「第一想起」とは、ある刺激や質問に対して、私たちの脳が最初に思い浮かべる情報や概念のことを指します。これは、無意識のうちに形成された記憶や経験に基づくものであり、瞬間的な連想の結果として現れます。
例えば、「カステラといえば?」という質問に対して多くの方は「文明堂」と答えるのではないでしょうか。なぜならテレビCMで流れる「カステラ一番、電話は二番、三時のおやつは文明堂」というキャッチコピーは、消費者の記憶の中で強く印象づけられているからです。
つまり、マーケティングにおいて多くの消費者の「第一想起」を自社ブランドで獲得することができれば、売上にも多大な影響が生じるのです。しかし、昨今テレビをはじめとしたマスメディアの影響力は下がり、先ほどの文明堂の例のようなテレビCMによる第一想起獲得は難しくなってきたように筆者は思えます。
筆者は、デジタルマーケティング時代は検索エンジンによる第一想起を促す手法が最も良いと確信しております。なぜならスマートフォンに表示される広告は、あらゆる媒体やメディアで繰り返し表示されているためユーザーは広告に飽きており、スルーされる可能性が高くなっています。一方、情報を検索エンジンで取りに来ているユーザーに対して、お役立ちコンテンツという形で情報提供することで、強い印象を残すことができるからです。
この記事では、デジタルメディア時代における第一想起獲得の方法を、forUSERS株式会社でマーケティングを担当している筆者が解説するので、最後までご覧ください。
マスメディアによる「第一想起」の獲得が難しくなってきた理由
かつては大手企業などが、テレビCMを利用し、そのキャッチコピーによって多くの人が「第一想起」するという手法が利用されておりましたが、その手法の再現は難しくなってきた印象です。以下のカスタマージャーニーの違いをご覧ください。
◆マスマーケティング時代と現在のカスタマージャーニーの違い

出典(画像):筆者作成
インターネットやスマートフォンが出現する以前は、多くの方がテレビなどのマスメディアに触れていたため、CMの効果は極めて高かったのですが、スマートフォンやSNSの出現により、全員が同じメディアを見る時代ではなくなったために、テレビCMのような手法を使って第一想起を獲得するのは非常に困難となったのです。
GoogleやYahoo!などのインターネット広告に多額の予算を投下する方法もありますが、そもそもインターネット時代には、「ほぼ全員が見るメディア」というものは存在しないため、今の時代においては、かつてのテレビCMのように第一想起を獲得するのは非常に難しいのです。
では、デジタルマーケティング時代にどのような方法で、第一想起を獲得すれば良いのでしょうか?筆者が成功した「第一想起」獲得の手法を紹介します。
コンテンツマーケティングによって、BtoBジャンルで「第一想起」につながったと実感した成功事例の紹介
筆者が実際に携わった事例を紹介します。インターファクトリー社で、「PIM(商品情報管理システム)」というBtoBジャンルにおいて「EBISU PIM(エビス ピム)」という新しいプロダクトをリリースしましたが、業界では後発であり、PIMジャンルにおいてEBISU PIMはほとんど知られていないのが実情でした。
しかし、既存のオウンドメディアにブログ記事を2本公開したことによって、公式サイトや広告の用意ができる前、つまりプロダクトのリリース前の段階からPIMに関して定期的に問い合わせをもらえるようになりました。
◆ブログ記事
2記事目:SEOキーワード「商品管理システム」SEO2位
※2024年12月時点のSEO順位
つまり「PIM」と検索するユーザーに対して露出を高めたことで、PIM業界において後発のサービスにもかかわず第一想起を促し、問い合わせをもらうに至りました。
筆者は、その記事を見た読者からも直接メールをもらったことがあり、反響が高かったと推察しております。つまり業界で全く知られていなかった後発の開発中のサービスが、ブログ記事のオウンドメディアによって第一想起を獲得することができたため、このように問い合わせをいただけたのだと筆者は確信しております。
このように、広告を押し付けることなく、検索エンジンで情報を取りに来ている人に向けて、第一想起を促すことができるので、オウンドメディアによるSEO対策は第一想起を促すことに関係していると筆者は強く思うに至りました。
