マイクロインフルエンサーとは、InstagramやYouTube、X(Twitter)、TikTokなどのフォロワー数が1万人から10万人程度の範囲のインフルエンサーのことを指し、いわゆるメガインフルエンサーやミドルインフルエンサーより小規模ながらも特定の分野で発信力がある個人のことを指します。
具体的には以下のような特徴があります。
◆マイクロインフルエンサーの特徴
・生活感のある投稿がしやすい
・エンゲージメントが高い
・特定分野に発信力がある
影響力は、フォロワー数の多いメガ/ミドルインフルエンサーよりも劣りますが、マイクロインフルエンサーの方が「生活感」のある投稿に見えやすかったり、コストが安いため投資対効果が得られやすい場合があるなどのメリットがあります。
この記事では、forUSERS株式会社でマーケティングを担当している筆者が、マイクロインフルエンサーについて詳しく解説します。
筆者の「マイクロインフルエンサー」とのタイアップ事例
筆者が昔、ある広告代理店のコンサルを担当していた際、そこで何人かのインフルエンサーと仕事をする機会がありました。とあるコスメ商品を、多くのインフルエンサーに投稿してもらったところ、特に多くのCVを獲得したのが数人のマイクロインフルエンサーだった経験があります。
媒体はInstagramでしたが、そのマイクロインフルエンサーのアカウントと他のインフルエンサーのアカウントを比べてみると、多くのCVを出したマイクロインフルエンサーのアカウントに、ある特徴が見えてきました。
◆CVRの高いマイクロインフルエンサーのアカウントの共通点
・エンゲージメントが高い
CVを獲得したマイクロインフルエンサーの投稿を見ると、決して美容に特化した投稿ばかりをしているわけではなく、料理や旅行、子どもたちの写真など、自身のライフスタイルが見える投稿が中心となっていました。
また、投稿に対するエンゲージメントが非常に高いのも特徴で、下記のようなやりとりが、投稿単位で頻繁に行われていました。
◆CVRの高いマイクロインフルエンサーとフォロワーとのやりとり(例)
フォロワー「息子さん、大きくなりましたね!カッコイイ!うちの子ももうすぐ中学生です♪」
インフルエンサー(投稿者)「ありがとうございます♪このくらいの年の男の子って元気すぎて大変ですよね笑」
これらの特徴から、いわば「子育てしながら美容も楽しむ等身大の30代女性」という世界観が「私もこうなりたい!」という同年代女性の強い共感を得て、多くのCVを獲得するに至ったのだと考えます。
メガインフルエンサーであれば、ただ商品を紹介するだけでもある程度の売上が見込めますが、このように、マイクロインフルエンサーでも自身のライフスタイルへの共感が得られれば、売上に寄与することができるのです。
マイクロインフルエンサーとはフォロワー1~10万人規模のインフルエンサーのこと
まずは、マイクロインフルエンサーを把握するために、以下の表をご覧ください。
◆インフルエンサーの比較
インフルエンサーの種類 | フォロワー数の目安 |
ナノインフルエンサー | 1万人以下 |
マイクロインフルエンサー | 1万人~10万人程度 |
ミドルインフルエンサー | 10万人〜100万人程度 |
メガインフルエンサー | 100万人以上 |
マイクロインフルエンサーに明確な定義があるわけではありません。SNSに携わる会社やコンサルによっては、1,000人程度でもマイクロインフルエンサーとする方もいれば、そうではない方もいますので、あくまで上記の表は目安として見ておきましょう。
マイクロインフルエンサーは、フォロワー数が少ない分、一般ユーザーと近い立場であり生活感のある投稿や、特定分野での専門性を発揮しやすいという特徴があるのです。
また、案件を依頼する企業にとっては、メガインフルエンサーに依頼すると100万円以上かかる場合もある依頼費用が、マイクロインフルエンサーの場合は、フォロワー数が少ないため費用を抑えることができ、費用対効果を出しやすい利点があるのです。
これらを踏まえて、マイクロインフルエンサーのメリットを次に解説します。
マイクロインフルエンサーの3つのメリット
マイクロインフルエンサーの3つのメリットを以下に整理します。
◆マイクロインフルエンサーのメリット
メリット② エンゲージメントを上げやすい
メリット③ 案件費用が比較的安価
それでは、これらを一つずつ解説します。
メリット① 生活感のある投稿がしやすい
フォロワーが数十万人のインフルエンサーに案件を依頼すると、影響力が大きい反面、インフルエンサーは芸能人のような存在でもあるため、どうしても「案件っぽさ」「PRっぽさ」が含まれてしまいます。
しかし、マイクロインフルエンサーの影響力はそこまで大規模ではないため、通常のユーザーと近しい生活感のある投稿をしても違和感がありません。むしろ、等身大の親しみやすさから好感を得やすい面があります。
