靴をECサイトで購入する際、服以上に試着しないと自分に合うか分からないユーザーが多いと思います。
事業者としても、靴をECサイトで販売する際に、どのようなことに気を付けたらよいか模索している方も多いのではないでしょうか?
靴をECサイトで販売している事業者の中には、ECサイトのメリットを生かし、さまざまな販売方法を実施しております。
例えば、スニーカーやスポーツウェアで有名な「ニューバランス」のサイトでは、服と合わせた全体のコーディネートを利用して、実店舗ではイメージしにくいコーディネートの例を紹介しています。
今回は、インターファクトリーでマーケティング部門に所属する筆者が、ECサイトで靴を販売するメリット3つと注意点3つについて、成功事例を用いて解説いたします。
ユーザーの約3割はECサイトで靴を購入している
ECサイトでの靴の購入率は年々増加傾向にあります。
下記は、マイボイスコム(株)が2021年に発表した靴に関する調査結果のグラフです。これを見ると、直近のデータでは約3割のユーザーがECサイトで靴を購入しており、しかも2012年からの推移を見ると、その割合が急増していることがわかります。
◆靴の購入場所
特に2018年から2021年では、新型コロナウイルス感染拡大による外出自粛があったことから、ユーザーがECサイトで靴を購入するニーズは増えてきているといえます。
国内外のECモールの市場動向を調査する株式会社Nintが、楽天市場・Amazon・Yahoo!ショッピングのビッグデータを解析し、この3大ECモールで2023年に一番売れたと考えられる商品を調査、分析しております。その調査結果は下記のとおりです。
◆2023年の3大モールにおける売れ筋商品ランキング
ランキング | 商品 |
1位 | 家庭用ゲーム機本体A |
2位 | スニーカーA |
3位 | 家庭用ゲーム機本体A |
4位 | 家庭用ゲーム機本体B |
5位 | 高機能ワイヤレスイヤホンA |
6位 | スニーカーB |
7位 | スニーカーC |
8位 | 家庭用ゲーム機本体B |
9位 | スマートフォン(simフリー)本体A |
10位 | ベビー用オムツ |
※アルファベットが同じものは同一製品
データ引用:<Nintが推計>2023年、3大ECモールで一番売れた商品は? 売上総合No.1商品が決定!(ECデータラボ)
このランキングを見ると、上位10商品のうちスニーカーが3商品ランクインしており、特に人気のあるものは3大モールの中でも2番目に最も売れた商品となっています。
この結果から、ECサイトでの靴の購入は今や極めて一般的なものであり、前述の「ECサイトの購入場所」の調査結果は2021年発表のものですが、直近ではすでに3割という数字を大きく上回っているものと容易に想像できます。
靴販売大手のEC化率は11.5%
国内の靴販売最大手であるABCマート(株式会社エービーシー・マート)の2024年2月決算によると、オンライン販売は前期比5.6%増でEC化率は11.5%となっております。
2022年の国内の物販系分野におけるEC化率である9.13%を上回る数字となっており、靴の購入におけるEC利用率が高まっていることがわかります。
靴をECサイトで販売する5つのメリット
ここからは、靴をECサイトにて販売する5つのメリットについて、事例を通して解説します。
メリット1.どこでも簡単に購入できる
靴をECサイトで購入するメリットの一つとして、時間や場所を選ばず購入できる点があります。
その理由は、ECサイトそのもののメリットでもありますが、特に靴を購入する場合、実店舗で複数商品を購入すると靴箱などでかさばるため、ECサイトで購入した方が非常に便利だからです。
また、購入後の届け先も指定できる他、モール型ECサイトなどではアウトレットやセールなどの安価な商品も掲載されているため、商品によっては実店舗よりも安く購入できるでしょう。
メリット2.在庫の取り扱いが多い
2つ目のメリットは、在庫の取り扱いが多い点です。
実店舗での購入の場合、扱っているサイズや色が少ない場合があります。
ECサイトであれば、実店舗で在庫の少ない大きなサイズ・小さなサイズや、人気の色などを扱っているところが多いため、実店舗に行かずに欲しい商品を購入することができるからです。
近年では、オーダーメイドの靴をECサイトからも購入できるようになっています。
日本製のオーダーメイドシューズを販売する「MARNON(マルノン)」は、スマートフォンから簡単にカスタムシミュレーションができるECサイトを展開しています。
参考:MARNON
このように、ECサイトではオーダーメイドも含めた商品が豊富にあるため、ユーザーが購入しやすいといえます。
メリット3.コーディネートと合わせて提案しやすい
靴はシンプルなデザインの商品であれば服との合わせ方も特に気になりませんが、中には「靴単体はとても良い商品だが、この靴と服との合わせ方が分からない」という商品もあるのではないでしょうか?
