象印マホービンが求める、価格に頼らないDtoCモデルとは

メーカーが自社商品をECサイト上で直接消費者に向けて販売するビジネスモデル「DtoC(Direct to Consumer)」が注目されています。

DtoCに取り組むメーカーは、自社ECサイトと大手ECモールへの出店(出品)を併用しているケースが多いでしょう。大手ECモールでの出店(出品)は高い集客力が期待できるものの、手数料の高さや入手できる顧客情報が限られるなどのデメリットが挙げられます。

一方、自社ECサイトでは初期費用がかかるというハードルはありますが、自社ブランドの世界観をユーザーに直接伝えることができ、ユーザーとの直接的なつながりを持つことができるところがメリットです。

自社ECサイトと大手ECモール、そして実店舗(卸)といった3つの販売チャネルを併用しながら、それぞれの特長をどう活用するのでしょうか。—ポットやボトル、炊飯器などの暮らしに寄り添う製品を販売する老舗企業、象印マホービン株式会社の皆さまにお話を聞きました。
※インタビューは新型コロナウイルス対応としてマスク着用、換気といった感染予防対策を徹底した上で実施し、写真撮影時のみマスクを外しています。


<対談プロフィール>

象印マホービン株式会社
経営企画部
システムグループ長 松浦 潤 様
サブマネージャー  緒方 朋哉 様

マーケティング部
サブマネージャー  立野 航 様

株式会社インターファクトリー
取締役CMO 三石 祐輔(インタビュアー)

 

お客様の暮らしを創り続けて100年以上。調理家電や生活家電を製造し、日常生活に寄り添う老舗企業、象印マホービン


象印マホービン株式会社 立野様(以下、立野様):
象印マホービンは社名にもある通り、元々「魔法瓶」の製造会社です。

創業当初はガラス製「魔法瓶」を製造しておりましたが、その技術を応用し、エアーポットや電子ジャーなど事業領域を広げていきました。今では、炊飯ジャー、オーブントースター、ホットプレートなどの調理家電、空気清浄機や加湿器などの生活家電、ステンレスボトルなども製造しています。

 

―象印マホービン商品のコンセプトやターゲット層をお聞かせください。

立野様:
「暮らしを創る」という企業理念を基に、幅広い年代に愛される商品をお届けしています。

加えて、最近では10~20代のお客様に向けたボトル(水筒)や「STAN.シリーズ」と呼ばれる象印マホービンが誇る機能や使いやすさを維持しながら、日常生活に溶け込むシンプルなデザイン性を兼ね備えた製品を発売しています。

▲IH炊飯ジャー(左から2番目)など、どんなインテリアにも合わせやすいモノトーンのデザインにこだわった
「STAN.シリーズ」は新生活を始める若い世代を中心に注目されている。
もちろんデザイン性だけでなく、象印マホービンが誇る機能性も充実している

 

―最近では企業や個人で環境に配慮することが求められる時代になったと思います。
個人的にも10年前と比べると会社でボトルやタンブラーを持ち歩いている方が非常に増えたと感じます。このような状況で、御社として取り組んでいることはありますでしょうか。

立野様:
環境配慮に関しては、当社でも積極的に取り組んでいます。

2019年6月より「社内ペットボトルゼロ宣言」と称して、社内へのペットボトル飲料の持ち込みを禁止し、マイボトルの使用を推進しています。

例えば、関西の自治体とも連携協定を結んでおり、大阪府が主宰する「おおさかマイボトルパートナーズ」に参画し、“環境と健康に配慮した、マイボトルユーザーにやさしい持続可能な街おおさか”の実現へ取り組みを進めたり、2019年に開催されたG20大阪サミットにステンレスマグを提供するなど、さまざまなマイボトル推進活動に取り組んでいます。

・象印マホービンが取り組む「社内ペットボトルゼロ宣言

・大阪府が主宰する「おおさかマイボトルパートナーズ」に参画。さまざまなマイボトル利用啓発に関する取り組みを進めている

「ずっと、マイボトルと。」

 

―有名カフェとの連携もされていますよね。

立野様:
はい、2006年に当社が開始した「給茶スポット」という取り組みを全国のお店やカフェで実施しています。マイボトルをお店やカフェに持っていくと、ドリンクをそのボトルに入れてもらえたり、割引を受けられたりすることもあります。

「あなたのまちにも、給茶スポット」

 

象印マホービン株式会社 松浦様(以下、松浦様):
2020年9月には「シームレスせん」という、ボトルのせんとパッキンがひとつになったステンレスボトルを販売開始しました。これまでのボトルはパッキンが別部品となっており、お手入れの度に分解して洗う必要があり、いつの間にかなくしてしまうという声が多かったのですが、部品をひとつにすることによって、お手入れのしやすさを実現することができました。

さらに2021年9月より、この「シームレスせん」を使ったタンブラーも発売されました。最近ではリモートワークが進み、オフィスや自宅の中で持ち運びが便利なタンブラーが非常に注目されています。毎日使うものだからこそ、この便利な機能を備えました。

