9つの「オフラインマーケティング施策」を経験者が徹底解説

オフライン施策というと、ひと昔前のマーケティング施策に思われるかもしれませんが、家に届くダイレクトメールやチラシなど、今でも一つのマーケティングチャネルとして大手企業にも利用されています。オフライン施策として代表的なものは以下の9つです。

◆オフラインマーケティング9選

① チラシ・ポスティング
② DM(ダイレクトメール)
③ テレマーケティング
④ 看板・屋外広告(デジタルサイネージ含む)
⑤ 展示会
⑥ セミナー・ワークショップ
⑦ 交通広告(電車・バス・タクシー内広告)
⑧ ラジオ・テレビCM
⑨ 紹介・リファラルマーケティング

これらの施策はオフライン施策を単体で実施するより、オンライン施策と合わせてマーケティングを実施することで、効果測定ができたりより高い効果を見込めるようになります。

この記事では、forUSERS株式会社でマーケティングを担当している筆者が、オフラインのマーケティング施策について解説します。

オフライン施策とオンライン施策を掛け合わせた筆者の成功事例

オフライン施策だけで成功を生み出すのは容易ではありませんが、デジタルオンライン施策と組み合わせることで成功確率を高めやすくなります。筆者自身がオフラインの交通広告とSNSを組み合わせた成功事例を紹介します。

筆者が以前所属した英会話スクールでマーケティングを担当していたころの話ですが、エージェンシーが作成した電車広告のクリエイティブの反響が良く、SNSでも反響が得られるようになりました。そのクリエイティブは「部長の山下を呼んでまいります。そこで座ってろ」というような、日本人が間違った英語を使うことを揶揄したユニークなものでした。

その電車広告を見た人は「英語ではどのように言うのだろうか?」という英語を知りたいニーズが高まったのを受けて、Facebookページ限定で「I will call Manager Yamashita. Sit down.」という英語訳を公開したところ、大きな反響を得てFacebookページへの「いいね」を1,000以上増やすことに成功しました。

そして、「いいね」を押してくれたユーザーには、Facebookで継続的に宣伝を行うことができ、費用のかかる電車広告から、費用のかからないSNSへと自然にユーザーを誘導することに成功したのです。

このように、オフライン施策はデジタル施策と組み合わせることで、効果を可視化したり高い効果を得ることができるのです。それでは、次に代表的なオフライン施策を筆者の経験を交えて解説します。

オフラインマーケティング施策9選

代表的なオフライン施策を一つずつ解説します。

◆オフラインマーケティング9選

① チラシ・ポスティング
② DM(ダイレクトメール)
③ テレマーケティング
④ 看板・屋外広告(デジタルサイネージ含む)
⑤ 展示会
⑥ セミナー・ワークショップ
⑦ 交通広告(電車・バス・タクシー内広告)
⑧ ラジオ・テレビCM
⑨ 紹介・リファラルマーケティング

施策① チラシ・ポスティング

費用感:5万〜50万円(印刷・配布数による)

チラシの配布は、地域密着型のマーケティング施策として古くから活用されている方法の一つです。特に、実店舗を持つビジネスでは、周辺地域の住民に直接情報を届けられるため、エリアマーケティングとして効果的な施策と言えます。配布方法には、以下の3種類があります。

◆チラシ・ポスティングの3種類の配布方法

① 新聞折込(1枚あたり3〜5円)
② ポスティング(1枚あたり5〜10円)
③ 手渡し(人件費が別途必要)

新聞の購読数は年々減っており、高齢者が多いことからポスティングの需要が高まっていますが、新聞の中に織り込まれているチラシとは違い、ポスティングのチラシは見ずに捨てられやすいデメリットがあります。筆者もポスティング用のチラシを特定のエリアに1,000枚ほど業者に頼んで配布をしたことがありますが、そこから1~2件の問い合わせがあった程度ですので、学習塾や不動産など単価の高いサービスでなければ、採算がとりにくい面があります。

しかし、小規模事業者であれば自分で配布することで、配送費用を抑えることができます。筆者の知り合いの床屋も、定期的に代表自ら、店舗の近くにポスティングを実施することで、費用を抑えて新規顧客の呼び込みをしております。床屋であれば新規客が数件であったとしても、そこからリピートで来店してくれれば十分に採算が立ちます。

また、チラシを手渡しする方法もあり、この方法はターゲット層を選びながら配ることができるメリットがあります。業者を使うと、複数枚を同時に渡してしまう業者も存在しており、業者選定が非常に重要です。この施策もご自身で実施すれば費用は印刷代だけに押さえることができます。

このようなチラシの効果を高めるには、目を引くデザインやキャッチコピーを用意し、特典や割引でお得感を演出することが重要です。

施策② DM(ダイレクトメール)

費用感:1通あたり100円〜500円

ダイレクトメール(DM)は、特定のターゲット層に直接アプローチできる手法です。紙のDMとEメールDM(Eメールマーケティング)があり、紙のDMは開封率が高く、Eメールよりも「モノ」がある分、顧客の印象に残りやすいメリットがあります。