例えば、化粧品の新製品の案件である場合も、マイクロインフルエンサーが毎日のルーティンの中で、化粧品を実際に使っている投稿の方が、ユーザーに受け入れられやすいメリットがあるのです。
メリット② エンゲージメントを上げやすい
今のSNSは「エンゲージメント」が非常に重要です。エンゲージメントには、例えば以下のようなものがあります。
◆ユーザーからのエンゲージメントの例
・コメントやリプライ
・リポスト(リツイート)
・ブックマークやお気に入り
・DM
つまり、エンゲージメントとはユーザーからの反応のことであり、エンゲージメントが高い投稿ほど露出力が高まるのです。
以下は筆者のXのアカウントであり、たった600人のフォロワーしかおりませんが、1.3万のインプレッションがあります。
◆筆者のフォロワー600人のXアカウントがインプレッションを1.3万も稼いだ例
フォロワー600人のアカウントが1.3万インプレッションを稼げた理由は、青い枠部分である「いいね」や「ブックマーク」が多数あるためエンゲージメントが高まり、その結果アルゴリズムが私の投稿を「質の高い投稿」と判断したため、一気に露出が高まったのです。
このように、少ないフォロワー数であってもエンゲージメントを生むことが可能であり、さらにフォロワーが1万人以上いるマイクロインフルエンサーが「質の高い投稿」を行えば、バズを生むことも可能となります。
案件を依頼する企業にとっては多くのインプレッション(リーチ)を広げることができ、さらには多くのCV(注文や問い合わせ)を獲得することができるのです。
メリット③ 案件費用が比較的安価
インフルエンサーの費用感はフォロワー数で決まることが多く、一般的には以下が相場となります。
◆インフルエンサーへの費用感目安(1投稿あたり)
インフルエンサーと直取引 | キャスティング会社経由 | |
1フォロワーあたりの費用目安 | 1~3円 | 3~5円 |
つまり、1万人のフォロワーがいるマイクロインフルエンサーに依頼する場合は、インフルエンサーと直取引であれば、1投稿あたり1万円を目安に案件を依頼できます。
もし、キャスティング会社と呼ばれるインフルエンサーの仲介会社を通すと、仲介手数料が取られますが、それでも5万円程度で依頼することができます。
このように、マイクロインフルエンサーは比較的安価で依頼できることが最大のメリットとなります。金額が安いということは、それだけ多くのインフルエンサーに案件を実施して、最も相性が良い(効果が高い)インフルエンサーを見つけて、定期的に案件を依頼することもできるのです。
マイクロインフルエンサーの投稿を第三者配信として広告利用できる
インフルエンサーの許諾をとって広告審査を通過すれば、インフルエンサーの投稿をそのまま広告として利用することが可能です。第三者配信は各プラットフォームによって以下のように名称が異なります。
◆SNSごとの第三者配信広告の名称
プラットフォーム | 第三者配信広告名 |
Instagramブランドコンテンツ広告 | |
X(Twitter) | 第三者ツイート配信 |
TikTok | Spark Ads |
もし、効果の高いPR投稿ができたのなら、一過性で終わるのはもったいないので、各プラットフォームに展開して広告効果の最大化を図っていくべきです。
マイクロインフルエンサーへの依頼方法と集め方
インフルエンサーに依頼する際には、キャスティング会社や代理店に問い合わせをするか、DMで直接依頼メールを出す形になりますが、マイクロインフルエンサーの場合は会社に所属していないことが多いため、DMで直接コンタクトを取る形が主になります。
依頼してみたいインフルエンサーを見つけたら、まずはアカウントのプロフィール欄を確認してみてください。会社に所属していないインフルエンサーの場合、大抵はプロフィール欄に下記のような記載があるはずです。
あるいは、投稿の中で「PR」表記がある投稿があれば、案件の依頼を受けているアカウントなので、積極的にDMを送っていきましょう。
DMの内容ですが、基本的な流れは、まず「案件依頼の可否」を伺い、受諾されれば「実際の案件詳細」を打診していきます。下記は、筆者がかつてコンサルを行っていた広告代理店で、実際にマイクロインフルエンサーに送っていたDMの内容なので、参考にしてみてください。
◆DMの例① 案件依頼の可否
【お仕事のご依頼】
お世話になります。
株式会社◯◯の△△と申します。突然のご連絡大変失礼いたします。
この度Instagramを拝見させていただきDMさせていただきました。弊社は合計1,000名以上のインフルエンサー様に毎月Instagramの案件提供をさせていただいている芸能プロダクション及び広告代理店になります。
https://◯◯.co.jp/既にいろいろな案件依頼が来ていることと思いますが、
