ソーシャルコマースとは、SNSを起点として商品を販売するEコマースの一つの形であり、具体的にはYouTubeやInstagramのライブ機能で商品を販売したり、あるいはインフルエンサーの投稿から商品をすぐに購入することを指します。
ソーシャルコマースは、YouTubeやInstagram等でライブ配信や商品に関する投稿をすることで実践できますが、日本ではライブ配信による販売は浸透していないため、まずは商品に対する情報発信や、SNS上の口コミを形成することから始めてみましょう。
本日はforUSERS株式会社でマーケティングを担当している筆者が、ソーシャルコマースについて詳しく解説します。
ソーシャルコマースの世界市場規模
以下は、アクセンチュアの調査結果を筆者が独自にグラフにしたものです。
◆ソーシャルコマースの世界市場規模(2021年 vs 2025年)
出典(データ):アクセンチュア「ソーシャルコマース革命がもたらすショッピングの新たな未来」(2022年1月2日掲載)
ソーシャルコマースの市場は、2025年には2021年の2倍以上に成長することが予想されており、急激に伸びていることが分かります。ソーシャルコマースは特に中国で成長しており、特にソーシャルセラーと呼ばれるライブで商品を売る販売形態が一般的になってきております。
参考:MarkeZine「SNSマーケの主役はインフルエンサーからソーシャルセラーに!中国市場のトレンドから5年先の潮流を読む」(2023年1月13日掲載)
インフルエンサーとソーシャルセラーの違いは、以下のとおりです。
◆インフルエンサーの収益源
◆ソーシャルセラーの収益源
中国ではもともと、流通に出回っている商品に偽造品が多かったために、公式サイトやソーシャルセラーなどの信頼できる人から購入したいというニーズが強くあり、そのためソーシャルコマースが流行っている背景があります。以下の記事によると、中国のソーシャルコマースの規模はアメリカの10倍の市場規模があります。
参考:Business Insider Japan「2021年の売上は中国の10分の1。アメリカのソーシャルコマースの現況と今後」(2021年11月18日掲載)
今後は国にかかわらず、生まれたときから利用しているソーシャルネイティブであるZ世代以下の世代により、世界中で流行るのではないかと思いますが、筆者は日本においてソーシャルコマースがスタンダードになるのかは疑問があります。それは日本の充実した店舗数です。
コンビニやドラッグストア、あるいは家電量販店などが都心部から地方まで充実しているため、ECやソーシャルコマースで直接商品を購入せずとも、実際に近くの店舗に行けば手に取って商品を確認することができるため、ソーシャルコマースがそこまで流行らないのではないかと予想します。
それでは、次にソーシャルコマースの種類について解説します。
ソーシャルコマースは主に「ライブ販売」「投稿からの販売」「ユーザー間の口コミからの販売」の3種類
中国で流行っているソーシャルコマースは、ライブ販売だけではなく、以下のような種類があります。
◆3つのソーシャルコマース
② 投稿での商品紹介形式
③ ソーシャルメディアの口コミからの販売
① オンラインライブ形式
オンラインライブでの販売形式は、やはり臨場感があります。ユーザーもチャットで気になる点を質問することができ、その反応もダイレクトに得られます。
筆者も、過去に自分で開発したデジタル教材をオンラインライブで販売したことがありますが、ファンの方に19,800円の教材が1時間のライブで2本も売れた経験があります。筆者のような素人でも販売できるのですから、自分のファンを集めることができれば大きな収益を得ることができるはずです。
デメリットは、もし商品の質が悪かった場合、評判が悪くなりファンも離れていくので、常に良いモノを販売して、売上とともに評判も上げて行かなくてはならない点です。
オンラインライブ形式は、日本ではまだまだ実験的な取り組みであり、中国のように有力なチャネルとなっておりません。その理由は、日本は実店舗が充実しており、多くのユーザーは家や職場の近くの小売店で商品を確認することができる点にあります。
そのため日本人は実際にモノを見て購入する需要が強いため、オンラインライブ形式は可能であるものの普及していない印象です。
② 投稿での商品紹介形式
ライブによるものではなく、InstagramやTwitterあるいはYouTubeの動画などの投稿によって、商品を販売します。
