ネットショップの廃業率は80%以上であると推測する理由を解説

日本国内におけるネットショップの廃業率は、各主要なECプラットフォームがデータを開示していないため不明ですが、アメリカの場合は廃業率は80%と紹介しているサイトもあります。ネットショップの利用率が日本より進んでいるアメリカで80%と考えると、日本はもっと高い可能性があります。

ネットショップで廃業率が高い理由は、ネットショップにユーザーを集客できないことが最も大きな理由になります。なぜなら、ネットショップの平均単価は3,000円程度であるため、広告を使って集客をすると利益が出ません。また、広告以外から集客するのは時間がかかりノウハウも必要であるため、多くのネットショップ業者が廃業してしまうのではないかと、筆者は考えます。

この記事では、forUSERS株式会社でマーケティングを担当している筆者が、ネットショップの廃業率について解説します。

国内ネットショップの廃業率データは存在しないが、アメリカでは80%とされている

まず、国内のネットショップの廃業率のデータは開示されておりません。一方アメリカの以下のサイトには、アメリカ国内のネットショップの廃業率は80%程度※とされております。

※出典:The Top 16 Reasons Why 90% of E-commerce Businesses Fail

アメリカのEC化率は14.6%であり、日本は9.13%ですから、アメリカの方がECの利用が進んでおります。そのアメリカにおいてネットショップの廃業率が80%であることを考えると、ネットショップの利用率の低い日本においてはそれ以上の廃業率であることが予想されます。

参考:経済産業省「令和4年度 電子商取引に関する市場調査報告書」(2024年8月発表)

つまり、ほとんどの人がネットショップで成功していないのです。

筆者は、かつて所属した大手の英会話スクールで、新規事業として英語教材のECサイトを立ち上げましたが、わずか5年でサイトを閉鎖しました。

いま振り返ると、英語教材のECサイトが撤退した大きな理由には集客ができなかった点があげられますが、おそらく筆者だけではなく、多くのネットショップが廃業する理由も、集客ができず売上を達成できない点にあるのだと考えます。逆にネットショップの集客がうまくいけば売上や利益につながりやすいので、集客に注力しなくてはならないのです。

ネットショップの平均単価は3,000円程度、利益が少ないため効果の高いリスティング広告費用が出せない

ネットショップの集客を行う場合、最初に検討するのが以下のような広告だと思います。

◆ネットショップで使われる広告

・リスティング広告(ショッピング広告を含む)
・ディスプレイ広告
・Facebook等のSNS広告

しかし、ネットショップを運営する多くの方が、これらの広告を実施することができません。なぜなら、ネットショップの平均単価は2,000円~4,000円程度であるため、広告を使うとほとんど利益が残らないからです。以下は3,000円程度で販売されているUSB扇風機をGoogleで検索した結果です。

◆USB扇風機をGoogleで検索した結果

Google検索でUSB扇風機と検索

3,000円程度の商品でも広告が出てきますが、大手企業がほとんどです。

◆広告に出てきた企業

・楽天市場
・Temu
・モノタロウ

3社ともショッピングモールの広告であり、やはりWeb広告の中で最も獲得効率の高いリスティング広告においても、個人や中小企業で広告費用を捻出するのは難しいことなのです。

つまり、ネットショップにおいては、単価が高い商品でないと広告で集客するのは難しいという現実があるのです。

では、個人や中小企業がネットショップを廃業しないようにするには、どのように運営すれば良いのでしょうか。ポイントを解説します。

ネットショップを廃業しないように運営する5つのポイント

それでは、以下の5つのネットショップ運営のポイントについて、一つずつ解説します。

ポイント① ネットショップの運営コストをギリギリまで下げる
ポイント② 商品ページの写真数と商品説明文を充実させる
ポイント③ SNSアカウントを開設してファンを作る
ポイント④ ショップのLINEアカウントを開設して顧客とコミュニケーションをとる
ポイント⑤ 競合他社との差別化を明確にする

ポイント① ネットショップの運営コストをギリギリまで下げる

まず、ネットショップ運営を継続するためには経費を徹底的に抑えるべきです。ネットショップでかかる費用は以下のとおりです。

◆ネットショップでかかる費用の一覧

・商品原価
・梱包用資材
・送料
・決済手数料
・ECプラットフォームの利用料
・人件費
・オフィスや倉庫賃料

ECプラットフォームの利用料ですが、個人であれば「BASE」や「STORES」などの無料プランを利用することで、ECプラットフォームの利用料を0円にすることができます。

もちろん、企業であっても特別な機能やカスタマイズがなければ、BASEやSTORESを利用したり、あるいは有料ASPでも最も安い費用でネットショップを運営することができます。

その他にも、ネットショップで売上が定まるまでは在庫もそこまで抱える必要はないのですから、個人であれば自宅を利用し、企業であればオフィスの空きスペースでも運営が可能です。つまり、ネットショップは最初から予算を過大にかけるのではなく、まずは最低限の経費にして、廃業しづらい体制を作りましょう。

ポイント② 商品ページの写真数と商品説明文を充実させる

ネットショップの運営費用を最低限に抑えつつ、商品を売るための施策も打ちます。先に解説したとおり、小さい規模のネットショップでは広告費を使うことはできないので、商品ページの写真の登録数と、商品説明文に力を入れます。

