自社ECサイトを検討すべきか、あるいは楽天市場やAmazonなどショッピングモールへの出店を考えるべきか検討しているのではないでしょうか?
もしECサイトやWebマーケティングの経験があるのなら、自社ECサイトから始めるべきですし、そういった経験に乏しいのなら、ショッピングモールから始めるべきでしょう。
なぜなら、自社サイトはショッピングモールのような制限が少ない代わりに集客力がありませんので、自社でWebマーケティングを実施して集客する必要があるからです。しかし、ブログによる集客やSNSマーケティングのノウハウがあるのなら、自社ECサイトで独自の世界観を構築することが可能になります。
本日は、forUSERS株式会社でマーケティングを担当している筆者が、自社ECサイトについて詳しく解説します。
自社ECサイトと楽天市場やAmazonなどのモールとの比較
まずは、下記の図をご覧ください。
◆自社ECサイトとショッピングモールの比較
自社ECサイト | ショッピングモール | |
初期費用 | ASPは安価、パッケージやフルスクラッチは高価 | 安価 |
月額費用 | システム保守料+ 利用料(主に決済手数料) |
月額利用料+売上課金+付加サービス料 |
集客力 | 弱い | 強い |
サイトデザイン | 自由(ASPにはある程度制限あり) | 制限がある |
ブランディング | 自由(ASPにはある程度制限あり) | 制限がある |
サポート体制 | ASPやパッケージは専用のチームがいる | 専用のチームがいる |
担当者のリテラシー | ECやITに関して高い知識が必要 | ある程度の知識が必要 |
楽天市場などのショッピングモールは、売上に対して手数料が高いと思われがちですが、実は自社ECサイトであっても、決済手数料やサイトのアクセス数に応じて費用が課金される仕組みであることが多いため、売上に比例して手数料が発生します。
しかし、自社ECサイトの方が手数料が安く、コストコントロールがしやすくなります。そして、ショッピングモールの手数料には「集客」にかかる費用が含まれており、楽天市場やAmazonのような有名ショッピングモールであれば、すぐに集客を実現することができます。
つまり、「自社ECサイト」と「ショッピングモール」のどちらが良いかという考え方ではなく、それぞれのメリットとデメリットを鑑みて、どちらが自社に合うかを考えるべきでしょう。例えば以下のような考え方です。
自社ECサイトか?ショッピングモールか?3つのケーススタディ
自社ECサイトにするかショッピングモールにするかは、例えば下記のようなケースで選択が変わってきます。
◆担当が初心者のA社
==>ショッピングモールにすべき
ECサイトの経験がない場合は、フォーマットが出来上がっている楽天市場などのショッピングモールが向いています。導入時からサポートを受けながら店舗を開業できるので、担当者がWebのノウハウを身に付けながらECサイトを運営することができます。ショッピングモールで商品を売る感覚を身に付けた段階で、自社ECサイトを検討した方がよいでしょう。
◆担当がECベテランのB社
==>自社ECサイトにすべき
すでに自社にECサイト運営のノウハウがある場合は、集客するためのWebマーケティングノウハウもあるので、自社ECサイトが向いています。
◆認知度の高いC社
==>自社ECサイトにすべき
すでに全国的に認知がある店舗やメーカーの場合は、いきなり自社ECサイトを立ち上げてもサイトに人が訪れます。店舗でECサイトをアピールするだけでも、自然とECサイトの利用者が増えるはずですから、自社ECサイトから始めるべきでしょう。
自社ECサイトの4つの作り方
それでは、自社ECサイトの作り方について解説します。自社ECサイトを作る場合、以下の4つの作り方があります。
◆4つの自社ECサイトの作り方
①ASP | ②パッケージ | ③カスタマイズ可能なクラウドEC | ④フルスクラッチ | |
初期費用 | 0円~ | 300万円~ | 300万円~ | 1,000万円~ |
月額費用 | 数千円~ | 10万円~ | 10万円~ | 10万円~ |
デザイン | 制限がある | 自由度が高い | 自由度が高い | 完全自由 |
カスタマイズ | 基本的に不可 | 可能 | 可能 | 完全自由 |
サーバ | ベンダー | 設置場所の選択可能 | ベンダー | 基本的に自社 |