それでは、デジタルマーケティング時代にどのように第一想起を促せば良いのか、具体的なステップを解説します。
デジタルマーケティング時代に「第一想起」を獲得する5つのステップ
デジタルマーケティング時代において「第一想起」を促すためには、広告ではなくオウンドメディアによって、検索エンジン対策を行うべきだと筆者は考えます。ユーザーはスマートフォンで見る広告に飽きており、どんなに派手な広告も無意識にスルーしてしまいます。
しかし、検索エンジン対策を実施すれば「情報を取りに来ているユーザーに対してコンテンツを配信」することができるからです。それではオウンドメディアを使った、検索エンジン対策を解説します。
ステップ① 第一想起の「関連キーワードのリスト」を抽出する
例えば、「新規事業のコンサル」の会社があったとします。そのような会社が「新規事業といえば、●●コンサル会社を第一想起してもらいたい」と考えたとしましょう。そのため、第一想起してもらうキーワードを定義します。ここでは「新規事業」がそのキーワードにあたります。
次に、ラッコキーワードという無料ツールを使って、新規事業と一緒に検索されるサジェストキーワードの一覧を出します。そうすると以下のようなキーワード(例:新規事業+○○)が抽出できます。
◆ラッコキーワードで「新規事業」と入力、関連キーワードの一覧を出す

そうすることで、「新規事業」に関する一覧を出力することができます。新規事業というキーワードでは4,367キーワードを出すことができました。これをリスト化し、シートで管理します。このリストをもとに、ブログ型のオウンドメディアを作成します。
有料のツールを使えば、キーワードごとに検索ボリュームが出てきますが、予算がなければ無料ツールでも十分なリストを作ることができます。
ステップ② キーワードに対して「ブログ記事」を書く
ステップ①で抽出した「リスト」をもとに、ブログ記事を書いて、SEO上位を獲得していきます。「特定のキーワードだけでSEO上位」を取得するのではなく、多くのキーワードでSEO上位を達成することで、第一想起を促すことになります。例えば、以下をご覧ください。
◆「新規事業」を考えている「とある経営者の検索行動」の例
② 「新規事業 やり方」と検索
③ 「新規事業 予算」と検索
④ 「新規事業 失敗」と検索
⑤ 「新規事業 コンサル」と検索
このように、新規事業を検討している経営者はさまざまな検索キーワードで検索します。そのため特定のキーワードよりも、複数のキーワードでSEO上位を達成している方が、第一想起を促しやすくなるのです。例えば、ECプラットフォーム事業を行う株式会社インターファクトリーが運営する「EBISUMART Media」のブログ記事のSEO順位をご覧ください。
◆EBISUMART MediaのSEO順位(ECに関連するキーワードで上位を独占)

これは一部のキーワードの検索結果ですが、このように「EC」関連のキーワードでSEO上位を獲得しており、ユーザーのあらゆるECに関するニーズで複数回接触する機会を作っています。そのため、「ECサイト構築といえばEBISUMART」という認知を獲得することに成功しております。
これは明確な「第一想起」を裏付けるデータとはならないものの、このような状況を作ることで多くの問い合わせを獲得できることから、筆者はオウンドメディアが第一想起の獲得に成功しているのだと確信しております。
この記事では、SEO上位にするためのブログ記事の書き方は解説しませんが、下記では、数多くのオウンドメディアで上位表示を獲得している筆者が、詳しく解説しているので、この記事を合わせてご覧ください。
ステップ③ ブログ記事で必ず「自社の訴求」を行う
ブログ記事で多くのキーワードで、SEO上位になることに成功しても、そこで自社の訴求を行わなければ、ユーザーにとってはただの辞書となってしまいます。とはいっても明らかな広告訴求ではユーザーにスルーされてしまいますので、以下のような訴求をブログ記事で実施します。
◆新規事業のコンサルの訴求例
【ブログ冒頭部に含める訴求文言】
本日は、●●コンサルティング会社で新規事業コンサルを実施している筆者が、新規事業の予算の決め方について解説するので、最後までご覧ください。