まず、写真ですが、例えばUSB扇風機を販売するネットショップなら、分解掃除の様子や実際に使っている様子など、さまざまな写真を増やすことでCVRは確実に増えます。なぜなら、ユーザーから見ると、

「掃除はカンタンそうだ!」
「こんな使い方もあるのか!」

と思うユーザーも出てくるからです。以下は、Amazonの商品ページです。

◆Amazonで販売されているUSB扇風機の写真

Amazonで販売されているUSB扇風機の写真

出典(画像):Amazon

極端な話ですが、同じ商品で価格や送料も同じ場合、1枚でも写真が多い(情報が多い)ECサイトのほうが「こっちで購入しよう」というユーザー心理が働きやすいものなのです。

どんな写真を撮れば良いのか悩むかもしれませんが、まずは商品を実際に使ってみることが大切です。

また商品説明文も、大手企業ではライターに依頼したり、あるいはメーカーから提供されている商品説明文を使う会社があるので、自社の商品説明文では他のサイトの倍の文章量で書いてみます。

書く方法はカンタンです。商品を実際に使ってみて、その感想を書いていくと良いでしょう。そうすることで独自性が強くなり、Googleの検索エンジンでも引っかかりやすくなり、自然と見込み客を集客することができるようになります。

ポイント③ SNSアカウントを開設してファンを作る

InstagramやX、FacebookなどのSNSアカウントを開設します。最初は社員や関係者、友人・知人に声をかけてフォローしてもらいます。投稿内容は、「おはようございます!」「今年の新入社員です!」といった内容は、ネットショップでは全く響きませんので、あくまで商品に関連する内容の投稿を行います。

例えば、USB扇風機を販売するネットショップの場合は、以下のような投稿です。

「弊社が販売する○○USB扇風機は、分解もカンタンです!」
「USB扇風機は、実はエアコンと一緒に使うと電気代が安く済みます!」
「USB扇風機が充電中に爆発しないようにするポイントは……」

このように、その商品が欲しい人が求めている情報に絞って投稿することで、USB扇風機に関心のあるユーザーがフォロワーとなります。そして、SNSのポイントですが、最初はフォロワーとのコミュニケーションを意識して、2~3人でも良いので毎回「いいね」や「コメント」してくれるような熱烈なファンを作ることです。

いいねやコメントが付くと、InstagramやXでも投稿が露出しやすくなります。また、投稿の度に「いいね」や「コメント」が入ると、モチベーションも高まるので継続しやすくなります。このようにSNSでファンを獲得することで、商品を販売するチャネルが一つ増えることになります。

ただし、SNSは長期的施策であり、数か月程度でSNS経由で商品がたくさん売れるようなものではないので、地道な継続が大切となります。

ポイント④ ショップのLINEアカウントを開設して顧客とコミュニケーションをとる

ネットショップに訪れた人で商品を購入してくれる方は、1%もいれば良い方です。つまり、多くの人はネットショップで商品を見るだけで離脱します。それは非常にもったいないことなので、クーポンなどの特典を付けてショップのLINEアカウントに誘導します。また、商品を購入してくれた方にもLINE会員の入会を促します。

LINEアカウントは、もちろん情報配信ツールにもなるのですが、ユーザーから問い合わせが来たときに、One to Oneでコミュニケーションがとれるツールとなります。例えば購入を真剣に悩みユーザーから問い合わせがあった際など、商品情報を真摯に提供することで、ファンを育成することにもつながります。

そして、ネットショップの経営を安定させるためには「リピーターをいかに作るか?」という点がポイントになりますので、積極的にユーザーとコミュニケーションをとるように心掛けましょう。このようにOne to Oneのコミュニケーションを積極的にできるのも、小さいネットショップの特権と言えます。

ポイント⑤ 競合他社との差別化を明確にする

競合サイトや大手サイトと同じような訴求で商品を販売していても、ユーザーからすれば「いつも利用しているモールサイトで買おう!」となるため、なかなか商品が売れません。商品を売るためには万人受けするような訴求ではなく、独自性のある訴求で差別化することが大切です。

その一つに「専門性」を高めるという手法があります。先に解説したとおり、商品についてどこよりも詳しく解説してみたり、ネットショップの店長のプロフィールを出して、専門性を高めることです。こうすることで、専門性の高いネットショップから購入したいというユーザーが、ファンになってくれるようになります。

差別化には他にもいろいろな訴求方法があるので、自社のネットショップに合う訴求をしてみましょう。

ネットショップは熱量を持って継続することが大切

本日は、ネットショップの廃業率と、廃業しないためのポイントを解説しました。しかし、最も重要なのは、熱量を持ってネットショップの運営を継続することです。

そして、熱量を継続するには中長期的な計画が必要であり、小さい目標を掲げてそれを地道にクリアしていきましょう。もし、ネットショップ運営の経験がなかったり、運営の継続に行き詰まりを感じている場合は、弊社のEC支援サービス「ebisu growth」にご相談ください。

◆EC支援サービス「ebisu growth」の提供サービス

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ABOUT US
井幡 貴司
forUSERS株式会社 代表。 株式会社インターファクトリーのWebマーケティングシニアアドバイザーとして、ebisumartやECマーケティングの支援、多数セミナーでの講演を行う。著作「図解 EC担当者の基礎と実務がまるごとわかる本」では、ECサイトの初心者向けに特に集客方法について解説。