最新性 | 常に最新 | 時代とともに古くなる | 常に最新 | 時代とともに古くなる |
セキュリティ | 高水準 | 自社で管理が必要 | 高水準 | 自社で管理が必要 |
まず、安価な「①ASP」ですが、BASEやSTORESなどが有名です。機能に制限があるものの、ECサイトとして最低限必要な機能は全て実装されております。
しかし、1日あたりの注文数が100件を超えると、バックエンド業務においてミスが発生しやすくなるため業務効率化が必要となり、その際はパッケージやカスタマイズ可能なクラウドECへの乗り換えが必要となります。
「②パッケージ」と「③カスタマイズ可能なクラウドEC」は、ともにカスタマイズが可能であり、年商1億円以上のECサイトに最適です。しかし、パッケージの場合はシステムが陳腐化しやすいため、セキュリティを保つためのコストがかかります。しかし、クラウドECの場合はベンダー側で最新のプログラムにバージョンアップを自動で行うため、セキュリティをあまり意識しなくても最新に保つことができます。
「④フルスクラッチ」は、自社の望む形のECサイトを作ることが可能ですが、導入期間には大抵1年以上かかりますし、また、昨今では②パッケージや③カスタマイズ可能なクラウドECが機能性も拡張性も高めているため、フルスクラッチのメリットが少なくなってきた印象です。
各システムと年商の規模感の目安は以下のようになります。
◆各システムとEC年商の規模感
システム | EC年商の規模感 |
①ASP | 1億円以下 |
②パッケージ | 1~50億円 |
③カスタマイズ可能なクラウドEC | 1~50億円 |
④フルスクラッチ | 50億円以上 |
たとえ大手であっても、新規事業の場合はASPから始めるべきでしょう。ASPのメリットは「早く」「安く」であり、スピード感が重要な新規事業に向いているプラットフォームだからです。
筆者も過去に所属した会社で、新規事業をASPで作成し、投資を低く抑えることができました。
自社ECサイト導入の7つの手順
それでは、筆者の経験を踏まえて自社ECサイト導入の7つの手順を解説します。
手順① ターゲット層と自社の競合優位性の確認
手順② 業務フローの確認
手順③ ECシステムの選定
手順④ ECサイトのデザイン制作
手順⑤ 商品登録
手順⑥ テスト注文
手順⑦ ECサイトの公開
手順① ターゲット層と自社の競合優位性の確認
まずは「自社製品がマーケットに受け入れられるか」について、ポジショニングマップを以下のように作成してみましょう。
◆ポジショニングマップの例
出典(図):筆者作成
ポジショニングマップ上で、自社のポジションに競合優位性があるのかを確認します。また、そのポジショニングにどのくらいのポテンシャルがあるのかも事前に議論しておきましょう。
手順② 業務フローの確認
ECシステムを選定する前に、自社の業務フローを確認しておきます。具体的には受注から発送までの処理がどのように行われるかを想定しておきます。事前に業務フローをある程度整備しておくことで、ECシステムを選定するときに、ベンダーと「○○の機能はありますか?」など具体的な話ができるようになるからです。
筆者が昔所属した会社では、コンサルを入れて業務フローを構築したことがあります。もし自社で業務フローを描けない場合は、コンサルを入れる方法もあります。
手順③ ECシステムの選定
先に紹介した想定EC年商によってECシステムを選定しましょう。もし個人事業主であれば、最初は固定費のかからないBASEやSTORESなどのASPが良いでしょう。なぜなら知名度やノウハウがない場合は、いきなり商品が売れることはないからです。
メーカーであったり知名度がある事業者の場合は、マーケティング機能や顧客管理機能が重要になるので、どのような機能が必要なのか事前に協議するべきでしょう。例えば、ASPであれば、導入できるツールと導入できないツールが明確にあるので、事前に利用したいツールを検討しておくべきです。
手順④ ECサイトのデザイン制作
ECサイトのデザインで気を付けなくてはならないのは、見栄えを重視して「英語」や「ローマ字」などの横文字を多用したサイトにしないということです。つまり読みやすく使いやすいサイトにしなくてはなりません。
以下はアパレルEC大手のZOZOTOWNですが、ナビゲーションなどが、ほぼ日本語やカタカナ表記で統一されているため、多くのユーザー層に利用しやすいサイト設計になっています。
◆ZOZOTOWNのトップページ