筆者の経験ですと、キャンペーンの一斉ダイレクトメールよりも、パーソナライズしたダイレクトメールの方が高い効果があったように思えます。例えば、休眠顧客に対して、顧客が以前参加したイベントと同じイベントのDMを個別に送付することで、高い反応率を得たことがあります。

しかし、パーソナライズするとCRMやMAツールの導入や運営の負荷もかかるので、まずは一斉ダイレクトメールでキャンペーンやクーポン、目玉商品など目を引くコピーを考えて反応率を上げていくPDCAサイクルを回してみましょう。

施策③ テレマーケティング

費用感:1件あたり500円〜3,000円(外注の場合)

テレマーケティングは、電話を通じて顧客に直接アプローチし、商品・サービスを提案する手法です。コールセンターを活用する場合、1件の架電にかかるコストは500円〜3,000円程度で、アポ獲得までに10〜50件のコールが必要になるため、1件のアポ獲得コストは数万円以上になることもあります。

テレマーケティングは内製と外注の運用がありますが、どちらの手法であってもマネージャーの手腕次第です。優れたマネージャーは、朝礼で一気にコールセンター全員の士気を高めて、個別にも質の高いフィードバックを行い、コールセンター全体の成果を最大化していきますので、内製だから良い、外注だから良いというものではなく、チームを率いるマネージャーの手腕次第と言えます。

テレマーケティングのデメリットは、Push型の営業手法となるので、それを嫌がるユーザーにとっては、悪い印象を与えます。例えば、自社のコールセンターの電話番号をGoogleで検索してみると、迷惑電話系のホームページに登録されて悪評が立ちます。テレマーケティングを行う場合は、これを避けることはできません。ですから、テレマーケティングを実施する際は、費用や自社の評判の面から考えてみるべきだと筆者は考えます。

施策④ 看板・屋外広告(デジタルサイネージ含む)

費用感:月10万〜100万円以上(設置場所・規模による)

屋外広告は、視覚的なインパクトが強く、不特定多数の人々にブランドや商品の存在を認知してもらうのに適した手法です。駅前や繁華街の大型ビジョンでは、1か月の掲載で50万〜100万円かかることもあります。店舗の近くの交通量の多い駅の屋外広告は、高い認知効果が得られます。

屋外広告の難しいところは費用対効果が読みにくいことです。筆者の経験ですが、店舗の経費削減のために、JRの駅の目立つ屋外広告を止めたところ、じわじわと顧客が減り、屋外広告の本当の効果に気が付いた数か月後には、他の会社に広告枠を取られてしまうことが過去にありました

逆に、屋外広告を止めても、集客に影響しなかったこともあるので、このように効果が分かりにくいことはオフライン施策のデメリットの一つとも言えるでしょう。そのため、マーケティング担当者は、屋外広告実施日と同時に問い合わせ数を観測し、対前年と比較するなど、データ分析を実施してわずかな変化にも気が付くように目を見張る必要があるのです

施策⑤ 展示会

費用感:1回あたり50万〜300万円(ブース設営・人件費含む)

展示会は、BtoB企業が新規リードを獲得するために効果的な手法です。小規模な出展であれば50万円程度で済みますが、大規模なブース設営や装飾を施す場合、300万円以上かかることも珍しくありません。費用には、出展料・ブースデザイン・パンフレット制作・スタッフの交通費や宿泊費などが含まれます。

展示会は、直接見込客と話せる機会であるため、接客に力を入れることで大きくアピールできる反面、営業スタッフのモチベーションやスキルが低いと、受け身な接客となるため商機を逃すことにつながります。そのため、営業スタッフには強いモチベーションを求めるとともに、スタッフの中にルールやKPIを設けて、積極的に接客させる必要があります。

また、昨今はBtoB事業者においても「コンパニオン派遣」を利用する企業も増えており、コンパニオンが積極的に名刺収集を行うことで、1名あたり1日に100件以上の名刺を取得することができますが、その分リストの質が下がるデメリットがあるため、とにかく数を取る場合にはコンパニオン派遣はおすすめです。

筆者も、幕張の展示会に一般の参加者として参加しましたが、某SaaS企業のコンパニオンが名刺提供を条件にお菓子を配っていたため、筆者はお菓子ほしさに名刺を提供しました。次の日には営業電話がかかってきたことに感銘(営業体制が整っていることに関しての感銘)を受けたことがあります

このようにコンパニオンが収集したリストに対して、すぐにアクションを起こすのは、質の低いリストに対する反応率を高めるために有効なテクニックだと思います。

施策⑥ セミナー・ワークショップ

費用感:1回あたり無料〜数十万円(会場費・講師費含む)

セミナーやワークショップは、企業の専門知識を活用して顧客に価値を提供しながら、信頼関係を築く手法です。無料セミナーで、場所や講師を完全社内のリソースで実施する場合であれば、無料で開催できますが、著名な講師を招く場合や高級ホテルを会場にする場合は100万円以上かかることもあります。

