こんにちは。株式会社インターファクトリーのCTOの水野です。
先日、ラスベガスで開催された小売業界のイベントShoptalk 2019(現地3月3日~6日開催)に参加してきました。
Shoptalkは、小売やその関連する業界の人達が集まり、最新のトレンドや技術、ビジネスモデルについて情報交換することで小売業界の未来を創っていこう、というイベントです。
毎年8,000人以上が参加する小売業界ではUS最大のイベントで、業種としては小売、ブランド、テクノロジー、ベンチャーキャピタル、アナリスト、メディア等の企業が参加しています。
企業ごとの展示ブースや、大ホールでの基調講演、5つのホールに分かれての並列セッション等があり、私は主にテクノロジー関連の講演を聴講していました。
今回はそちらのイベント内容をレポートいたします。
キーワードはパーソナライズ
多くの講演で出てきたキーワードに、パーソナライズがありました。その中でも、AI技術を使って今までより高度なパーソナライズを実現するための技術紹介が多くありました。小売企業が扱う商品数も、ターゲットとなる顧客の数も多く、その組み合わせは掛け算となって膨大なパターンになるので、その中から適切な組み合わせを見つけるためにAI技術を使う、というストーリーです。
パーソナライズ自体は以前から重要視されている技術ですが、パーソナライズに利用する情報やパーソナライズする対象が多様になってきているという印象を持ちました。例えば、従来からの属性データ(年齢・性別など)や行動データ(どのページを閲覧したか、など)に加えて、感情データ(その時怒っていたのか、喜んでいたのか)を利用するという講演が複数ありました。
AI技術に関する講演も多数
AIというキーワードに関する講演も多数ありました。
ただ、AIという単語そのものはバズワードとなってしまっており、そのことをジョークとして織り込んでいる講演も多かったです。単に「AIだからすごい」という表現では通用しないことを講演者も聴講者も理解したうえで、具体的に何がすごい技術なのかを説明するべきという認識になっているようです。
AIの用途として、下記のようなものがありました。
・広告生成。広告の構成要素(タイトル、サブタイトル、それらの配置)をAIで最適化する。
・トラックによる輸送の最適化。店舗とトラック業者とをマッチングするサービスにおいて、トラックの移動時間をAIで最適化する。
・リテール向けの商品画像自動生成。服を買うときには画像が重要だが、モデルの体型が自分に近いとは限らない。
様々な体型のモデルのを使った写真が用意できればよいが、それにはお金と時間がかかる。そこで、AIを用いて様々な体型のモデルの写真を自動生成する。
・品質管理。製造の各工程で個別に品質を検査するのではなく、全工程を通して統合的に検査する。
・価格決定。商品の価格やキャンペーンの内容をAIを用いてリアルタイムで変更する。
・実店舗での顧客の動きの把握。Amazon Goの競合。カメラやセンサーで顧客の動きを検知し、決済の自動化・在庫の管理・顧客の動向の分析に利用する。
・待ち時間予測。ドライブスルーの受け取りにかかる時間をAIで予測し、スマホでリアルタイムで確認できる。
その他興味を持った講演
VRによる家具配置の体験
Marxent社から、VR技術の紹介がありました。家具の小売店でVR技術を使い、複数の家具を組み合わせてレイアウトしたときのイメージを予め体験してから購入できるというものです。
シンプルなVRの用途ではありますが、家具は組み合わせたときの印象が重要で、かつ実際に試してみるのは大変なので、VRの用途としてとてもマッチしていると思います。
準超音波を利用した電子決済
LISNR社から、QRコードの代わりに高周波の音を使って情報を伝える技術の紹介がありました。情報を音にエンコードして送信することで、QRコードと同じようなことを、カメラの代わりにスピーカーを使って実現する仕組みのようです。
QRコードに対するメリットとしてセキュリティを挙げていました。ウィルスやトロイの木馬のうち23%以上はQRコード経由でも感染するので、QRコードに変わるセキュアな技術として使えるとのことです。
QRコードは利用者が能動的にリーダーを起動してカメラをQRコードに向ける必要があるのに対して、音であればスピーカーだけアクティブになっていれば情報を受け取れるので、利便性という点でもアドバンテージがありそうです。
用途は電子決済のほかに、店舗の入口に設置することで来客に情報を配信したり、コインロッカーの鍵として利用するといったことを想定しているようです。
Shoptalk 2019に参加しての所感
AIブームによって盛んに研究された技術が、実際に普及する段階に来ているという印象を持ちました。このイベントは「最新の研究成果を発表する場」ではなく、「実用化された(もしくは間近の)最新技術を宣伝する場」なのですが、少し前に「最新の研究成果」としてニュースとなっていたような技術が多数出てきているという印象でした。
講演者も参加者もみなエネルギッシュで、イベントのキャッチコピーでもある「小売業界の未来を作る」という意気込みを感じました。小売業界のひとつのチャネルであるECプラットフォームを提供している身として、この勢いに負けずに新しい技術を提供し続ける必要性を再確認しました。