ECサイトであればさまざまなコーディネートやアングルのイメージ画像を掲載することで、実店舗に比べて購入後のコーディネートをイメージしやすくなります。
スポーツブランドの「ニューバランス」は、商品説明ページの下に「この商品を使ったスタイリング」というコーナーを設け、ニューバランススタッフによるコーディネートを見ることができます。
また、着用している商品の詳細やコーディネートのポイントについてスタッフのコメントもあり、ユーザーが着用イメージを持ちやすいように工夫をしています。
◆ニューバランス スタイリング
参考:ニューバランス公式通販
メリット4.レビューをチェックできる
ECサイトでは、商品ごとに購入者の評価やレビューを掲載できます。これはユーザーにとっては大きなメリットであり、購入を決定する大事な要素になります。
◆女性用パンプスの商品レビュー
参考:mamian
店舗では、いかに商品知識が豊富なスタッフでも、そのスタッフひとりの意見や説明を頼りに購入を決めるしかありませんが、ECサイトのレビューでは、実際に購入した何人、何百人ものユーザーの率直な意見を知ることができます。
特に、1週間、1ヵ月、1年、あるいはそれ以上の着用期間における使用感や経年変化の様子など、店舗ではわからない内容がわかることは、ユーザーレビューならではの大きなメリットです。
筆者も実際に、ECサイトでレビューをチェックしてから実店舗で試着して購入することもありますし、逆に、たまたま店舗で見つけた好みの商品を試着し、自宅に戻ってECサイトのレビューをチェックしてから、そのままECサイトで購入するといった経験があります。
メリット5.靴を消耗品と考える層が存在する
靴はアパレルにおけるカテゴリーのひとつではありますが、衣服と違って経年劣化が激しく、早ければ数ヶ月、一般的には数年で使えなくなってしまうものが多いアイテムです。
そのため、ファッションやトレンドよりも消耗品として捉えるユーザーが一定数存在すると考えられます。筆者の周りにも、仕事で使い勝手がよくいつも履いている靴があるが、履けなくなったら同じものを買って何足もリピートしているという友人がいます。
買う商品もサイズも決まっている商品であるのならば、店舗で購入するよりECサイトで購入した方が、明らかに楽であることは間違いありません。
このことは、下記のECzineの記事の引用にあるように、ファッション性やトレンド性を重視しないAmazonでの購入が多くを占めていることからも、靴を日用品の範疇として購入する傾向が少なからずあると考えられます。
靴をECサイトで購入した人に、購入したECサイトを聞いたところ、「ショッピングモール型ECサイト(Amazonや楽天など)」と答えた人がもっとも多く(49.5%)、次いで「ファッション特化型ECサイト(ZOZOTOWNやLOCONDOなど)」(14.4%)、「通販カタログ販売のECサイト(ベルメゾン、フェリシモ)」(7.6%)という結果になった。
そしてこの調査は、15歳~69歳の男女を対象に行われています。
年代別に「ECサイト」と答えた人の割合を見ると、10代は24.0%、20代は35.5%、30代は38.5%、40代は32.5%、50代は25.5%、60代は19.5%と、30代がもっとも高くなった。
実はECサイトでの靴購入は、靴をファッションアイテムとして捉えるているユーザーだけではなく、比較的幅広い年代のユーザー層に対してニーズがあるのです。
靴をECサイトで販売する際の3つの注意点
ここからは、靴をECサイトで販売する際の3つの注意点について解説します。
実店舗からECサイトでの販売も検討している方は、以下3つの注意点に気を付けましょう。
注意点1.ユーザーが返品しやすい方法を考える
ECサイトで販売する際は、返品方法についても検討した方が良いでしょう。
なぜなら、筆者は先述の通り、靴は試着してから購入をしたいユーザーが多いと考えているため、試着から購入まで、すべてECサイトで行うには工夫が必要だからです。
ECサイトで靴や衣料品を販売している「ロコンド」は、返品の対応を手厚く行っています。
「ロコンド」はブランド数4,000以上と豊富に取り扱いのある靴やファッションのECサイトで、自宅で靴の試着や試し履きができる点が特長です。
ロコンドの商品を返品する際は、返品条件を満たすものであれば14日間返品が無料のため、簡単に返品しやすくなっています。
なお、2018年2月には商品を試着してから返品を除いた購入分のみの代金を支払う試着後払い「後々ばらい(ヤマト後払い)」を決済オプションとして開始しており(※2022年5月時点の情報)、ECサイトで初めて購入するユーザーが安心して購入できるよう工夫がされています。