リアルタイムではないので、チャットでユーザーからの質問に答えたりすることはできませんが、フォロワー数の多いインフルエンサーであれば、多くの商品を販売することができます。日本では、オンラインライブによる商品販売よりも、こちらの商品投稿によるソーシャルコマースが一般的です。
③ ソーシャルメディアの口コミからの販売形式
SNSがなかった時代から、商品の購入の際の決め手として大きな要因となっていたのは「口コミ」です。かつては家族や友人、知人、あるいはテレビや雑誌などから口コミを得ていましたが、現代ではSNSやECサイトのレビュー欄を見れば口コミを見ることができます。
そのため、ソーシャルメディアの口コミは購買につながる強い要素の一つです。下記のデータをご覧ください。
◆商品・サービスを購入する際に、知るきっかけとなる情報源
【調査概要】
調査対象:日本全国の10代~70代の男女2,464名(男性1,232名、女性1,232名)
調査方法:インターネットによるアンケート調査
調査時期:2022年10月28日(金)~10月31日(月)
出典(グラフ):MarkeZine「商品購入の情報源、1位は店頭/参考にするSNSはInstagram【Glossom調査】」(2022年12月21日掲載)より筆者が一部加工して作成
このデータによると、商品を購入する際に参考とする情報源として40.1%の人がSNSを参考にしております。当調査がシニア層を含んでいることを考慮すると、10~40代に絞ればさらにSNSの影響力は高いはずです。そのため、企業は商品開発時からSNSでの口コミを前提に開発しなくてはなりません。
例えば、化粧品業界では、インフルエンサーとタイアップを行い、SNSで商品を宣伝し、フォロワーは気になった商品があれば、インフルエンサーの投稿の「@xxxxx」というメンションをクリックすると化粧品会社の公式アカウントを見ることができます。
さらにインフルエンサーの「商品のタグ」をクリックすると、ユーザー間の口コミを見ることができ、商品購入の決め手とすることができるのです。このように、ソーシャルでの口コミは、商品購入と密接に関係していることが分かります。
では次にソーシャルコマースを実践するためのプラットフォームについて解説します。
ソーシャルコマースを実施するための4つのプラットフォームの事例
今から日本でソーシャルコマースを始めようという方は、以下の4つのプラットフォームが良いと思います。
① YouTubeでのオンラインライブで販売
YouTubeのオンラインライブでは、チャットによるリアルなユーザーの反応を見ながら商品紹介ができます。概要欄を利用して商品の詳細説明やECサイトの商品ページへのリンクを貼っておくことで、気になったユーザーがすぐに商品購入のアクションを行うことができます。
また、配信動画はYouTubeのアーカイブとして残しておけるので、配信を見逃したユーザーにもリーチすることが可能です。例えば、YouTube内での商品名検索から過去の配信動画が検索結果に出てくるので、一度配信すれば長く訴求できるプラットフォームです。
② Instagramでインフルエンサーに商品を紹介してもらう
Instagramは、比較的若いユーザー層がメインで利用しておりビジュアルに特化したSNSであることから、主に化粧品やアパレルといった分野を中心にソーシャルコマースで活用されています。
特にフォロワーを多く持つ人気インフルエンサーの影響力は大きく、彼らによって紹介された商品は、大ヒット商品となることもめずらしくありません。
昨今では、メーカーとインフルエンサーがタイアップして商品を開発し、発売前からInstagram上で積極的にプロモーションを進めていくことも多いです。
ただし、インフルエンサーにも美容系・アパレル系・旅行系等、得意とするジャンルがあります。フォロワーの多くはそのジャンルにひも付いた属性であるため、単にフォロワー数の多さだけではなく、得意系統からインフルエンサーを選定する必要があります。
③ X(旧Twitter)を使ってキャンペーンを実施
企業で何らかのキャンペーン等を行う際、プラットフォームとしてXが活用されることが多いです。なぜなら、フォローやリポスト(旧呼称:リツイート)、ハッシュタグにより、拡散性や話題性を効率的に高めることができるからです。