引用(画像):ZOZOTOWN
例えば、すでに認知度のあるブランドサイトであれば、ユーザーにも世界観が周知されているため、英語を多用したデザインであってもブランディングとして受け入れてもらえるでしょう。
しかし、特に自社の認知度がまだ低いECサイトや、ターゲット層の幅が広いECサイトであれば、見栄えではなく、いかに多くのユーザーに利用してもらいやすくなるかを重視してデザインすることが重要です。
手順⑤ 商品登録
商品登録はただの作業ではありません。ユーザーが欲しい写真や情報をしっかり書くことで、SEO対策にもなります。以下はファッションセンターしまむらの商品ページです。
◆ファッションセンターしまむらの商品ページ
引用(画像):ファッションセンターしまむら
② 商品説明
③ 商品の寸法
このように、商品詳細ページを見てユーザーが購入を判断できるだけの情報量を意識して、コンテンツを用意しなくてはなりません。
手順⑥ テスト注文
ECサイトの準備が整えば、最後にテスト注文を実施します。テスト注文を実際に行うことで、受発注業務から発送まで、業務が滞らないかを一通り確認します。なお、テスト注文においては全ての決済手段をテストしておきましょう。
自分がECサイトを利用するユーザーの一人になったつもりで、さまざまなケースを想定しながらテストを行うことが重要です。
手順⑦ ECサイトの公開
ECサイトを公開しただけでは、待っていても誰も訪れません。企業であれば、以下のようなメディアを使って、フルに宣伝しましょう。
◆ECサイトを公開したら宣伝に活用すべき媒体一覧
② メールマガジン
③ X(旧Twitter)やFacebookなどのSNS
④ プレスリリース
⑤ 自社ブログ
⑥ 実店舗
⑦ 社内への一斉メール
このような活動をすることで、Googleなどの検索エンジンもECサイトを認知します。数か月後にはECサイト名で検索すると、検索結果に出るようになります。
ECサイトで売上を伸ばすための2つの考え方:「初回購入」と「リピート購入」
自社ECサイトが公開できたのなら、EC事業はこれからです。ECサイトの売上を伸ばすには、2つの考え方が重要になってきます。
ECサイトの訪問者に、いかに「初回購入」をさせるのか?
「ECサイト運営で最も重要なことは?」と聞かれたら、筆者は「初回購入」と答えます。例えば、とあるユーザーがECサイトに訪れて、何かを購入しました。そして商品が届くと、以下のように思うユーザーも現れます。
つまり、非常に当たり前のことなのですが、リピート購入をする前提として、購入経験がなければリピート購入は生まれません。そのため、ECサイトの訪問ユーザーをどのように初回購入に向かわせるか、という意識が、自社ECサイトのマーケティングで非常に重要なのです。
初回購入については下記の記事でまとめているので、この記事とあわせてご覧ください。
初回購入者にどうやって2回目、3回目の「リピート購入」を促すのか?
そして、初回購入の次に大切なのが、リピート購入です。ECサイトの売上を増やしていくにも、新規ユーザーだけでは非常にコストや労力がかかります。「1:5の法則」にもあるように、新規ユーザーは、既存顧客の5倍の獲得コストがかかると言われております。
また、新規獲得には多くのライバル企業も参入しておりカンタンではありません。そこで、リピート購入を促すために、以下のような施策があります。
施策② ロイヤルカスタマー(優良顧客)向け施策
施策③ バースデーメール
施策④ レビュー依頼メールでポイント付与
施策⑤ SNSアカウントをフォローしてもらう
施策⑥ 会員限定で送料を無料にする
施策⑦ 商品に個別のメッセージカードを同梱する
これらのリピート購入施策については、下記記事で詳しく解説しているので、こちらの記事もあわせてご覧ください
まとめ
ECサイトの運営で最も重要かつ大変なのは「集客」です。集客ができるか否かで、最初から自社ECサイトを構築するか、あるいはショッピングモールから始めるか、といった最初の一歩が変わってきます。
そのため、いきなり制作に取り掛かる前に、自社製品のポジショニングや、ECマーケティング経験の見直しなど、自社の分析から始めることが重要です。
その上で、自社ECサイトを構築するのであれば、ASPやカスタマイズ可能なクラウドECから検討すべきでしょう。
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