象印マホービンではお客様の細かなニーズをくみ取りながら、順次新しい製品を販売しております。

2021年9月より販売開始された「シームレスせん」を備えたタンブラー

 

お手入れの度に分解して洗わないといけないパッキン問題。パッキンのつけ忘れでカバンの中が水浸しになることももうない。「シームレスせん

 

象印マホービンのブランド価値を上げるために立ち上げられたEC事業


立野様:
そもそも、ECサイトを立ち上げた目的は、製品の情報発信としての場という側面が大きいです。店頭には必ずしも象印マホービンのすべての商品が並んでいるわけではないため、このECサイトを通じて、お客様に幅広い商品を知っていただきたいという思いで立ち上げました。

また、情報発信だけではなく、ご来訪いただいたお客様のエンゲージメントを高めるため、商品をWebサイト上でどのように見せたら効果的かなどを検証したり、当社が運営しているさまざまなサイトと合わせて包括的に見せ、象印マホービンのサイト全体を回遊していただいたりすることで、何か分かることが出てくるのではないかと考えたのです。

商品の紹介サイトや象印マホービン製品を購入していただいたお客様が会員登録できる「ZOJIRUSHIオーナーサービス」、そしてECサイトを一体で見せていくことで、象印マホービンらしさを表現し、「価格」に頼らないDtoCモデルを構築することができれば、ブランドとしてさらに良くなるのではないかという考えを意識しました。
※ECサイトの運営は象印フレスコ株式会社です。

「潜在成長チャネルの開発」「商品認知率の向上」「ブランド価値の向上」を目的に、
象印マホービンらしさを表現した「価格」に頼らないDtoCモデルを構築する

2020年11月にECサイトをオープンして(2021年9月で)1年弱となりますが、次第に運用も落ち着いてきたので、今後さまざまな施策を検討している段階です。

例えば、今回ebisumartでのカスタマイズで「ZOJIRUSHIオーナーサービス」と「象印ダイレクト」を連携しました。今後はこの連携を活用して、会員様に向けたクーポンの発行やレビュー投稿などを企画しています。

 

―自社ECサイトでは、限定商品や会員限定のアウトレットも開催されていますよね。

立野様:
はい、ECサイトをオープンするにあたって、やはりお客様が(ECサイトに)来たいと思っていただけるような限定商品を作りたいと考えました。

さまざまな企画案が出たのですが、昭和40年代に一大ブームとなった「花柄ポット」を復刻させてほしいという社内外からの声があり、こちらを採用することとなりました。

当初は一定数の販売だったのですが、2021年7月初旬にSNSで話題となったことをきっかけに爆発的に受注をいただき、一部商品に関しては好評につき欠品・売り切れとなりました。

「昭和のデザインで今の機能性が欲しかった!」 レトロな花柄を復刻した象印の魔法瓶が話題に 復刻の敬意を聞いた(ねとらぼ)

 

松浦様:
復刻版商品を販売した当初は、今回のようなネットやSNSで話題になることを狙っていたわけではありませんでした。

私たちはECサイトをスタートさせたばかりですので、まだまだ勉強段階ですが、ネットにはこういう底力があるんだと改めて知ったひとつの事例となりましたし、やりようによっては、もっとさまざまな可能性があるということを知ったきっかけとなりました。

象印マホービン株式会社 経営企画部システムグループ長 松浦 潤 様

 

―会員限定のアウトレットを開催されているのもECサイトの施策でしょうか。

立野様:
こちらも、お客様がECサイトへ来たいと思っていただくための施策のひとつとして始めました。

他のECサイト事例を参考にしていると、ECサイトの目玉となる施策のひとつとして「アウトレット」は非常に魅力的に感じました。

当社とお客様とのエンゲージメントをより高めることを目的に、まずはECサイト会員向けの特典サービスとして始めさせていただいています。対象製品はまだ少ないですが、今後も継続的に、会員特典のひとつとして打ち出していきたいと考えています。

▲象印マホービン株式会社 マーケティング部サブマネージャー 立野 航 様

 

ECプラットフォーム選定で重要視した「セキュリティ面」


―ECプラットフォームを選定される際に重視していたポイントをお聞かせください。

象印マホービン株式会社 緒方様(以下、緒方様):
最近ではさまざまな形態のECプラットフォームが提供されていますが、まずは信頼できる、セキュリティ面で充実しているという点が当社にとって非常に重要でした。

また、お客様のニーズに素早く対応できるように、作り込みではなくて設定ベースでさまざまな振る舞いを変えられるebisumartに魅力を感じました。

 

―ebisumartを知ったきっかけと最終的な決め手は何でしょうか。

緒方様:
まずは複数社のECプラットフォームを検索し、比較検討しました。その中で、ebisumartはECサイト上のセキュリティに対する基本的事項(reCAPTCHA認証や二段階認証など)がオプション機能としてクリアされていたり、PCI DSS準拠など高度な対策も対応できており、当社が重要視していたセキュリティ面に安心感を持ちました。

また、カスタマイズをすることによって、当社がやりたいことを柔軟にスピード感をもって対応できることもあり、ebisumartを採用することに決めました。


▲象印マホービン株式会社 経営企画部サブマネージャー  緒方 朋哉 様

 

