してみましょう。

施策② 送料無料を実施する

下記のアメリカの調査結果によると、ECサイトを選ぶ基準として、配送スピードと送料無料に期待しているユーザーが多いことが分かります。

AmazonPrimeがユーザーに与えた影響調査

出典:Digital Commerce 360とBizrate Insightsが実施した「How has being an Amazon Prime member influenced your perception and expectations surrounding online order deliveries? Please select all that apply」の調査結果をもとに日本語表記の表を筆者が作成

送料無料は、EC事業者の負担が大きくなるため、カンタンな施策ではありませんが、Amazonプライムが普及し、大手を中心に送料無料を実施するECサイトが増えております。そして若いユーザーほど、どのECサイトが送料無料なのか比較検討する傾向が高いでしょう。

このような状況をLTV向上施策と捉えた場合、送料無料を実施することでリピート購入しやすい状況を整えます。

送料無料を実施することで、以下のKPIを高めることができるはずです。

平均購入頻度(回/年)
平均継続期間(年)

しかし、単に送料無料を実施しても効果は上がりません。ECサイトでしっかり送料無料を告知する必要があります。

◆送料無料を告知する場所

トップページ
カテゴリページ
商品ページ

繰り返し送料無料をアピールして、このECサイトでの買い物がお得であるという印象をユーザーに持ってもらいましょう。

施策③ オマケや手書きのメッセージを商品に同梱する

ECサイトで購入した商品が自宅に届いたときに、予想もしない「オマケ」や「手書きのメッセージ」があれば、心が温まるものです。

筆者も以前、ECサイトで「エアジョーダン」を繰り返し購入した際、「以前、買ったエアジョーダン4はいかがでしたでしょうか?」というようなカンタンなメッセージが同梱されており、そのECサイトへの親しみを覚えました。

ECサイトの規模が小さいうちは、注文数が少ないので手書きのメッセージを入れる対応は可能なはずです。また、ステッカーなどのオマケをいれることで、ユーザーのロイヤリティを向上させることはできるはずです。このようなサプライズの演出を真剣に考えることで、LTVを向上させることができます。

施策④ リピーターにSNSをフォローしてもらい商品の魅力をアピール

CRMに力を入れて、ユーザー一人ひとりに異なる接客を試みても、スマートフォンが普及した昨今では、あまりメルマガは見られることはありません。筆者も以前購入したショップやサービスからメルマガが大量に届きますが、ほとんど開封しておりません。

そのため、リピート購入を促すのはメルマガより、SNSの方が向いていると筆者は考えます。まず、新規や既存ユーザーに対して、商品を発送した際に、SNSアカウントのQRコードを同梱して、自社のInstagramやFacebookなどのアカウントをフォローしてもらう施策を実施しましょう。

そして、SNSのフォロワーを増やしつつ、SNSで商品の魅力的な写真や機能をアピールすることで、既存顧客がリピート購入をする可能性が出てきます。ただし、SNSはユーザーとの交流の場ですから、あまり宣伝色が強いアカウントはフォローを外されてしまいますので、ユーザーの視点で、役に立つ投稿を心掛けましょう。

SNS施策を積極的に行うこともリピート購入を促し、LTVの向上につながるのです。

施策⑤ 梱包のクオリティを高める

ECサイトをただの注文の仕組みと考えるか、あるいはユーザーに素晴らしい購入体験をしてもらうためのツールと考えるかで、LTVに大きな違いが生まれるはずです。

その点、Apple製品の梱包は非常に丁寧で、またとてもきれいな梱包であるため、箱を捨てるのをためらうほどです。

このような施策は、小規模EC事業者でも限定的にまねできるはずです。以下のECのミカタの記事では梱包のコツがまとめられているので、参考にしてみてください。

参考記事:ECサイト運営に必須の梱包資材!正しいやり方や選び方のコツ・種類・注意点を解説(ECのミカタ)

梱包に注力しても、すぐにユーザーから好意的な反応が返ってくるかは分かりません。しかし、他のECサイトで買い物をして梱包を比較した際に、「そういえば、以前買ったECサイトの梱包はきれいだったな」と思い出して、自社のECサイトに戻ってきてくれることもあるかもしれません。

このようにユーザーの購入体験を演出するという視点を持つことが、LTVの向上にもつながるのです。

施策⑥ 顧客対応を強化する

ECサイトでは、基本的にユーザーとの接点が少ないため、顧客対応が非常に重要になります。

初めて利用するECサイトでは、ユーザーは少なからず不安を抱えながら買い物をします。そこで、商品を購入しても手元に届くまで何の連絡もなかったり、問い合わせに対する返答にも時間がかかったりすると、ユーザーの不安はますます大きくなり、不安が不審に変わってしまうでしょう。