また、先ほど挙げたMARNONでは「試着セット貸出しサービス」というサービスを行っています。
好きなデザインやサイズを2~3足選び、自宅での試着が可能なため、ユーザーが実店舗での試着をする手間を省くことができます。
◆MARNON「試着セット貸し出しサービス」
参考:試着セット貸し出しサービス(MARNON)
注意点2.関連商品を表示できているか
ユーザーが欲しい商品を明確に決めていないまま実店舗で靴を購入する場合、何店舗も回って購入することは大きな負担になります。
ECサイトであれば、関連商品一覧に似たような商品を掲載することで、実店舗を回らずにスムーズな購入が可能です。
ECサイトで靴を販売する際は、商品説明ページの下などによく掲載されている「関連商品一覧」も活用しましょう。
◆ニューバランスの関連商品一覧
また、「CUSTOM FASHION MAGAZINE」によると、2021年8月の調査で、靴を購入した人の購入頻度は「1年に1足」が一番多いそうです。
購入頻度の少ない靴を購入してもらうためにも、関連商品一覧を活用し、購入したい商品が明確ではないユーザーや、そもそも購入する予定のなかったユーザーが購入しやすくなるようにしましょう。
出典:いちばん多く履く靴1位は男女ともスニーカー!靴に関するアンケート調査【スニーカー所有率は96%以上】(CUSTOM FASHION MAGAZINE(カスタムファッションマガジン))
注意点3.素材や靴の特長をしっかり伝える
靴を販売する上で、靴の素材や特長が分かるように伝え方も工夫しましょう。
靴をECサイトで販売する場合、服と同様に、素材や特長が伝わりにくいからです。
「エア ジョーダン」で数多くのスニーカーファンを獲得しているナイキでは、ECサイト内で画像だけではなく動画も活用し、商品紹介ページにて掲載しています。
画像は商品の色や素材の違いが分かるように表示したり、着用イメージがより伝わるような動画を設置したりすることで、より商品へのイメージをユーザーに持たせるよう工夫しています。
参考:ナイキ
ECサイトで靴を販売する際は、商品紹介ページにただ画像を掲載するのではなく、ユーザーがイメージしやすいような工夫をしましょう。
バーチャル試着でEC購入を促進
前項でも触れましたが、ECサイトでは試着ができないため、購入に慎重になる傾向があります。そのため、先に述べたように返品しやすくしたり、試着後支払いなどのサービスにより各社対応しておりますが、大手ではデジタル技術を駆使した「バーチャル試着」により、ECサイトでの購入を促進しております。
ナイキに次ぐ大手スポーツウェアメーカーであるアディダスでは、AR技術を用いて、アプリ内で自分の足に商品を合成して、擬似的に着用イメージを確認できる機能を搭載しております。画面に表示される3Dモデルは、質感や光沢などまで精巧に再現され、足の動きにも追従して合成イメージが表現されるため、実際に近い着用イメージを立体的に確認できることが特徴です。
◆アディダスのAR試着
参考:アディダス
ZOZOTOWNでは、「ZOZOMAT」という、計測用のマットとアプリを連携させたサービスを行っています。ZOZOMATを用いるとミリ単位で自分の足を3D計測することができ、アプリ上で自身に最適なサイズを提案してくれるというものです。
ユーザーが靴のサイズを把握しておこうとしても、靴の種類やブランドによってベストサイズは全く変わってきます。しかし、自分の足のサイズをアプリに登録しておくことで、どんな靴でも自分に合うサイズが一目でわかるようになるため、靴探しが飛躍的に効率良くなります。
◆ZOZOMAT
まとめ
ここまで、ECサイトで靴を販売するメリットや注意点について解説しました。
靴をECサイトで販売する際は、実店舗で購入する負担を減らすため、試着から購入、返品までをECサイトで完結できるようにしましょう。そして、できるだけ返品のないように、詳しい採寸表記や類似モデルとの比較など、ユーザーの検討をサポートすることが重要です。
また、大量の在庫を余らせてしまわないよう、管理方法や販売方法にも気を付けましょう。
ECサイトで靴を販売する場合に機能の独自カスタマイズが必要であれば、カスタマイズ可能な弊社のebisumartをご利用ください。
また、弊社では、EC支援サービス「ebisu growth」にて、ファッションの知識と経験が豊富なコンサルタントが、EC事業の成功を支援いたしますので、ぜひご検討ください。