筆者が昔所属した英会話スクールでも、仕事帰りのビジネスパーソンにあわせて平日にビジネス英語のワークショップを開催しました。ワークショップにあったては社内のエース級の講師をアテンドし、アンケートで高い満足度を獲得して入学へとつなげていきました。ワークショップの成功の可否は集客であり、参加者が少ないとイベントに活気が生まれません

そのため、ワークショップを成功させるために、セグメントメール(オンライン施策)を配信したり、休眠顧客に声を掛けるなど、セミナーへの集客に力を入れました。

施策⑦ 交通広告(電車・バス・タクシー内広告)

費用感:月5万〜200万円(掲出場所・規模による)

電車内広告は、1車両の中吊り広告で月5万〜10万円、ステッカー広告で月20万円程度が相場です。駅構内ポスターや電車の車体広告になると、100万円以上かかるケースもあります。バス広告は比較的安価で、地元のターゲットにリーチしやすいため、地域密着型ビジネスに適しています。

交通広告の枠は、電通や博報堂などのエージェンシーが管理していることがほとんどで、それらの枠をどのように抑えるか、どのように価格交渉するのかがマーケターの腕の見せどころと言えます。

交通広告を実施する場合は、クリエイティブ(広告デザイン)の発注からエージェンシーに依頼することが多いため、クリエイティブ制作費用や、年間契約などあらゆることがエージェンシーとの交渉材料となるため、企業マーケターはエージェンシーに負けない知識や情報収集能力が必要となります。

しかし、昨今は電車内であっても、スマートフォンを見る方が多くなり、交通広告の効果が昔ほど良くないという話も聞きますが、電車広告にQRコードを設けて、オンライン施策と組み合わせるなどの手法も使われるようになりました。

施策⑧ ラジオ・テレビCM

費用感:
ラジオCM 10万〜100万円

テレビCM 50万〜1,000万円以上

ラジオCMは、地域密着型の放送局であれば比較的安価で実施できますが、全国ネットになると費用が高くなります。テレビCMは、放送時間や枠によって大きく変動し、深夜帯なら50万〜100万円程度でも放映できますが、ゴールデンタイムは数百万〜数千万円規模の予算が必要になります。

ラジオ広告などは、筆者は愛知県のエリアマーケティングのためによく利用した経験があります。例えば、関東や関西のビジネスパーソンにリーチするためには、電車内の交通広告を利用しましたが、愛知県では、車通勤の方が多いためラジオ広告によってカバーをする施策を実施しました。このように、エリアの特性やターゲティングを踏まえて広告出稿する必要があります。

なお、テレビ広告に関しては「ノバセル」というサービスを使って、効果測定をする方法が業界では流行しており、広告効果が見にくいテレビ広告に関して費用対効果をしっかり出す場合に向いているサービスなので、このサービスもオフライン施策とデジタル施策を組み合わせた施策と言えます。興味ある方は、下記の公式サイトをご覧ください。

ノバセル公式サイト

施策⑨ 紹介・リファラルマーケティング

費用感:無料~月数万円(掲出場所・規模による)

紹介・リファラルマーケティングは、既存顧客や関係者を通じて新規顧客を獲得する施策です。基本的には広告費を抑えつつ高品質なリードを得られるため、コストパフォーマンスに優れた手法と言えます。紹介者・被紹介者に対してインセンティブ(割引、キャッシュバック、特典など)を提供する場合、そのコストが発生しますが、それでもリード単価は他の広告施策と比較して低めです。

マーケティング費用があまりかからないため、筆者もメルマガを使って定期的にリファラル施策を実施していましたが、筆者の経験の範囲ですと、大きなリードの数を得られる施策というよりは、「やらないよりはやった方が良い」程度の施策であり、店舗やメールマガジンで定期的に勧誘することで、月に数件の契約を得ていた程度でした。

リファラルマーケティングは件数としては効果が少ないものの、店舗にはノルマや目標があるため、月末や期末の「あと1件で目標達成」と言った時に、マネージャーやエース社員が自分の知り合いに声をかけて目標達成することが多々あり、そのようなシチュエーションでは心強い施策と言えるのです。

まとめ

マーケティング担当者である以上は、オンライン、オフライン問わずにあらゆる施策にチャレンジしてみるべきでしょう。失敗する施策も多くでてきますが、反応率の高いオフライン広告を見つけることができれば、マーケティング施策の選択肢が広がり、より効果的な集客戦略を構築できるようになります。

特に、オフライン施策はターゲット層によってはオンライン施策以上の影響力を持つこともあります。成功の鍵は、 PDCAサイクルを回しながらデータを蓄積し、最適な手法を見極めることです。

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ABOUT US
井幡 貴司
forUSERS株式会社 代表。 株式会社インターファクトリーのWebマーケティングシニアアドバイザーとして、EBISUMARTやECマーケティングの支援、多数セミナーでの講演を行う。著作「図解 EC担当者の基礎と実務がまるごとわかる本」では、ECサイトの初心者向けに特に集客方法について解説。