―カスタマイズで実現した機能はありますか。

緒方様:
代表的なものを挙げると、元々運営していたオーナーサービスサイトのCRMシステムとECサイト(ebisumart)を連携しました。

この連携により、新規会員登録時にお客様が住所などの個人情報を入力する手間を省いたり、オーナーサービスサイトからECサイトに遷移する際、ECサイト側のログインの手間を省くことができ、お客様のユーザビリティの向上につなげることができました。


▲ebisumartをオーナーサービスサイトのCRMシステムと連携することで、
ユーザーが新規会員登録時に必要な顧客情報の入力や
ログインの二度手間を省きユーザビリティを改善させることができる

 

―そのカスタマイズ(自社ECサイトとオーナーサービスサイトの連携)を活用し、今後ECサイトが目指している姿をお聞かせください。

緒方様:
ECサイトの会員数の内、オーナーサービスサイトと連携をしている割合は約10%です。象印マホービンのファン作りという面では、2020年11月にECサイトを新設して以来、着々と会員数が増えてきていると思います。売り上げも大事ですが、ECサイトを一つのお客様との接点と考えて、象印マホービンのファンを増やしつつ、コミュニティー化して盛り上げていくことを目指していきたいと考えています。

 

松浦様:
当社はアメリカに販売会社があり、そちらでも象印マホービンの公式オンラインストアを運営していますが、アメリカの現地メンバーによると、最近はメーカー直販のECサイトの信頼度が非常に高いと聞いています。

実際日本でもDtoCが注目され始めていますが、今後もこの流れは日本に来ると思っていますので、現段階でECサイトを完成させ、今後「メーカーとお客様の接点が持てるツール」として伸ばしていくことができれば、お客様の信頼度にもつながると思っています。

 

―ebisumartを導入して感じたメリットはありますか。

緒方様:
ebisumartは毎週新しい機能が更新、アップデートされているので、象印マホービンのファン化やKPIの改善につながる機能を上手にキャッチアップしていくことができればいいと思います。

 

松浦様:
ebisumartは色んなカスタマイズができる中で、標準機能もしっかりと装備されている点はとても素晴らしいと思いますので、引き続き標準機能のアップデートに期待しています。

 

あらゆる世代に親しまれるために、象印マホービンが目指すものとは


―今後、EC事業としての展望をお聞かせください。

立野様:
オープンして約1年弱、徐々に認知が広がっていくとうれしさを感じます。

復刻花柄ボトル・ポットがネットやSNSで話題になったときは、社内でも大変盛り上がりました。さらに、この復刻版商品に続き、ECサイト限定商品第二弾として出された有名デザイナーとのコラボ商品も一部完売となり、社内の熱も徐々に上がってきていると感じています。

また、社外に向けてはお客様にECサイトへご来訪いただくことを通じて、最終的に「象印マホービン」というブランドの価値向上につなげるところが1番のミッションだと感じています。

その価値向上を目指し、あらゆる年代の方に象印マホービンを知っていただくために、ECサイトやSNSを積極的に使ってお客様とのタッチポイントを増やしていきたいと思います。

これまではお客様とのタッチポイントと言えば、店頭、CM、会社ホームページに限られていたのですが、今後はSNSやオーナーサービスサイト、そしてECサイトなど、ネットを活用していくことができると思います。

 

松浦様:
もちろん、あまりネットに慣れていないお客様に対してのユーザビリティも改善していきたいと考えています。例えば、画像を大きくしたり、文字を読みやすく工夫したりするなど、さまざまな世代のお客様に見ていただいているということを意識して運営していく必要があると思います。

 

―創業100年以上という歴史ある中でしっかりとした製品を作るということはもちろん、SNSなどの新しいツールを取り込んでいく象印マホービン様、老舗企業として大切にされていることは何でしょうか。

立野様:
100年以上続く会社として、お客様からの信頼は非常に大きく感じています。こうした信頼というのは1年2年で築けるようなものではないので、この信頼を継続していく、より良くしていくという点をとても大切にしています。

 

象印マホービン様
お忙しい中 ありがとうございました。
公開日:20219

PROFILE
会社名:象印マホービン株式会社
本社:大阪府大阪市北区
 

SITE PROFILE
サイト名「象印ダイレクト」
https://www.zojirushi-direct.com/
象印フレスコ株式会社様が運営する「象印ダイレクト」です。ボトルや炊飯ジャーなどの生活家電製品、調理家電製品を販売しており、日々の食卓を楽しくする商品を豊富に取り揃えております。商品がカテゴリごとに細かく分かれている他、カテゴリ一覧のページで商品の特長がピックアップされているため、欲しい商品がすぐに見つかります。当サイトでは象印製品のオーナーサービスサイトとの連携を行いました。

ABOUTこの記事をかいた人

2011年9月、株式会社インターファクトリーに入社。 「ebisumart」の広報・マーケティングとアライアンス推進業務を担当。 2013年1月、株式会社インターファクトリー取締役に就任。 現在は事業推進チーム・ヒューマンリソースチーム・ブランドコミュニケーションチームを統括。