【ブログのまとめに含める訴求文言】
もし、この記事を読んで新規事業を検討される場合は、他社とともに、弊社の●●コンサルティングをご検討ください。以下の公式サイトでは、無料の資料請求ダウンロードコンテンツを用意しておりますので、ぜひご覧ください。
公式サイト:●●コンサルティング
このような訴求を設置することで、第一想起を促すことにつながるのです。1記事だけで第一想起には結び付かなくても、複数の記事で訴求を繰り返すことで、ユーザーに浸透しやすくなります。
ステップ④ 「リマーケティング広告」もあわせて実施する
ブログ記事のアクセス数が少ない、オウンドメディア立ち上げ当初であっても、リマーケティング広告を実施することでブログに訪問したユーザーにのみ、広告を出すことができます。これによって、ユーザーはブログ記事と広告で複数回接触することになるので、第一想起を促しやすい状態を作ることができます。
バナーでは、かならず「第一想起のキーワード + サービス名」の文字が目立つように作成してください。せっかくリマーケティング広告を実施しているのに、ユーザーがバナーに気が付くことがなければ意味がないからです。
ステップ⑤ ブログ記事とあわせて「YouTube動画」を配信する
もし、ブログ型のオウンドメディアに成功した場合は、さらにYouTube動画の作成を検討します。撮影から編集まで労力もコストもかかりますが、ブログに比べて参入しているライバル企業が少ないため、競合が多いブログよりもYouTube検索の方が露出しやすいメリットがあるからです。
また、YouTube動画はブログに比べて接触時間が長いため、第一想起を促すのに最適なメディアと言えます。企業がYouTube動画を実施する際の注意点は過去に取り上げたので、下記のブログ記事を合わせてご覧ください。
ブログより先に、YouTube動画を先行して公開する方法もありますが、ブログ記事に比べるとコンテンツの量産に時間がかかるため、まずはブログでオウンドメディアを立ち上げるべきでしょう。
突出したコンテンツをつくることが「第一想起」を最も促す方法となる
昨今はAIサービスが普及し、それを利用することで短時間で多くのコンテンツを作ることが可能になりました。しかし、辞書のようなコンテンツを作っても、ユーザーの印象には残りません。
AI時代の質の高い記事の定義は以下です。
・独創性が強い
・付加価値が高い
なぜなら、AIが普及して、誰でも記事を作成できるようになったため、上記のような記事でないとSEO上位の大手企業のドメインに勝つことができないからです。AIライティングを否定するわけではなく、作成者の努力や生の体験談などは突出した価値へと結び付きやすいため、まずはユーザー第一でコンテンツを作成することが肝要です。
もし、SEO上位に表示されるだけでなく、記事を読んだユーザーが以下のように思ってくれたらどうでしょうか?
◆ブログ記事を読んだユーザーの反応
「ものすごく役に立つからブックマークしよう!」
「同僚に教えたい!Slackでシェアしよう!」
このようなコンテンツは、他のSEO記事と比べて突出しており、高い付加価値を持つことになります。このようなコンテンツをAI時代に作る場合は、以下のようなアプローチが必要となります。
◆突出したコンテンツを作るためのアプローチ
・経験した人しか分からない体験談を書く
・独自の写真や図表を提供する
このようなAIが収集できないデータを含んだコンテンツを作れば、SEO順位も上がり、第一想起を促すことにつながると筆者は考えております。つまり、AIでカンタンに作ったコンテンツでは第一想起は生まれにくいのです。
まとめ
デジタルマーケティング時代に第一想起を促すには、「検索エンジン」対策が最も効果的であると筆者は思います。オウンドメディアで効果が出るには1年以上かかりますが、オウンドメディアが検索エンジンの世界の中で力を持つと、SEO上位はカンタンに達成することができますので、ぜひチャレンジしてみてください。
もし、EC事業において、オウンドメディア構築のサポートを得たい場合は、筆者も所属する「EBISU GROWTH(エビス グロース)」をご検討ください。筆者だけではなく、ECのマーケティングのプロが集まるコンサルチームですので、ご興味ある方は、下記の公式サイトをご覧ください。