Xのキャンペーンでは、企画ごとに「アカウントをフォロー&リポストする」等の参加条件を設定することができるため、特にユーザー参加型の抽選形式のキャンペーン等に活用されることが多く、当選者には後日DMによって当選発表をする形式が一般的です。
また、多くは有料ですが専用ツールを使えば、条件となるアクション(フォローやリポストなど)を実行後、すぐに抽選結果がリプライされるといった仕組みも作れます。キャンペーンを実施するならぜひ活用すべきプラットフォームです。
④ Facebookで文字数をしっかり使って商品の魅力を伝える
SNS上でしっかりと商品説明をしたいのであれば、Facebookを活用するのがおすすめです。上記はヨドバシカメラの公式アカウントの商品紹介の投稿ですが、文字数を使って詳しく商品の説明を載せております。
Instagram等は、利用ユーザー層がタイパ(タイムパフォーマンス)を重視すると言われている若年層のため、長文は読まれにくい傾向がありますが、Facebookはメインとなるユーザーの年齢層も比較的高いため、少しでも興味のある内容であればしっかりと読んでくれる可能性が高いのです。
また、写真を複数投稿すればサムネイルを並べて一覧にできるため、商品の魅力を十分に伝えたい場合にはぜひ活用したいプラットフォームです。
Instagramの投稿等で商品を売るにはECサイト等の決済が必要
先ほど紹介したように、Instagramの投稿で商品を売るには、例えばECサイトであれば商品ページへ誘導しなくてはなりません。そのためECサイトや決済ができるページもあわせて用意する必要があります。実は、そのようなツールは初期費用や固定費無料でカンタンに始めることができます。
① BASEやSTORESの無料ECサイト
多くのインフルエンサーが使っているのが、以下の2つのECサイトです。
◆無料のECサイト
・STORES
これらは初期費用や固定費用はかかりませんが、決済手数料がかかります。
大きく機能差があるわけではないですが、売上がそこまで大きくないうちはSTORESの方が手数料が安くなります。
② スクエアオンラインチェックアウト等のリンク決済
スクエアオンラインチェックアウトはリンク決済と呼ばれるサービスであり、事業者(ここではインフルエンサー)が用意したURLをクリックすると、カード決済を行うことができます。
例えば高額商品で、個別にチャットやLINEでコミュニケーションを取りながら販売するケースなどは、URLを貼り付けることでユーザーはカンタンに決済をすることができます。
①も②もいずれもスマホで売ることを前提とした仕組みなので、ソーシャルコマースと非常に相性が良いでしょう。
③ 中・大規模向けのECプラットフォームを使う
売上が1億円以上の企業は、以下のようなECプラットフォームを利用します。
・SaaSのクラウドEC
これらのECサイトは、中大規模のECサイトに必要なカスタマイズやシステム連携ができることが最大の長所です。このような中・大規模向けのECサイトであれば、Instagram等のSNS連携の自由度が最も高くなります。
インターファクトリーのクラウドコマースプラットフォーム「ebisumart(エビスマート)」も、中・大規模向けのECサイトの一つですので、これからECサイトを作るという事業者は下記の公式ホームページもご一読ください。
ソーシャルコマースはユーザーとコミュニケーションを取りながら販売できる仕組みとして考える
今後世界でソーシャルコマースの取引額は増えていくのは間違いありませんが、日本では冒頭でも解説したとおり、充実した実店舗があるため、なかなかソーシャルコマースが普及するとは考えにくい面があります。
しかし、ソーシャルコマースはユーザーとデジタル上でコミュニケーションを直にとりながら販売する方法であり、以下の点を考えると非常に魅力的です。
・リピート対策
・ファンの育成
特に、詳しい説明が必要な高額商品にはソーシャルコマースが相性が良いはずです。
現代の消費活動においては「モノの消費」よりも「コトの消費」、つまり購入に至るまでの体験が重視されてきています。今後は若い世代を中心に、ECサイトでの商品購入とは違った買い物体験を提供するライブコマースが普及していくのではないでしょうか?
株式会社インターファクトリーでは、EC支援サービス「ebisu growth」にて皆さまのEC事業を支援しております。
本記事で解説したソーシャルコマースのより実践的な導入をお考えの方も、本サービスの活用をぜひご検討ください。経験豊富なコンサルタントが貴社ECサイトを成功に導きます。