なかなか出回っていない弊社独占案件をご提案させていただくことも多く、
もしご迷惑でなければInstagramでのお仕事のご提案をさせていただいてもよろしいでしょうか?ご多忙の中大変恐縮ではございますが、
ご返答いただけますと幸いです。なお、事務所所属の方につきましては、
マネージャー様に直接ご提案させていただきますので、
差し支えなければマネージャー様またはご所属事務所等のご連絡先をご教示いただければ幸いです。以上、お忙しい中失礼いたしました。
ご検討のほど何卒よろしくお願いいたします。
◆DMの例② 実際の案件詳細
株式会社◯◯の△△でございます。
お仕事の受諾をいただき誠にありがとうございます。固定報酬でお請けいただけるとのことでしたので、
早速ではございますが、ご依頼可能な案件をお送りさせていただきます。
下記案件はすぐにご依頼可能な案件ですが、
その他「こういった案件が希望」などございましたらお気軽にお申し付けください。——————-
■固定費案件商品A
https://○○.jp/
Instagramフィード投稿
ギャランティ5,000円(税別)×4回
商品提供可■掲載スケジュール
4回投稿
6月3日~14日までの間(金曜・土曜はNGでお願いいたします。)
・18時-21時の間に投稿お願いいたします。使用していただいた感想をInstagramにて投稿いただければと思います。
実施可能な場合は、希望ハッシュタグなどの詳細をお送りさせていただきます。
——————-※お支払フローに関しましては、月末締め/翌月末のお支払となります。
以上となります。
ご多忙の中大変恐縮ではございますが、
ご確認いただけますと幸いです。引き続き何卒よろしくお願いいたします。
このようなやり取りを行いながら、インフルエンサーを集めていきましょう。
ツールを活用すれば効率よくインフルエンサーを集めることが可能
インフルエンサーを探す際は、キャスティング会社や代理店に依頼しない限りは、自分で地道にアカウントを探すことになります。
以下のようなインフルエンサーを検索・抽出できるツールを活用すれば、自社が希望する条件(フォロワー数、エンゲージメント率、系統など)に合ったインフルエンサーをすぐにリストアップすることが可能です。
基本有料のツールですが、トライアル版であれば1日3回まで無料で使えるので、ぜひ試してみてください。
参考:iCON suite
マイクロインフルエンサー施策ではトラブルにも注意
筆者の知り合いにバッグのD2Cブランドを展開している会社の役員がおり、マイクロインフルエンサー施策についてヒアリングを実施したところ、過去にマイクロインフルエンサー施策を実施したが、約束が守られないなどのトラブルがあった、との体験談を聞きました。
この会社では、ビジネスバッグを展開しており、過去にマイクロインフルエンサー数人に案件を依頼したのですが、約束したタイミングに投稿されなかったり、あるいは打ち合わせと違う内容の投稿をするなどのトラブルがあったために、この会社ではインフルエンサー施策をやめてしまったのです。
そのため、自社と相性の良いマイクロインフルエンサーを探す場合は、まずは案件を実施してみて、効果とともに、ビジネスマナー面も重視しなくてはなりません。
インフルエンサーの投稿はステマにならないように注意が必要
インフルエンサーに投稿を依頼する際は、必ず投稿の冒頭に「PR」表記を付けてもらうことを忘れないようにしましょう。
2023年10月より景品表示法が変わり、「広告である」という明確な表記がない投稿はステマと見なされ、違法となる可能性があるためです。下記は、消費者庁により定義されている「PR」表記例になります。
◆SNS投稿の「PR」表記例
出典(画像):「事業者が講ずべき景品類の提供及び表示の管理上の措置についての指針」(消費者庁)より筆者が一部加工
これは、InstagramやX、YouTubeなどの各種SNSやブログにおいて共通して遵守しなければならない要件なので、注意が必要です。
まとめ
マイクロインフルエンサーは、1万人程度のフォロワー数ながら、「親近感がある」「広告っぽさがない」などの理由からフォロワーに受け入れられやすく、投稿がバズれば芸能人やメガインフルエンサーのように売上が伸びることが少なくありません。
企業にとっては費用を抑えながら成果を出しやすい、費用対効果の高い施策なので、積極的にマイクロインフルエンサーにコンタクトを取って、自社と相性の良いインフルエンサーを見つけてください。
なお、これからインフルエンサーマーケティングの実施を検討している事業者の方は、ぜひ株式会社インターファクトリーで提供しているEC事業者向けの支援サービス「ebisu growth」の活用をご検討ください。
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