逆に、購入後もユーザーに対して密に連絡をしたり、問い合わせに対しても迅速・丁寧に解決まで導くことができれば、

「このサイトは安心して買い物ができる」
「スタッフの対応の感じが良いので、また何かあれば問い合わせたい」
「他の知らない店で買うならこの店の方が安心だ」

このようなポジティブな印象をユーザーは持ち、リピート購入の可能性が大きくなります。

特に、クレームを受けた際の対応は非常に重要です。ここでいう重要性は、企業の信用を損なう可能性があるというのもありますが、クレームは対応の仕方によって顧客満足度を上げ、再購入につなげるチャンスであるという点です。

クレーム処理と再購入率の相関関係を定義した「グッドマンの法則」という考え方があります。

◆グッドマンの法則

第一法則 不満を持った顧客のうち、苦情を申し立て、その解決に満足した顧客の当該商品サービスの再入決定率は、不満を持ちながら苦情を申し立てない顧客のそれに比べて高い
第二法則 苦情処理(対応)に不満を抱いた顧客の非好意的な口コミは、満足した顧客の好意的な口コミに比較して、二倍も強く影響を与える
第三法則 企業の行う消費者教育によって、その企業に対する消費者の信頼度が高まり好意的な口コミの波及効果が期待されるばかりか、商品購入意図が高まり、かつ市場拡大に貢献する

引用:グッドマンの法則(NPO法人 顧客ロイヤルティ協会)

第一法則では、クレーム対応に満足したユーザーの再購入率は、不満を持ってもアクションを起こさなかったユーザーより高いとされています。また、第三法則でも、ユーザーに対して適切な情報を提供することで、ユーザーの信頼度は高まり、ポジティブな口コミ効果が期待できるとされています。

苦情であっても顧客との貴重な接点です。クレーム対応は「ユーザーとの良好な関係を築くチャンス」と考え真摯に対応することで、長期的な利益につながっていきます。

施策⑦ 定期購入(サブスクリプション)を導入する

すべてのEC事業者に共通する施策ではありませんが、もし繰り返し購入が想定される商材を取り扱っているECサイトであれば、「定期購入」や「サブスクリプション型」の販売方式を導入することで、LTVの向上に大きく寄与します。

例えば、以下のような商材は定期購入に向いています。

◆定期購入向けの商材の例

・健康食品やサプリメント
・化粧品やスキンケア商品
・コーヒーや紅茶などの嗜好品
・日用品(洗剤、歯磨き粉など)

定期購入の最大のメリットは、「継続的な売上が見込める」点です。ユーザーにとっても「毎回注文する手間が省ける」「割引や送料無料などの特典が受けられる」といった利点があるため、適切なタイミングと特典設計ができれば、高い継続率が期待できます。

実際に、定期購入を導入することで以下の指標が向上します。

◆定期購入により向上が期待されるKPI

・平均購入頻度(回/年)
・平均継続期間(年)

これらは、LTVの計算式に直結する重要な要素であり、定期購入によって顧客との関係を長く維持できることは、LTVを高めるための大きな要因となります

定期購入の導入にあたっては、以下のような工夫を行うと効果的です。

・「スキップ」「停止」「解約」が簡単にできるUI設計
・継続回数に応じた特典やプレゼント
・購入サイクルの自由な設定(例:30日・45日・60日ごと)

定期購入の導入はシステム的な対応が必要になりますが、近年はカートシステムやサブスク特化ツールの進化により、比較的容易にスタートできるようになっています。

◆定期購入に特化したカートシステム

たまごリピート魂
侍カート

ただし、上記はASP型のカートシステムであり柔軟なカスタマイズが難しく、外部システムとの連携も限定的なため、どちらかといえば小規模なECサイト向けといえます。例えば、WordPressなどのCMSや業務システムとの連携要件がある場合、ASP型では対応できないケースもあります。

そのため、中規模〜大規模なECサイトにおいては、柔軟なシステム拡張やカスタマイズ性を重視し、パッケージ型ECシステムやクラウドECの導入が現実的な選択肢となります。

特に「EBISUMART(エビスマート)」は、定期購入をはじめとした複雑な販売形態にも対応できる高い柔軟性と拡張性を備えたクラウドECプラットフォームです。API連携やシステムの個別開発にも対応しており、定期通販事業をスケーラブルに運営したい企業に最適です。

詳しくは下記の公式サイトをご覧ください。

EBISUMART(エビスマート)

まとめ

本日紹介した方法は、特別なCRMツールを導入していなくてもできるLTV向上施策です。LTVの向上とは、すなわち顧客満足度を高める施策につながります。規模が小さいECサイトの運用では、メッセージを送るなどのマーケティングが実施できるので、試せるものから実施してみてください。

もし、ECサイトでの売上拡大にお困りでしたら、株式会社インターファクトリーのEC支援サービス「EBISU GROWTH」までお問い合わせください。経験が長いコンサルタントが貴社ECサイトを成功に導きます。

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ABOUT US
井幡 貴司
forUSERS株式会社 代表。 株式会社インターファクトリーのWebマーケティングシニアアドバイザーとして、EBISUMARTやECマーケティングの支援、多数セミナーでの講演を行う。著作「図解 EC担当者の基礎と実務がまるごとわかる本」では、ECサイトの初心者向けに特に集客方法について解説。